トップジンMペーストとは?
トップジンMペーストってどんな農薬?
登録後50年の歴史を持つロングセラーの農薬
トップジンMペーストはチオファネートメチルが主成分の有機合成殺菌剤で、剪定時の癒合剤(切り口の治癒)や殺菌用に使われます。登録・販売開始から2019年で50年目となる農薬のロングセラー品です。毒性が低く、農業のみならず家庭でも広く使われています。
基本情報
商品名 | トップジンMペースト 製造:日本曹達株式会社 販売:住友化学園芸株式会社 |
種別 | 癒合剤、有機合成殺菌剤(農薬) |
有効成分 | チオファネートメチル |
毒性 | 普通 |
内容物・色 | 薄いオレンジ色(橙黄色粘稠懸濁液) |
農林水産省登録 | 第13411号 |
使用期限 | 4年間 |
特徴 | 浸透性が高く、効果が長い |
ボタニ子
樹木剪定時の癒合剤・殺菌剤として使用
トップジンMペーストは、剪定時の切り口の癒合剤・殺菌剤としての用途が最も一般的です。被膜を作って病気の感染を防ぐほか、切り口の乾燥を防いでカルス(癒合組織)の形成を促す効果もあります。
切り口の殺菌・保護以外にも色々な用途が
そのほかにも、「病患部を削り取った後の切り口の殺菌・保護」、「凍害や日焼けした箇所(弱った箇所)への塗布による病害菌侵入の防護」、「移植時の種イモ・球根・苗の根の浸せき処理時」、「果樹の収穫前の樹上散布(腐敗防止)」など、様々な用途に使われます。
トップジンMペーストの効果的な使い方
効果的な使い方①~ハケを使って塗る
ハケを使えばトップジンMペーストをムラなく塗ることができます。塗り方がまだらで隙間があったり、被膜が極端に薄かったりすると、病原菌が入ったり乾燥したりしやすいので、切り口からはみ出すくらい万遍なく塗りましょう。
ボタニ子
チューブタイプなら、チューブの口を使って直接塗り広げることも可能。ハケを使わず、手も汚さず簡単な塗り方です。ただし、使い終わったらチューブの口はキレイに拭きましょう!
効果的な使い方②~必要に応じて重ね塗り
重ね塗りで切り口の乾燥を防止
切り口の乾燥を防ぎ、カルスの形成を早めるため、トップジンMペーストを2~3回に分けて重ね塗りすると効果的です。また、トップジンMペーストは比較的粘度が低く液だれしやすいため、塗布部の角度によっては充分な厚さの被膜ができないので、その場合も少し乾燥した頃を見計らって重ね塗りをしましょう。
効果的な使い方③~観葉植物の整枝時には小筆で
観葉植物の整枝作業では細い枝を切る場合が多いので、書道用や水彩画用の小筆を使うと作業がしやすいです。室内で作業をする場合は、液だれしやすいので、床に新聞紙やピクニックシートを敷くなど工夫しましょう。トップジンMペーストはそれほど臭わず、毒性も低いので、換気は特に気にしなくても大丈夫でしょう。
トップジンMペーストの使い方の例
果樹の剪定後におけるトップジンMペーストの塗り方
剪定後における果樹園での塗り方を動画で見てみると、トップジンMペーストを手慣れた様子でサクサクと塗り進めています。果樹でも観葉植物でも使い方は同じなので、初めての方もそれほど気負わずに簡単に塗れそうですね。
ぶどうの木の剪定時は特に注意が必要
先ほどの動画は梨の木へトップジンMペーストを塗布する様子でしたが、ぶどうの木の剪定と塗り方には注意すべきポイントがいくつかあります。ぶどうの木は休眠から覚めるのが早く、樹液が流れ始めると切り口の乾燥・治癒が遅くなるという特徴があるので、以下のポイントに注意して元気に育てたいですね。
ぶどうの木の晩腐病防除にトップジンM
ぶどうの木では、晩腐病(おそぐされ病)に罹患した結果母枝(※)や、巻きひげの除去後にトップジンMペーストを塗布します。 (※)結果母枝=春先から新梢(結果枝)が伸びる、前年に結実した枝
ぶどうの木への塗布は必ず休眠期に
①ぶどうの木の場合は、トップジンMペーストを必ず萌芽前(休眠期)に使用しましょう。萌芽後に使用すると生育が遅れる場合があります。
