松でも蘭でもない松葉蘭
マツバラン、漢字で書くと松葉蘭。「松の葉に似た蘭」という意味の名前ですが、実は蘭ではなくシダ植物です。
マツバランはシダ植物
マツバランはシダ植物のなかま。維管束をもちますが、種子を作らず胞子で増えます。植物界の中でシダ植物は、維管束のない蘚苔類(コケ植物)と種子で増える種子植物の中間に位置します。
マツバラン基本情報
- 標準和名:マツバラン
- 学名:Psilotum nudum
- 分類:シダ植物門マツバラン綱マツバラン目マツバラン科マツバラン属
- 分布:東南アジア〜日本(本州)
マツバランの祖先・プシロフィトンの復元図。右側はその茎の化石です。古生代シルル紀~デボン紀(約4億年前)に栄えました。先程ツイートしたマツバランに姿がそっくりですね。水中から陸上に進出したばかりなので体のつくりも原始的で茎だけの簡単なものでした。#プシロフィトン #マツバラン pic.twitter.com/hUBbsx8rtB
— kiyoさん🐶いいね消える😢 (@hisuitree) September 28, 2019
見た目が古生代の原始的な陸上植物に似ているため「生きた化石」とも呼ばれます。実際は最古の植物というわけではありませんが、植物界シダ植物門の中では歴史が古い分類群です。
DNAによる分類では、マツバラン目はハナヤスリ目(ハナヤスリやフユノハナワラビが含まれるグループ)に近縁であることが分かっており、まとめて「マツバラン綱」というグループでくくられます。
マツバランの特徴と生態
マツバランは熱帯に多く分布し、直射日光の当たらないやや湿った場所を好みます。野生では樹皮や石垣のすき間などに生えます。
葉や根が退化
マツバランは葉が退化しており茎で光合成をします。根も退化し、代わりに地下茎が土や着生物に入り込んでいます。マツバランの学名は「Psilotum nudum」。「Psilotum」も「nudum」も「裸の」という意味であり、葉がなく茎がむき出しの特徴を表しています。
胞子で増殖
「マツバラン(松葉蘭)」。根も葉も無い「茎だけの原始的なシダ植物」です。黄色いつぶつぶは胞子の袋です。大昔、シーラカンスが誕生した時代、水中から陸上に上がった頃の原始的植物の体のつくりを現代までそのまま残している「生きた化石」です。 #マツバラン #松葉蘭 #生きた化石 pic.twitter.com/IQGnpOiIAn
— kiyoさん🐶いいね消える😢 (@hisuitree) February 7, 2018
マツバランは胞子で増えるので花は咲きません。代わりに茎の一部が丸いコブ状になり、だんだん肥大して黄色い胞子嚢になります。地面に落ちた胞子からはまず「前葉体」という小さい植物が生まれ、前葉体が精子と卵を作ります。これらが受精すると、マツバランの姿をした植物体が生まれるのです。
ボタ爺
公園や庭に突然生えてくることもあるぞ。胞子が風に飛ばされてきたり、鳥の体にくっついて運ばれてきたりするようじゃ。
日本では絶滅危惧種
実家のベランダにある巨大アボカドの鉢からマツバラン[Psilotum nudum]が出現した。大阪府では絶滅危惧Ⅰ類のハズなんだけど、、どこから来た? pic.twitter.com/eFrxzEApNe
— LA_熱帯草屋 (@LA_souya) July 13, 2015
日本では野生のマツバランは少なく、環境省レッドデータでは準絶滅危惧種に指定されています。都道府県ごとのレッドデータでは、関東地方のほとんどで絶滅危惧I類、西日本の多くの地域でも絶滅危惧II類またはI類に指定されています。
古典園芸植物マツバラン
マツバランは「古典園芸植物」というジャンルで紹介されます。古典園芸植物とは、江戸時代の園芸ブームで日本独自に栽培化・育種が進んだ園芸植物です。
ボタニ子
江戸時代に園芸ブームがあったんだね!
ボタ爺
菊や朝顔などの品種改良が進んだんじゃ。
マツバランは天明年間(1781〜1788年)頃から流行り、茎の形が珍しがられて高値で取引されました。1836年には「松葉蘭譜」という本も出版され、122品種のマツバランが紹介されました。
ボタ爺
派手な花が咲く分かりやすい美しさだけでなく、マツバランのような「いき」な美しさが好まれたんじゃ。
ボタニ子
次のページではマツバランの栽培に必要な資材を紹介するよ!
出典:著者作成