雑草が見分けやすくなる夏~秋
暑い夏が終わり涼しい秋へ移り変わると、植物たちも姿を変えます。どんな名前なのか見分けがつかない地味な雑草も、この時期になると特徴的な姿へ変化します。何気なく見ている雑草がどんな種類であるのか、秋はそういったことも知れるチャンスです。特徴的な形態である穂をつけるイネ科雑草を中心に、初夏から秋にかけてよく見られる雑草を学んでいきましょう。
ボタニ子
庭や道端でいつもみかける雑草の見分け方を知れるチャンスだね!
雑草の見分け方のポイント
イネ科草本類は、葉っぱに縦の筋(葉脈)しかなく、根はひげ根で一般的なピンクや黄色などの花らしい形の花を咲かさない植物です。花の代わりに穂をつけるため、イネ科とほかの植物と区別しやすく、穂や葉の形状的特徴を覚えておけば見分けることも簡単です。イネ科雑草の種類特定のために観察するポイントを押さえましょう。
ボタニ子
ピンク色や黄色、赤い色の花が咲けば、どんな雑草かわかりやすいんだけどね…。
見分け方のポイント①穂の形
穂は、正しくは小穂というものの集合体です。イネ科雑草は、春もしくは秋になると小穂をつけるようになります(出穂)。
茎からの枝分かれ方で見分ける
穂の形でイネ科雑草を見分けるときは、穂が付いている茎(花茎)から、どのように枝分かれしているか確認しましょう。花茎に直接つくもの、円柱状や円錐状など立体的に枝分かれするもの、流れるように平面上につけると大きく3パターンに分けられます。
小穂についた毛で見分ける
穂でイネ科雑草を見分けるときに、穂の毛のあるなしを確認するのも見分け方の一つです。小穂につく毛のことを「芒(のぎ)」といい、イネ科雑草がもじゃもじゃ見えるのに一役買っています。これがある種類とない種類がはっきりしているため、見分ける最後の決め手になることが多いです。
見分け方のポイント②葉
穂の形でイネ科雑草の見分けがつかなければ、葉の形を確認しましょう。イネ科の葉は、一見同じような形に見えますが、ポイントを踏まえれば種類ごとの違いがわかります。
葉脈で見分ける
イネ科雑草の葉で観察するポイントは、葉脈の色と葉の光沢です。真ん中の葉脈(主脈)は、白くはっきりしたり、周りとほとんど変わらなかったりと種類ごとに色が異なります。葉の光沢は、表面がテカテカと光沢があったりマットに沈んだ色合いをしていたりと、こちらも種類によって異なります。
葉耳で見分ける
葉っぱと茎のつなぎ目部分を葉耳といい、内側に茎を囲むように出っ張った部分がありますが、同じ位置に外側に向かって細い毛が生えていることがあります。この有り無しを確認することで、特定が難しいイネ科雑草を見分けるのに役立ちます。
見分け方のポイント③茎
イネ科雑草の茎は、穂が出ていなくても特定に役立ちます。難しそうに考えられがちですが、観察ポイントは初心者でもわかりやすいです。
茎の形で見分ける
イネ科雑草の茎の形は、根っこに近い部分でふたつに区別できます。平べったい扁平状かしっかりと丸い形をしており、手で挟むように触れることで形状を確認できます。この際に上の方の茎は丸いことが多いため、間違いに注意してください。
地下茎で見分ける
イネ科雑草には、地中に這わせた「茎(地下茎)」をつくる種類と株をつくり叢生(そうせい)する種類があります。上から見て円上に葉や茎がでていれば株をつくる種類です。穂が列をなして地面から生えている場合は、地下茎の種類であることが多いです。
よく見る雑草の種類図鑑①オヒシバ
基本情報
学名 | Eleusine Gaertner |
英名 | Goosegrass(グースグラス) |
分類 | オヒシバ属 |
形態 | 一年草 |
開花期 | 8月~10月 |
分布 | 本州・四国・九州、全世界の暖地 |
特徴
オヒシバは草丈20~50cmほどの、初夏になるといたるところに生えている雑草です。別名「力草」といわれ、株をつくると手ではなかなか抜けないたくましい雑草です。踏みつけに非常に強く、グラウンドや道端にも平気で生育する、雑草魂の言葉どおりの植物といえます。オヒシバの仲間には、幻の雑穀として利用されているシコクビエがあります。
見分け方
オヒシバは枝を斜め上向きに2~6個つけ、風で裏返った傘の骨組みのような形です。小穂は、枝の片側に2列に連なってついてるため、穂を上からみるとゴカイやワームなどの節足動物のように見えます。
よく見る雑草の種類図鑑②メヒシバ
基本情報
学名 | Digitaria sanaginalis |
英名 | Fingergrass(フィンガーグラス) |
分類 | メヒシバ属 |
形態 | 一年草 |
開花期 | 7月~11月 |
分布 | 北海道から九州、全世界の温帯から熱帯 |
特徴
メヒシバは、道端や空き地で頻繁に生えるやや背の低い雑草です。オヒシバに比べると、細めの印象を与えるため、メヒシバと呼ばれるようになりました。メヒシバにはしっかり根を張る力強さはありませんが、地上に地下茎をはわせて生息域をどこまでも広げるしたかかさがあります。庭の芝生では、手で抜き取るだけではすぐに再生するため、完全駆除には除草剤や防草シートで対策しないといけません。
見分け方
メヒシバの穂は針のような形状で、夏~秋の時期に見られます。オヒシバと似たような枝分かれ方ですが、比べると小穂がとても小さく、茎の形が丸みを帯びていることで区別できます。また、オヒシバが株をつくるのに対して、メヒシバは地下茎をつくる点も見分けるポイントです。
コメシバとの見分け方
メヒシバの小型種にコメシバがあります。メヒシバ同様に初夏~秋に穂を出しますが、30cmほどの背の低い小型雑草です。メヒシバは花茎から別々の位置で枝分かれしているのに対して、コメヒシバは花茎の同じ位置から枝分かれしており、穂のつき方が異なります。また、枝の長さもメヒシバよりも短いです。
画像出典:筆者撮影