はじめに
この記事では、紙が生まれた歴史や、紙の種類(①和紙、②洋紙、③板紙)をご紹介します。また、和紙の三大原材料である植物(こうぞ・みつまた・がんぴ)についても詳しく説明していきます。
紙の歴史
紙の起源
紙の歴史を紐解くと、一番古い記録として、中国の歴史書「後漢書」に書かれてある西暦105年です。後漢の皇帝に紙を献上したと記されています。中国で紙の生産が始まったころの原料は、麻の繊維が使われていました。では、現在使われているような紙のない時代は、人々はどのように物事を記録していたのでしょうか。
紙の代用品
紙のない時代には、紙の代用品として木の葉や石、樹皮など身近で手に入りやすいものに書き記されていました。有名なものでは古代エジプトのパピルス(水草)やメソポタミアの粘土板、ヨーロッパではパーチメント(羊の皮から作る羊皮紙)などが、使われた記録として残っています。なお、日本では、奈良の平城京跡よりでてきた木簡があります。
日本の紙の歴史
日本に紙が伝えられたのは、卑弥呼の時代(3世紀ごろ)という説もありますが、5~6世紀ごろとも言われていて、はっきりとしたことはわかりません。記録によると西暦610年、高句麗の僧によって、墨とともに製紙法を伝えたと言われています。その後、紙は、用途に合わせ、進化し現在の紙となりました。
紙の種類
紙の種類はさまざまありますが、この記事では、①和紙、②洋紙、③板紙に関して、特に、それらの原料である植物に着目してご紹介します。
和紙の原料① 楮(こうぞ)
和紙の三大原材料の1つであるこうぞは、漢字で”楮”と書き、落葉性の低木です。古くから和紙の主要原材料として、現代も使われています。楮(こうぞ)は、麻に次いで繊維の長さが長く、絡み合う力が強い性質のため、揉んでも破れることの少ない丈夫な和紙ができます。そのため、楮(こうぞ)は高級和紙の材料としてよく使われています。
和紙の原料② 三椏(みつまた)
和紙の三大原材料の1つである三椏(みつまた)も落葉性の低木です。枝が必ず3つに分かれることから”三椏”と書き、「みつまた」と名付けられました。万葉集でもたびたびと登場する三椏(みつまた)ですが、和紙の原材料として使われるようになったのは、16世紀の戦国時代と言われています。
1598年の公文書である黒印状に、三椏(みつまた)が最初の文献として登場しています(黒印状は諸大名の発行する文書)。現代では、三椏(みつまた)は、楮(こうぞ)の次に主要な原材料で、ふすま和紙の主原料となっています。
和紙の原料③ 雁皮(がんぴ)
和紙の三大原材料の1つである雁皮(がんぴ)は、漢字で”雁皮”と書きます。雁皮(がんぴ)も落葉樹の低木で、別名、”紙の木”とも呼ばれています。雁皮(がんぴ)は、奈良時代から製紙原材料として使われるようになりました。
雁皮の繊維の長さは楮の3分の1ほど
雁皮(がんぴ)の繊維の長さは、楮(こうぞ)の3分の1ほどの長さで短いのですが、繊維の質は、優美で光沢があり、半透明で絡み合う力も強く、緊縮した紙質を作り出します。雁皮(がんぴ)は、かな文字を書くのにふさわしい紙として愛用され、鳥の子和紙と呼ばれ、広く知られています。
洋紙の原料
洋紙は、主に木材を主原料として機械で製造した紙のことを指します。1873年に欧米の機械を使用した洋紙工場が日本で初めてできました。当時の主原料は、ワラが使われており、わら半紙が洋紙工場で製造されていました。ワラは収穫が年に1度ということもあり、保存管理が難しく費用がかかるため、現在は木材が主原料へと変わりました。
板紙の原料
厚い紙のことを板紙と呼び、一般的に紙厚がある大きな紙のことを板紙と分類されます。一般的にはボール紙と呼ばれています。原材料は、主に木材パルプを使用しますが、非木材パルプであるワラやリサイクルされた古紙パルプが使われます。
まとめ
紙の歴史を紙の起源、紙が存在するまでに記されていた代用品、そして、日本に伝えられた紙について、紹介しました。また、紙の使用用途に合わせ、さまざまな種類へ発展した紙や和紙の三大原材料についてもふれました。詳しくなったことで、紙に対して、いつもより愛着を感じてもらえるようになれたでしょうか?
出典:写真AC