②ぶどうの木の休眠明けは早いので1月頃の作業がおススメです。
③ぶどうの木には、3倍液(1:2の割合。例えば1kgの薬剤に、水2リットル)を使います。
④樹液が出続けているときは重ね塗りをしましょう。
トップジンMペースト使用時の注意
作業は雨の日を避けて
降雨時はトップジンMペーストが乾きにくく、せっかく塗った薬剤が雨で流されてしまいやすいですし、雨水によって切り口に病原菌が流れてくる可能性もあります。晴れや曇りの日の作業がおススメです。
使用期限を守って使う
農薬は一般的に時間が経つと徐々に物性が変わったり有効成分が分解したりすることもあるので、トップジンMペーストについても使用期限内に使用することが大切です。使用期限に注意して購入・使用するようにしましょう。
トップジンMペーストの代用品とその違い
代用品①カルスメイト
トップジンMペーストの代用品として代表的な薬剤の一つです。酢酸ビニルというポリマーが主成分で、殺菌成分は含まれておらず、切り口の保護・乾燥防止が目的となります。トップジンMペーストがオレンジ色であるのに対しカルスメイトは透明なので、観葉植物など、見た目に配慮したい場合に適しています。
代用品②木工用ボンド
「癒合剤として木工用ボンドが代用できる」という話を聞いた方も多いかもしれません。実際、木工用ボンドの主成分はカルスメイトと同様に酢酸ビニルなので、"切り口の保護"としての効果はあります。ただし殺菌成分が含まれないため、塗布面にカビが発生したり、カルスの形成が不十分だったりすることもあるので、癒合剤として適切とは言えません。
代用品③墨汁
トップジンMペーストの代用品として墨汁も実際に使われており、「屋外用墨汁」というのも販売されています。墨汁は液状なので作業性が良いというメリットがある一方、殺菌効果が期待できないほか、乾燥しやすいため塗布後に切り口が割れてしまいやすく、癒合促進には効果が薄いと言われています。
トップジンMの「ペースト」剤以外のラインナップと用途
①トップジンM水和剤
トップジンM水和剤は、低濃度でも高い効果を発揮し、浸透力が強い点が特長です。トップジンMペーストは住友化学園芸が販売していますが、トップジンM水和剤は日本曹達、協友アグリ、クミアイ化学、日本農薬、北興化学が販売しており、主に業務用に使われます。
有効成分:チオファネートメチル 70.0%
毒性:普通
内容:淡褐色水和性粉末
使用期限:4年間
農林水産省登録:第11573号
使い方:規定量の水で希釈して散布する
②トップジンMゾル
水和剤が粉末状であるのに対して、有効成分微粉化した農薬原体に分散剤や界面活性剤を加えて液体状にしたものがトップジンMゾルです。
有効成分:チオファネートメチル 40.0%
毒性:普通
内容:淡褐色水和性懸濁液
使用期限:4年間
農林水産省登録:第19783号
使い方:規定量の水に薄めて散布。糸状菌などのカビによる病気に効果があります。
③モスピラン・トップジンMスプレー
モスピラン・トップジンMスプレーは、病原菌だけではなく、害虫防除にも効果があります。使用前に容器をよく振り、そのままスプレーして使用します。中程度の毒性があるので、トップジンMペーストより取扱いに注意が必要です。
有効成分:アセタミプリド0.0050%・チオファネートメチル0.040%
毒性:中毒(長袖・長ズボン、マスク、手袋の着用が必要)
内容:類白色水和性懸濁液体
使用期限:4年間
農林水産省登録:第21309号
まとめ
50年以上の実績を持ち、農薬として信頼性の高いトップジンMペースト。毒性が低く、使用法も簡単なので、手軽に使うことができます。病原菌や乾燥から大切な樹木を守るため、トップジンMペーストを使ってみてはいかがでしょうか。
トップジンMペーストは、甜菜(サトウダイコン)を対象とする抗菌試験から、わずか3年後の1964年に登録された農薬です。商品名の「トップ」は、甜菜の地上部を意識して付けられた名前なのだそうですよ。