テントウムシに働いてもらおう!
手塩にかけて育てたお花や野菜。なのに、ちょっと目を離したすきにアブラムシがびっしり!ぎゃー!なんて経験ありませんか?アブラムシは黒い種類や赤い種類、羽のある種類などじつにさまざま。なかには緑色の種類もいて、手でつぶしてしまってから気づいたりすることも。薬剤はなるべく使いたくないし、かといって薄めた牛乳をスプレーしても効果はそのとき限り……。こんなときこそ、お庭の番人テントウムシさんの出番です。
意外に大食漢!頼れる益虫テントウムシ
日本のどこででも見かけるナナホシテントウやナミテントウは、アブラムシにとっては恐ろしい天敵。テントウムシの成虫は一日に約100匹のアブラムシを、幼虫でも50匹ものアブラムシを食べます。意外に大食漢のテントウムシの寿命は3か月といわれていますが、実際には半年から2年もの間、元気でいるものもいるそうで、この間ひたすらアブラムシを退治し続けてくれるのです。単純計算すると、1匹のテントウムシの稼働で駆除できるアブラムシの数は半年でなんと18,000匹!
農業の救世主として注目されるテントウムシ
今から100年ほど前、アメリカでは外来種であるカイガラムシに柑橘類の葉を食い荒らされて困っていました。当時の昆虫学者ライレーはカイガラムシとその天敵の関係性をつきとめ、それを受けた政府がカイガラムシの天敵であるべダリヤテントウを輸入し農園に放したところ被害が収束したということが記録に残っています。その後日本でも同様な被害がでましたが、同じような対策をして被害の拡大を防いだとのことです。
そしていま再び注目されるテントウムシ農法
2018年5月のTBSラジオで放送された番組内で、テントウムシを使ったアブラムシ駆除の紹介がされたのをご存じでしょうか。千葉県立農業大学校の生徒が、ナミテントウの背中の上にホットメルト接着剤を塗って、飛べなくしたテントウムシを商品化しているといった内容です。接着剤で羽を開かなくし飛んでいかないようにした商品ということで批判もあったようですが、接着剤の効果は2か月ほどなので交尾や産卵への悪影響はほとんどないのだとか。
飛ばないナミテントウの開発も
農業と食品産業の発展のための研究をおこなう農研機構では、採取したたくさんのテントウムシの中から、飛翔能力の低いナミテントウを探しだし、それらを交配することで、遺伝的に飛翔能力が低いナミテントウを育成しました。「飛ばないナミテントウ」製剤として、「テントップ」の商品名で販売中です。
自然界の食物連鎖を利用したエコ農法に期待
農家さんを悩ますアブラムシ。農薬をまいてしまえば退治することはできますが、同時に他の昆虫を殺して生態系を壊すことにもなりかねません。もちろん、農作物に薬剤が付着する心配もあります。テントウムシを使ったアブラムシ駆除なら、こういった心配は無用。自然にも体にも優しいといえるでしょう。
テントウムシの調達法
思ったように庭にテントウムシが集まらない場合は、捕まえに行きましょう。見つけたら、そっとつまんで虫かごなどに入れて持ち帰ります。冬になると落ち葉の下などで冬眠するので、その落ち葉ごと連れて来て、春になるまで飼育箱などで保管するのも手です。
テントウムシ捕獲スポット①公園
よく行く公園はありませんか?身近ないつもの公園でも、テントウムシはみつけることができます。子供と一緒に虫取り競争したら、案外短時間でたくさんとれるかも。よく日の当たる木の幹や葉っぱの裏などを探してみましょう。
テントウムシ捕獲スポット②コンクリートや石の上
少し涼しくなってくると、暖を求めてか塀や花壇のふちなどコンクリートのところでみつけることが多くなります。冬を越すために電信柱の日当たりのよい側にびっしりと集団でついていることもあります。
捕獲するときの注意
テントウムシを捕まえるときの注意点がひとつあります。それは、そっとつまむこと。強くつかんでしまうとテントウムシが警戒して青臭い汁を出すのです。指や服につくと黄色い色がなかなか落ちないし、臭いもしぶとく残ります。テントウムシを弱らせないということもありますが、優しく優しくを心がけましょう。
テントウムシと幼虫をみつけたら
テントウムシは4月と10月というように年2回繁殖期を迎えます。この時期、木の枝や葉の裏などに産み付けられた1ミリほどの縦長で黄色または乳白色の卵をみつけたらしめたもの。自宅の庭の木に卵がついているのをみつけたら、そのままそっとしておきましょう。気温にもよりますが卵は3日から4日ほどで孵化します。
テントウムシの天敵・コマユバチ
アブラムシにはめっぽう強いテントウムシですが、コマユバチにはかないません。いわゆる寄生バチの一種であるコマユバチは、コマユバチ科に属する蜂の総称です。コマユバチは宿主の体内を食い荒らした後、ある程度成長すると宿主の体を突き破り外へ出ると小さな繭を作り、その中でさなぎになります。当然、寄生された虫は死んでしまうことに。
てんとう虫は天道虫
最後に、テントウムシの名前の由来についてのお話を少しだけ。テントウムシは上へ上へと登りつめ、やがててっぺんから空へ飛び立っていく性質があります。その姿がまるで太陽をめざして飛んでいくように見えることから、お天道様虫からてんとう虫となったのだそうです。飛び立った姿に夢中になって自分が転倒虫にならないように気をつけましょうね!
- 1
- 2
アブラムシにとって僕らは天敵。さあ今日もいっぱい食べるよ!
引用元:写真AC