イノデの生態
シダ植物の生態もさまざまです。1年中葉を繁らせる常緑性のもの、春に葉を出し秋に枯れる夏緑性のもの、晩夏に葉を出し翌年の初夏近くに葉が枯れる冬緑性のものとに分けられます。イノデは常緑性のシダ植物に分類されています。ここではその生態について見ていきましょう。
生育環境
乾燥が苦手で湿気を好みます。その性質にあうような常緑広葉樹林域の山麓から山地、谷筋など広い範囲の温暖地で生育します。
丈夫で栽培が容易
シダ植物の仲間であるイノデは、高温多湿や寒さにも耐性があります。とても丈夫で栽培も容易です。剪定や肥料はほとんど必要とせず、日光の当たりすぎや水やりの水分量に気をつければ育てやすい植物だといえるでしょう。苗も販売されているため、鉢植えや庭植えを楽しむことも可能です。
イノデと仲間の種類の見分け方
イノデは仲間が多く、それぞれが似ているため見分けるのが大変です。他の仲間たちとの共通点としては、二回羽状複葉で小羽片が多く付き、葉柄から中軸にかけて鱗片が密生していることが挙げられます。しかし、よく見るとやはり違いがあります。ここではイノデの特徴を追って仲間たちとの見分け方のポイントを押さえていきましょう。
ボタ爺
葉表の光沢で見分ける
やや硬い葉の表面の色は濃い緑色で強い光沢があり、ほぼ無毛です。裏面は毛状の長い鱗片があります。
中軸鱗片と小羽片の形で見分ける
中軸(葉の中央を通る軸)を覆う鱗片は褐色で、その形は披針型(先の尖った平たく細長い形)から広披針形です。また、小羽片は先端が芒(のぎ)状に尖り、辺縁の先端側基部は耳状に突き出ています。
胞子嚢群(ソーラス)のつき方で見分ける
シダ植物は種子ではなく胞子が芽吹いて増えていきますが、その胞子が収まっている器官が胞子嚢です。胞子嚢が数個以上集まったものを胞子嚢群(ソーラス)と呼び、これも見分けるヒントになります。胞子嚢群のつき方は、辺縁と中肋(葉の中央を縦に通っている太い葉脈)の中間につく中間性のもの、辺縁寄りにつくもの、中肋寄りにつくものの3種類に分かれます。イノデの胞子嚢群は中間性です。
葉柄基部の鱗片の形と色で見分ける
葉柄基部には2cmほどの大きさの鱗片が隙間なくついており、形は披針形から広披針形で中軸の鱗片よりも幅が広くなっています。色は褐色から赤褐色です。
まとめ
イノデは、昔から山や庭など身近に存在してきた植物です。意識して探してみると意外にすぐそばで見つけられるかもしれません。見分け方はなかなか難しく断定しにくい植物ではありますが、まずは「これかな?」というものを探して触れることから始めましょう。繰り返し見比べていくうちにコツが掴めてきます。ゆっくりじっくり、奥深いイノデの世界を楽しんでみてくださいね。
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1枚の葉が鳥の羽のように複数の小葉から形成されるものを羽状複葉と呼ぶぞい。さらにその小葉が羽状複葉になっている場合、二回羽状複葉というんじゃ!