マツバラン(松葉蘭)とは?その特徴や増やし方などの育て方を紹介!

マツバラン(松葉蘭)とは?その特徴や増やし方などの育て方を紹介!

古生代のロマンを感じさせる、葉の無い植物マツバラン。その奇異な姿が江戸の人々を魅了し、古典園芸植物として発展しました。派手な花こそ咲きませんが、風流なたたずまいが庭やベランダを飾ります。マツバランを眺めながら、植物の進化や園芸の歴史に想いを馳せてみませんか。

記事の目次

  1. 1.松でも蘭でもない松葉蘭
  2. 2.古典園芸植物マツバラン
  3. 3.マツバランの育て方・準備編
  4. 4.マツバランの育て方と増やし方
  5. 5.まとめ

松でも蘭でもない松葉蘭

出典:著者作成

マツバラン、漢字で書くと松葉蘭。「松の葉に似た蘭」という意味の名前ですが、実は蘭ではなくシダ植物です。

マツバランはシダ植物

出典:著者作成

マツバランはシダ植物のなかま。維管束をもちますが、種子を作らず胞子で増えます。植物界の中でシダ植物は、維管束のない蘚苔類(コケ植物)と種子で増える種子植物の中間に位置します。

マツバラン基本情報

  • 標準和名:マツバラン
  • 学名:Psilotum nudum
  • 分類:シダ植物門マツバラン綱マツバラン目マツバラン科マツバラン属
  • 分布:東南アジア〜日本(本州)

見た目が古生代の原始的な陸上植物に似ているため「生きた化石」とも呼ばれます。実際は最古の植物というわけではありませんが、植物界シダ植物門の中では歴史が古い分類群です。

Photo by tonrulkens

マツバランと近縁のハナヤスリ科の一種。こちらは葉があります。

DNAによる分類では、マツバラン目はハナヤスリ目(ハナヤスリやフユノハナワラビが含まれるグループ)に近縁であることが分かっており、まとめて「マツバラン綱」というグループでくくられます。

マツバランの特徴と生態

台湾にて、街路樹のガジュマルから生えていたマツバラン。(出典:著者撮影)

マツバランは熱帯に多く分布し、直射日光の当たらないやや湿った場所を好みます。野生では樹皮や石垣のすき間などに生えます。

葉や根が退化

マツバランは葉が退化しており茎で光合成をします。根も退化し、代わりに地下茎が土や着生物に入り込んでいます。マツバランの学名は「Psilotum nudum」。「Psilotum」も「nudum」も「裸の」という意味であり、葉がなく茎がむき出しの特徴を表しています。

胞子で増殖

マツバランは胞子で増えるので花は咲きません。代わりに茎の一部が丸いコブ状になり、だんだん肥大して黄色い胞子嚢になります。地面に落ちた胞子からはまず「前葉体」という小さい植物が生まれ、前葉体が精子と卵を作ります。これらが受精すると、マツバランの姿をした植物体が生まれるのです。

ボタ爺

ボタ爺

公園や庭に突然生えてくることもあるぞ。胞子が風に飛ばされてきたり、鳥の体にくっついて運ばれてきたりするようじゃ。

日本では絶滅危惧種

日本では野生のマツバランは少なく、環境省レッドデータでは準絶滅危惧種に指定されています。都道府県ごとのレッドデータでは、関東地方のほとんどで絶滅危惧I類、西日本の多くの地域でも絶滅危惧II類またはI類に指定されています。

古典園芸植物マツバラン

先端がしだれる品種「鳳凰柳」(出典:著者撮影)

マツバランは「古典園芸植物」というジャンルで紹介されます。古典園芸植物とは、江戸時代の園芸ブームで日本独自に栽培化・育種が進んだ園芸植物です。

ボタニ子

ボタニ子

江戸時代に園芸ブームがあったんだね!

ボタ爺

ボタ爺

菊や朝顔などの品種改良が進んだんじゃ。

出典: https://tegara.exblog.jp/29865793/

様々なマツバラン。(出典:手柄山温室植物園ブログ)

マツバランは天明年間(1781〜1788年)頃から流行り、茎の形が珍しがられて高値で取引されました。1836年には「松葉蘭譜」という本も出版され、122品種のマツバランが紹介されました。

ボタ爺

ボタ爺

派手な花が咲く分かりやすい美しさだけでなく、マツバランのような「いき」な美しさが好まれたんじゃ。

ボタニ子

ボタニ子

次のページではマツバランの栽培に必要な資材を紹介するよ!

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マツバランの育て方・準備編

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