なぜぶどうは剪定が必要なのか?
おいしいぶどうを毎年収穫するためには、剪定は欠かすことのできない大切な作業になります。なぜ剪定が必要か詳しく説明します。
①日当たりをよくする
いらない枝を整理し、バランスよく配置することで、葉全体に日光が当たるようになります。効率よく光合成をすることができるようになると、養分がたくさん作られ、糖度の高いぶどうができるのです。
②果実のなりすぎを防ぐ
枝を整理することで、果実がなりすぎも避けることができます。樹を疲れさせずに健康な状態を保ち、寿命を長くすることができます。
③病害虫の発生を防ぐ
枝が混みあうと風通しが悪くなり、病害虫の発生が増えてしまいます。剪定をすることで異常にも気が付きやすくなり、日常の管理もしやすくなります。
ぶどうの実のつき方
ぶどうの剪定を始める前に、実はいつどのようにつくのかという「結果習性」を理解することが大切です。これを知っていると、大切な枝を切ってしまったという失敗も減らすことができます。
今年伸びた枝に翌年の芽がつく
ぶどうは春から伸びた新しい枝についた葉の付け根に、翌年の芽をつけます。この枝が来年実がつく「結果母枝」になるのです。8月くらいにはすでに翌年の花芽ができています。翌春その芽から枝が伸び、根元から3~5枚目くらいの葉の基部に実がつきます。このことをしっかり覚えて剪定にとりかかりましょう。
適切なぶどうの剪定時期はいつ?
ぶどうの剪定はいつでも行えるわけではなく、時期を間違うと実つきが悪くなるどころか、樹を弱らせてしまう原因にもなりかねません。季節によって剪定の目的は変わり、メインとなる「冬季剪定」と枝の調整を行う「夏季剪定」があります。いつどのように剪定すればよいか説明します。
冬季剪定は11月~2月
樹形を作る剪定
冬季剪定は、ぶどうの樹形を作っていくための一番大切な作業です。秋の落葉後~冬の活動を停止している時期に行うことで強剪定が可能になります。
極寒地や降雪地域の場合
秋の落葉後すぐ~12月中を目安に剪定します。1~2月の最も寒さの厳しい時期は、切り口に凍れが入りやすくなるため避けた方がよいでしょう。降雪地域は晩秋~雪が積もる前には終わらせておきます。
春近くに切るのは厳禁
ぶどうは樹液が流れ始めるのが早く、春の近い時期に剪定すると、切り口から樹液がどんどん出て樹が弱ってしまいます。早いものでは1月でも出る場合があります。剪定時期が遅くなってしまったときは、まず1本だけ枝を切ってみます。1日おいて樹液が出ていないか確認してから剪定しましょう。
ボタニ子
単に「ぶどうの剪定」という場合はこの冬季剪定のことをいいますよ。
夏季剪定は5~7月
間引き剪定や摘心を行う
夏季剪定はいつ行うべきという明確な時期はなく、上手に管理すれば必要ないこともあります。春の芽吹き後から夏までの間によく伸びた枝を整えるだけで、冬季剪定のように強く枝を切るやり方はしません。混みすぎた枝を間引いたり、伸びすぎる枝を摘心したりしながら、バランスを見て誘引します。必要以上に切ってしまうと逆に樹を弱らせることにもなるので、最低限に留めましょう。
必要に応じて芽かきをする
冬季剪定が不十分だった場合は、早い時期に芽かきをすることで調整します。弱い新芽、強すぎる新芽をつむことで新梢の勢いを揃えることができます。また、あらかじめ芽を減らしておくと、不要な枝で混みあわず夏季剪定の作業が楽になります。
ぶどうの剪定の種類
ぶどうの剪定には「長梢剪定」と「短梢剪定」の2つの方法があります。ぶどう棚などで仕立てる場合は、長梢剪定・短梢剪定どちらの方法も利用されます。フェンスや垣根など、狭い範囲で仕立てる場合は短梢剪定のみが多いです。簡単にそれぞれの特徴をまとめました。
①長梢剪定
剪定する枝の付け根から7~8芽残して、やや長めに切る方法です。古くから多くの品種で用いられてきた一般的な剪定方法です。
長梢剪定のメリット
- 枝を速やかに広げ、枝を自由に配置できるので棚づくりしやすい
- 樹の状態を見ながら、剪定する量を調整できる
- すべての品種に対応できる
長梢剪定のデメリット
- 慣れるまで経験が必要
- 作業が単純ではないので、人手と時間がかかる
②短梢剪定
剪定する枝の付け根から一律に2~3芽残して切る方法です。長梢栽培のように技術がなくてもできるため、作業を単純化することができます。
短梢剪定のメリット
- 毎年同じ剪定なので、初心者にも単純でわかりやすい
- 新梢の勢いを揃えやすい
短梢剪定のデメリット
- 樹の生育状態を見ながら剪定量を加減できない
- デラウェアなど品種によっては不向きがある
- 勢いのよい枝が出やすいので、摘心作業が多くなる
ボタニ子
次からはいよいよ整枝剪定のやり方です。「棚仕立て」と「垣根仕立て」の2つのやり方をご紹介しますよ。
出典:写真AC