人参はアフガニスタンが原産の一年草で、ビタミンCやカロテンが豊富に含まれている栄養満点の野菜です。人参はオレンジ色だけでなく、赤色や黄色などさまざまな品種があります。ミニ人参などの小さな品種は室内でも気軽に栽培できるため、家庭菜園の初心者にもおすすめです。
園芸部類 | 野菜 |
形態 | 一年草 |
樹高・草丈 | 30cm〜50cm |
花の色 | 白、緑 |
耐寒性 | やや強い |
耐暑性 | やや弱い |
耐陰性 | やや弱い |
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
人参は、オレンジ色や赤色の鮮やかな根の部分が食用として利用されています。品種によって人参の色が異なり、金時人参は深みのある赤色、金美人参は鮮やかな黄色をしているのが特徴です。また、人参の葉は「人参葉」と呼ばれおいしく食べられます。やわらかい若葉をさっと洗ってサラダにしたり天ぷらにしたりするなど、アレンジレシピもさまざまです。
あまり知られていませんが、人参は白色や緑色の花を咲かせます。開花時期は5月〜6月で、茎の先端にいくつもの小花が密集するように咲くのが特徴です。開花がすすむと、花房がドーム状にこんもりと盛り上がり、ボリュームのあるかわいらしい咲き姿が楽しめます。
名前の由来は?
人参は、古くから薬用として利用されていた「朝鮮人参」の形によく似ており、セリ科の植物のため、はじめは「セリニンジン」と名付けられました。しかし、セリ科の人参が主流となったため、現在では「人参」と呼ばれています。また、枝分かれした根が人型にみえるので「人参」と名付けられたという説もあります。
花言葉は?
人参には「幼い夢」という花言葉がついています。人参はカレーや煮物など、子どものころから馴染み深い料理に使われている野菜です。また、離乳食として幼いころから食べられている食材のため「幼い夢」という花言葉がついたといわれています。
金時人参
参考価格: 4,500円
金時人参は「京人参」とも呼ばれており、主に西日本で栽培されている品種です。細長い形が特徴で、長さは30cmほどまで大きく成長します。いぼの部分が白く、切り口は内部まで深い紅色をしているため、料理に彩りを添えてくれる野菜としても人気です。
大きさ | 25cm〜30cm |
---|---|
原産地 | 香川県 |
ベビーキャロット
参考価格: 220円
ベビーキャロットは人参の小型品種で、収穫時期になっても10cmほどの大きさにしかなりません。そのため「ミニ人参」や「ミニキャロット」とも呼ばれている品種です。甘みが強く、サラダやスープにするとおいしく食べられます。種をまいてから70日〜80日という短期間で収穫できるため家庭菜園にも人気です。
大きさ | 約10cm |
---|---|
原産地 | ヨーロッパ |
金美人参〈キンビニンジン〉
参考価格: 3,300円
金美人参(キンビニンジン)は名前のとおり、金色をした美しい見た目が特徴の品種です。肉質がやわらかく、野菜ジュースやサラダなどの生食に適しています。長く加熱すると煮崩れてしまう恐れがあり、煮物料理には向いていません。
大きさ | 50cm〜20cm |
---|---|
原産地 | 沖縄県 |
種まき時期 | 3月〜4月、7月〜8月 |
植え付け時期(ポット苗) | 4月〜6月、7月〜9月 |
間引きの時期 | 4月〜6月、7月〜9月 |
花が咲く時期・開花時期 | 5月〜6月 |
肥料の時期 | 4月〜6月、7月〜9月 |
収穫時期 | 7月〜8月、11月〜2月 |
栽培適期は?
