ウィローモスとは
温帯から熱帯にかけて世界中に広く分布する、水コケの総称をウィローモスと呼びます。巻きつけた岩や流木にくっつく「活着(かっちゃく)」という性質を持っている、土に埋めないタイプの水草です。手でちぎったり、光の量が少なかったりしても問題なく育つ丈夫さが魅力で、初心者にも扱いやすいためアクアリウムやアクアテラリウムのレイアウトに大変人気があります。
岩・流木組みのアクアリウムに
ウィローモスの活用法としてもっともメジャーなのが、鑑賞用レイアウトでの使用です。特に岩や流木で組む水槽で使うと、雰囲気もマッチしていて素敵にみえます。流木を配置しただけではなんとなく殺風景な水槽も、ウィローモスを活着させた流木に変えるだけでぐっと雰囲気が本格的になります。自然感や古めかしさ、渋さの演出に一役買ってくれる強い味方です。
エビや魚の隠れ場所やエサとして
細い葉で茂みをつくるウィローモスの性質は、魚やエビの隠れ場所としても活躍します。からだを休める場所としてはもちろん、卵を産みつける産卵床としても優秀です。また、ウィローモスの新芽はやわらかくて食べやすいので、水草を好む魚やヌマエビなどのエサにもなります。
ウィローモスの種類
ウィローモス
アクアリウムで使用されるウィローモスの中でも、もっとも一般的な品種です。流通量が多いため入手しやすく、育成も簡単であるため初心者から上級者まで広く使用しています。
南米産ウィローモス
南米が原産地の南米産ウィローモスは、一般的なウィローモスに比べて葉の色が明るいモスです。三角形に枝分かれしている葉の姿が特徴的で、愛好家の間で人気があります。活着する力はやや弱めなので、配置する際に注意が必要です。
ジャワモス
普通のウィローモスそっくりの見た目をしていますが、ジャワモスのほうが少しだけ葉が細いのが見分けるポイントになります。繁殖が進むにつれて光の届かない場所が出てきてしまうのがウィローモスの弱点ですが、ジャワモスは葉が細い分、株の下の方まで光が行き届きやすく、光合成不足による枯死が少ないという強みがあります。
フェザーモス
一般的なウィローモスよりも葉が長いのが特徴で、フェザー(feather:羽根)という名前の通り、ふわふわとした感触のモスです。繁殖が進むにつれてボリューム感が増していくため、ダイナミックな姿を楽しめます。
フレイムモス
フレイムモスもその名の通り、フレイム(flame:炎)に似た形のモスです。光に向かって、炎が立ちのぼるように成長するという特性があります。変わったレイアウトを作りたいときに重宝するモスです。
バブルモス
バブルモスは一見するとごくごく普通のウィローモスと変わりありません。名前の由来はその特性で、光合成によって発生した酸素が気泡となって全身にくっつく姿から、バブルをまとうモスということでこの名がつけられました。
オレゴンリバーモス
ウィローモスの中でもひときわ大型の品種がオレゴンリバーモスです。ほかのモスに比べてもボリュームがあり、ふかふかとした外見で、繁殖が進むと非常にゴージャスな雰囲気になります。1種類だけでも見応えのある水景を作ってくれるモスです。
ゼニゴケ
葉の幅が広くリボンのようにも見えるモスがゼニゴケです。色も形もワカメに似ていますが、成長すると大きな茂みになり、ふよふよと優雅に水中を漂う姿を楽しめます。
ノコギリカワゴケ
ほかの品種よりも長めの葉が、1枚ずつ伸びるという特徴を持つのがノコギリカワゴケです。葉の形からノコギリという名前がつけられました。日本でも一部の地域で自生している、ボリューム感たっぷりのモスです。
ホウオウゴケ
ウィローモスには形にちなんだ名前がつけられたモスが多いですが、このホウオウゴケも同じです。伝説の鳥である鳳凰(ホウオウ)の羽根に形が似ていることから、ホウオウゴケと呼ばれています。規則性のある葉の並びが特徴です。
ウィローモスの育て方
ウィローモスは根を持たずに育つため、必要な栄養分は水中から吸収しています。水温は20度~28度程度まで対応可能で、水質にもそこまで神経質になる必要はありません。少ない光量でもしっかりと育ちますので、初心者でも育てやすい水草といえるでしょう。栄養が行き届いているときはきれいなグリーンに、状態が悪いときは茶色く変色しますので、健康かどうかは色をバロメーターにするとわかりやすいです。
育て方のポイントは光の量
前述のとおりウィローモスは低光量でも育つ丈夫なモスですが、より質のよい元気なウィローモスを育てるためには、やはり光の量は重要なポイントです。あまりにも光が弱かったり、ほかの植物の陰になっている部分があったりすると光合成がうまくいかず、調子を崩してしまうことがあります。光がきちんと当たるように配置を変えたり、トリミングをしたりして、まんべんなく光合成が行えるようにしましょう。
ウィローモスの増やし方
育て方が簡単なウィローモスは、繁殖させるのも難しくありません。ポイントとなる「こまめなトリミング」について、順を追ってご説明します。ほんの少し手をかけてあげるだけですくすくと成長し、あざやかなグリーンで水槽をにぎやかにしてくれますよ。
増やし方の手順①モスをバケツや洗面器に移す
ウィローモスは葉がとても細かいので、水槽の中でカットすると切った葉が散らばってしまって掃除が大変です。トリミングはバケツや洗面器など、別の場所で行ったほうがよいでしょう。
増やし方の手順②短くカットする
続いてトリミングです。ウィローモスはカットしたところから新しい芽が出てくるので、長さが3mmくらいになるようにカットするとよいでしょう。育成に成功すれば、こんもりと茂る元気なモスができあがります。
増やし方の手順③活着させる
最後にバケツの中のカットした切れはしをまとめて、岩や流木に巻きつけるように活着させればOKです。この活着の作業が面倒な場合は、モスの切れはしをそのまま水槽に入れておいても自然に育ちます。いつもより多めに光を当てたり、CO2を添加したりといったひと手間を加えると、より活着が進みますよ。
ペットボトルを使った増やし方は有効?
ウィローモスはトリミングによって簡単に増やすことが可能ですが、ペットボトルを使った増やし方もあります。メリットやデメリットとあわせて、その育て方を見てみましょう。
ペットボトルでの増やし方
飼育容器にペットボトルを使うという点以外は、水槽での手順と同じです。トリミングを行い、岩や流木に活着させて増やしていきます。
ペットボトルで育てるメリット
ウィローモスをペットボトルで育成するメリットは、光合成がしやすい点です。たとえば色つきのバケツでウィローモスを育てた場合、横からの光が当たりません。ペットボトルは透明なので、上だけでなく横からもたっぷり光を与えられます。全方向から光を取りこめるので、まんべんなく育成できるのが利点です。
ペットボトルで育てるデメリット
ただしこのメリットは、水槽で育てた場合でも同じことが言えます。一方でペットボトルで育てることには、水温の変動が大きいことや、ろ過フィルターがつけられず水質が悪化しやすいことなどのデメリットがあります。ペットボトルで育てることも不可能ではありませんが、きれいな水を保ちやすい水槽での育成がおすすめです。
まとめ
いろいろな種類のあるウィローモスは、初心者でも簡単に育てられることで人気の水草です。明るいグリーンと特徴的な葉の形で、レイアウトに奥ゆきを持たせてくれます。ちょっとした手入れでどんどん増やせるので、ぜひアクアリウムのコーディネートに役立ててみてくださいね。
出典:写真AC