石灰硫黄合剤とは
石灰硫黄合剤は19世紀に開発された古い農薬で、石灰と硫黄を混合して製造されます。害虫と病気の両方に効果があり、有機農産物にも使用できる天然資材由来の農薬です。特に樹木が休眠する冬場に害虫や病気をまとめて駆除する目的で使用されることが多く、この作業は消毒ともいわれています。
石灰硫黄合剤の特徴
石灰硫黄合剤は卵の腐ったような刺激臭の農薬で、強いアルカリ性を示します。散布時にくさいにおいがする使いづらい農薬ですが、農薬が効きにくいカイガラムシも含めて樹の隙間にひそむ病害虫をまとめて駆除ができる強い効果があります。さらに農薬の作用機序(効果がでる仕組み)上、薬剤抵抗性をもつ病害虫が現れにくいです。
ボタ爺
適用病害虫
石灰硫黄合剤は果樹の越冬性害虫に対して強い効果があり、特にロウ状の鎧で農薬を弾くカイガラムシに対して適用があります。そのほか、ハダニ類やサビダニ類、うどんこ病などの害虫・病原菌へ殺菌効果もあります。果樹以外には、麦類、茶、びゃくしん、松、桑に対して使用可能です。
石灰硫黄合剤に適用がある害虫と病気
害虫 | 病気 |
ハダニ類、サビダニ類、カイガラムシ類 | 縮葉病、うどんこ病、モニリア病、黒星病、胴枯病、そうか病、かいよう病 |
石灰硫黄合剤の使い方
冬期消毒が基本
石灰硫黄合剤は水で希釈して散布機で振りかけて使用します。冬期消毒時の希釈倍率は、果樹全般では20〜40倍、落葉果樹には7〜10倍です。有効成分が沈殿しやすいことからよく混ぜて希釈液をつくり、枝と葉の付け根など害虫が潜む場所に振りかけてください。落葉果樹の葉がでていると薬害がでるため、休眠期の1〜2月の使用がおすすめです。
ボタニ子
石灰硫黄合剤の散布回数には制限がないの。病気が発生した翌年12月と2月に散布をして重点的に病害虫対策をすることもできるよ。
使用時の注意点
石灰硫黄合剤は使用方法に気をつけないと皮膚が火傷したり、器具を傷めたりします。つぎの点に気をつけて使用しましょう。
①散布機はすぐに洗う
石灰硫黄合剤は強いアルカリ性で金属を腐食させるため、使用後は間隔をあけずに水洗いをしましょう。このときに濃度1%に薄めた食用酢を使えば、中和作用によってきれい洗浄できます。車や建物に付着したときも同じようにするとよいでしょう。
②希釈液を身体につけない
石灰硫黄合剤はほかの農薬に比べて希釈液の倍率が濃く、粘膜を溶解するため皮膚が火傷することがあります。作業時は手袋・マスク・ゴーグルと不浸透性作業着を着用してください。万が一皮膚に着用した場合は15分以内に水で洗い流しましょう。
③風が弱い時期に使用
石灰硫黄合剤は卵の腐った硫黄臭がするため、周辺人家ににおいが流れないように気をつけましょう。無風が多い早朝や夕方を選んで作業するのがおすすめです。散布当初は強烈なにおいがしますが半日もたてば落ち着き、白く薬剤がかかった場所に近づかない限りにおいはしなくなります。
④ほかの農薬と混ぜない
重要な注意点としてほかの農薬、特に酸性の液体と混ぜないように注意しましょう。石灰硫黄合剤と反応して有毒な硫化水素が発生します。使用後の容器などを酢の原液で洗うと危険です。
石灰硫黄合剤の購入場所
ホームセンターで購入できる
石灰硫黄合剤は、普通物の農薬のためホームセンターで入手可能です。規格が10Lもしくは18Lのような容量の多いタイプがほとんどのため、重さから送料がかかることを考慮すると通販よりホームセンターのほうが安く購入できます。購入時は有効年限を確認し、なるべく期間が長いものを購入しましょう。
ボタニ子
昔は1Lサイズの小型容器もあったんだけど、農薬以外の使い方が多くみられるようになったから製造中止になったんだって。
10Lの石灰硫黄合剤を使い切れる面積は?
大きな10L規格の石灰硫黄合剤を使い切るには、10倍希釈の場合で333㎡(約100坪)の樹園地が必要です。面積がそれより小さい場合は保存して複数年で使用するのがおすすめです。有効年限は最長5年で、最低20坪あれば使い切れます。
ボタニ子
どうしても使い切れなくなったら何も作付けしていない土地にまきましょう。水の動物に影響するから流したらダメだよ。
石灰硫黄合剤と同じ効果の農薬
①マシン油乳剤
「ハーベストオイル」の商品名でも知られるマシン油乳剤は、石灰硫黄合剤と同様に越冬性害虫を駆除するのに役立ちます。容量が500mLの少量規格の販売もあり、樹木数本の害虫退治におすすめです。石灰硫黄合剤に比べて病気原因菌の殺菌効果はないものの、においもなく使いやすい農薬です。
②水和硫黄フロアブル剤
水和硫黄フロアブル剤は「イオウフロアブル」や「サルファーゾル」などの名前で販売されている、硫黄を有効成分とした殺菌剤です。有効成分が硫黄のため石灰硫黄合剤の代わりになりますが、活動時期の病害虫にしか効果があらわれないため春以降の使用が一般的です。
③ベニカXファインスプレー
庭木やバラの消毒目的で使用するなら、殺虫と殺菌効果のあるベニカxファインスプレーがおすすめです。うどんこ病、アブラムシ類、カイガラムシ類、ケムシ類に効果があり、アブラムシであれば1カ月程度は効果が持続します。価格や効き目では石灰硫黄合剤が優れてはいますが、樹が弱っているなと感じた段階で使用するとより効果が期待できます。
石灰硫黄合剤の希釈液は植物体上で硫黄や硫化硫黄を発生し、病害虫の呼吸や糖生成に関係する酵素活動を阻害することで殺菌効果を示すぞ。