人参の育成適温は15℃~22℃で、耐暑性がやや弱いのが特徴です。そのため、初心者は8月下旬ごろに種をまいて、涼しくなる時期に育苗や収穫などの手入れができるように「夏まき」で育てましょう。春まきでも育てられますが、寒冷紗や遮光ネットを使用して暑さ対策をする必要があります。
人参は、地植えでも鉢植えでも育てられます。しかし、人参は根が深くまで伸びるため、植木鉢やプランターで栽培する場合は、深さのある鉢を使用してください。広いスペースを確保できる場合は、畑に畝を立ててから種まきやポット苗の植え付けをしましょう。
人参は日光を好むため、基本的には屋外で管理します。人参の生育適温は18℃〜22℃のため、真夏日が続き気温が高くなっている場合は、室内に取り込んでも構いません。室内で育てる場合は、ミニ人参などの小さな品種を選ぶのがおすすめです。レースのカーテン越しの窓辺など、適度に日光の差し込む場所で管理しましょう。
人参は、日当たりと風通しのよい場所で管理してください。日光をたっぷり当てて育てると、甘くておいしい人参が収穫できます。人参は、羽状に細かく切れ込みの入った葉をたくさんつけるため、風通しのよい場所で管理して、病気や害虫被害を予防しましょう。
人参は、毎回同じ場所で育てると連作障害を起こします。そのため、同じ場所で連作する場合は、4年以上期間をあけてください。鉢植えの場合は、用土をすべて新しくすると、連作障害を起こさずに栽培できます。また、コンパニオンプランツとして「枝豆」を近くに植える方法も、連作障害対策には効果的です。
人参は畝を立てて管理すると、太くて健康的な根に育ちます。畑で栽培できる場合は畝を立ててから種をまいたり植え付けたりしましょう。畝の高さは10cm〜15cm、畝の幅は40cm〜60cmがおすすめです。畝間を30cm〜50cmほどあけておくと、収穫や除草作業などの管理がしやすくなります。
畑の排水性が悪い場合は?
人参を育てる場所の排水性が悪いようならば、畝の高さを20cm〜25cmほどの高畝にするのがポイントです。排水性が悪いと、根腐れを起こして人参が腐ったり枯れたりするため注意しましょう。
人参は、水はけと水もちのよさを兼ね備えた用土で管理しましょう。鉢植えの場合は、市販されている「野菜用培養土」を使用すると便利です。自分で配合する場合は、赤玉土の小粒と腐葉土を混ぜ込んでから、少量のバーミキュライトを加えた用土を使用してください。
地植えの場合の用土作りは?
人参を地植えで栽培する場合は、種まきの3週間前に、堆肥や緩効性の化成肥料を混ぜ込んでおきます。2週間前に、苦土石灰を混ぜ込み、酸性濃度をpH5.5〜pH6.5に調節してください。堆肥や苦土石灰を混ぜ込むときに用土をしっかりと耕して、用土をふかふかの状態にしておくのがポイントです。
人参の種まきは、3月〜4月か7月〜8月に行います。人参は移植すると枯れるリスクが高くなるため、地植えでも鉢植えでも育てたい場所に直接種まきをしてください。人参の種はとても小さく、水やりで流れてしまう恐れがあります。種まきの前にあらかじめ用土を濡らしておくのがコツです。
人参を植木鉢で育てる場合は、鉢の真ん中に指で1cmほどの深さの穴をあけ、種を3粒〜4粒まいてください。プランターの場合は、10cmほど間隔をあけて3カ所〜4カ所に種まきします。畝に種まきする場合は、1cmほどの深さのまき溝を20〜30cm程度掘ってから、条まき(すじまき)していきましょう。
条まきとは?
条まきとは、畝に掘った溝に線状に種まきをしていく方法です。溝に沿って苗が伸びてくるので、間引きをして適度な株間を作りながら管理します。
人参の種は「好光性種子」という性質があり、光がないと発芽できません。そのため、種をまいたあとは薄く土をかぶせるのがポイントです。種がちょうど隠れる程度に覆土し、発芽までは日光が当たる場所で管理してください。また、水切れを起こすと種が乾燥し、発芽しない場合があります。毎日しっかりと水やりをしながら発芽を待ちましょう。
人参は、本葉が2枚〜3枚まで成長したら間引きします。健康で丈夫に育っている株を残して、弱々しい葉や株を間引いていきましょう。また間引きするときに、株のまわりに生えている雑草をしっかりと取り除き、栄養分が雑草に吸い取られないように管理します。人参は成長速度が遅いため、雑草に負けないためにも間引きや除草は欠かせない作業です。
人参を畝で育てている場合は、2回の間引きで株と株の間を5cm〜10cm程度にしましょう。間引きで取り除いた「間引き菜」は、細かく刻んでサラダやパスタにかけるとおいしく食べられます。
1回目 | 2回目 | |
春まき | 4月上旬〜5月上旬 | 5月上旬〜6月下旬 |
夏まき | 7月下旬〜8月下旬 | 8月上旬〜9月中旬 |
人参をポット苗の状態で購入した場合は、4月〜6月か7月〜9月に植え付けましょう。株間は10cm〜15cmほどあけてください。畝に植え付ける場合は、20cm〜30cmほどたっぷりと余裕をもって植え付けるのがおすすめです。種まきから育てる場合は、移植をすると枯れる恐れがあるため、定植や植え替えはしません。
人参を植木鉢やプランターに植え付けるときに「野菜用培養土」を使用した場合は、用土に栄養分が含まれているため、肥料を施す必要はありません。地植えにする場合は、元肥として堆肥や緩効性の化成肥料をしっかりと混ぜ込んでおきましょう。
人参が発芽してから、茎が15cm程度に成長するまでの「育成初期」には、毎日しっかりと水やりを行います。茎が太くなり、根が地面に出始める「育成後期」には、土が完全に乾いてから水やりをしてください。育成後期に水を与えすぎると、人参がぶよぶよに腐ったり茶色く枯れ込んだりするため注意しましょう。
水やりのコツは?
