オオカナダモ(アナカリス)とは?
特徴
水質・水温に左右されず繁茂している外来の水草
沈水性(ちんすいせい)の多年草で原産はアルゼンチンです。大正時代に植物生理学の実験用として持ち込まれた後、1970年代には池沼、河川などで野生化して大繁茂し問題となり注目されるようになった水草です。オオカナダモ(アナカリス)は水質汚濁や低い水温にも強く、冬でも枯れず越冬します。全長は1m以上にも達し、在来種のクロモに比べ葉色が明るく大型です。
繁殖方法
日本では雄株のみが定着し栄養繁殖で増殖している
雄雌株のあるオオカナダモ(アナカリス)ですが、日本には雄株のみが定着しています。雌株は帰化しておらず種子繁殖は確認されていません。栄養繁殖が盛んで、茎の裂片から根を張り増殖しています。
カナダモとの関係
カナダモに似ているが、カナダとは関係なし
その名前にカナダと国名がついていますがオオカナダモ(アナカリス)とカナダの間に関係はありません。カナダをふくむ北米原産でその名の由来にもなったカナダモという藻が存在します。このカナダモに見た目が似ていて、大ぶりな容姿から和名でオオカナダモと名づけられました。
オオカナダモ(アナカリス)の花
花の色
オオカナダモ(アナカリス)は白い小さな花を咲かせる
トチカガミ科に属するオオカナダモ(アナカリス)の花期は5月から10月です。同じ科のトチカガミやミズオオバコに似た白い小さな花を水面から顔をのぞかせるように咲かせます。
似た花との比較
クロモ(在来種)の花との比較
クロモ(在来種)と比べるとオオカナダモ(アナカリス)の方は2~4つの白い雄花を咲かせます。クロモ(在来種)は花は1つです。花は約3mmほどの大きさで、がく片・花弁ともに3コで透明に近くあまり目立ちません。雄花の花粉が水面を漂流して雌花に到達し、受粉する水媒花です。
コカナダモの花との比較
もう一つトチカガミ科の沈水性の多年草のコカナダモもつける白い花は1つとつける花の数が違います。コカナダモも昭和の初めごろに雄株だけが帰化していて、雌株は日本での確認されていませんので種子繁殖はしません。
オオカナダモ(アナカリス)の葉
オオカナダモ(アナカリス)の葉は節に3枚から6枚の葉を周回するようにつけています。葉と葉の間の茎の間隔も短くボリュームのある姿をしていて、葉にねじれやソリはありません。クロモ(在来種)とコカナダモの葉や形状はよく似ています。
クロモ(在来種)とコカナダモとの葉の違い
クロモ(在来種)の葉は節に3枚から6枚輪生させるのは同じですがオオカナダモ(アナカリス)に比べると小ぶりで鋸歯があります。葉も下方へ反っていて葉色は少し濃いめの緑色をしています。外来種のコカナダモは2枚から4枚輪生し、その葉は左右にねじれが生じていて葉と葉の間隔があいてます。細い鋸歯がありますがクロモ(在来種)ほど目立ちません。葉色は暗い緑色をしています。
オオカナダモ(アナカリス)の葉の細胞
中学や高校の理科で細胞の観察に使われている
オオカナダモ(アナカリス)は植物生理学の実験用として日本に持ち込まれたように、中学や高校の理科授業で細胞の観察に用いられています。オオカナダモ(アナカリス)の葉は陸上の植物と比べとても薄くスライドガラスにのせて光学顕微鏡で容易に観察することができるからです。細胞や葉緑体が大きく、原形質流動なども観察することができることが有名です。
オオカナダモ(アナカリス)の分布と繁殖力
分布
北海道を除いて分布している
1940年代には河川での繁茂が確認されており、1970年代には比較的暖かい気候の西日本を中心に大繁茂が問題化するほどに増えています。現在では本州(関東より西側が多い)・四国・九州に分布しています。
繁殖力
オオカナダモ(アナカリス)は在来種と競合しあっている
オオカナダモ(アナカリス)が日本の池沼や河川に定着するようになり、もともとあったクロモ(在来種)を駆逐する勢いで繁茂しています。クロモ(在来種)は水質汚濁にも弱く、種子や殖芽で冬を越すのに対し、オオカナダモ(アナカリス)は環境に左右されず、低い水温でも枯れずに冬を越すため在来種が芽吹く前にすでに繁殖しています。
出典:写真AC