人参は多湿な環境が苦手なため、雨が降るように上から水やりをしないのがコツです。人参の水やりは、葉に水がかからないようにするのが重要で、株元だけにそっと水を与えましょう。水やりのときに泥跳ねを起こすとカビが発生し、病気や害虫被害を受けて枯れ込みやすくなります。
追肥は、株がある程度成長した間引きのタイミングでするのがおすすめです。春まきの場合は4月〜6月、夏まきの場合は7月〜9月に行いましょう。人参1株につき、3g~5gほどの化成肥料を施してください。肥料を与えたあとは株元に土寄せして、人参の頭の部分が隠れるようにします。
種が発芽しない場合は、土をかぶせすぎている恐れがあります。人参は光が届かない場所では発芽しないため、土は薄くかぶせて明るい場所で管理しましょう。また、全く土を被せなかったり土の量が少なかったりすると、種が乾燥して発芽しない可能性があります。1週間〜10日経っても発芽しない場合は一旦種を掘り起こし、もう一度種まきからやり直してください。
人参の葉が茶色く枯れ込む場合は、水の与えすぎや排水性が悪い場所で管理している可能性があります。人参を多湿の環境で育てると「葉枯れ病」などの病気にかかりやすくなり、下葉から枯れ込んでくるので注意しましょう。また、葉枯れ病は連作障害を起こすと感染しやすい病気のため、しっかりと期間をあけてから次の人参を栽培しましょう。
人参はある程度大きく成長すると「とう立ち」して白い花を咲かせるのが特徴です。開花時期は5月〜6月で、花に栄養分が取られて、おいしい人参が収穫できなくなります。そのため、人参がとう立ちして花が咲く前に収穫を終えるのがポイントです。
うどんこ病は、カビの菌糸が原因で発生する病気です。うどんこ病に感染すると、葉の光合成が妨げられて人参が弱ったり枯れたりします。梅雨時期などのジメジメとした環境で発生しやすく、感染した部分が白く粉をふいたようになるのが特徴です。うどんこ病に感染した部分は、薬剤を散布して早めに処分しましょう。
立ち枯れ病は、高温多湿の土壌で管理していると発生しやすい病気です。株元から茎や葉が枯れ込み、人参がしおれたり弱ったりします。感染した部分は黄色や褐色に変色し、腐敗が始まると悪臭を放つようになるのが特徴です。ほかの部分への感染を防ぐためにも、早めに切り取って処分してください。
アブラムシは年間を通して発生しやすい害虫で、人参の葉や茎の部分に大量発生する恐れがあります。人参の栄養分を吸汁しながら成長し、人参が弱ったり枯れたりするため注意が必要です。アブラムシの数が少ないうちはガムテープに貼り付けて駆除しますが、大量発生した場合は薬剤を散布して駆除してください。
ヨトウムシは、漢字で「夜盗虫」と表記される害虫です。昼間は土の中で休んでいますが、名前のとおり夜になると活動を開始するのが特徴で、葉のやわらかい部分を食害します。害虫の姿が見えないのに、葉が穴だらけになっている場合はヨトウムシを疑いましょう。夜に見回りをして、箸などでヨトウムシを直接つまんで駆除してください。
出典:写真AC