大根の概要
品種
大根は日本ではなじみの深い野菜のひとつです。アブラナ科ダイコン属の1年草で、多くの種類があります。形や大きさもさまざまですが、日本では白くて細長い大根が一般的です。現在の日本で一般的に流通しているダイコンは「青首大根」という種類です。
旬の時期
大根は1年を通してスーパーなどに並んでいますが、本来の旬は秋の終わりから寒い冬にかけてです。この時期には甘みが増し、おいしい大根がいただけます。夏の初めから夏の大根は辛みがでて寒い時期とは違った味わいを楽しめます。
栄養
大根の辛みと香りのもと
大根の根は単色野菜で、水分が多く含まれますが、その他これといった栄養価は含まれません。大根の辛みはラファサチンと呼ばれる成分によるもので、大根をおろすことによって 酵素とグルコラファサチン(ラファサチンの前駆体)が反応し生成されます。グルコラファサチンはダイコン特有の香りの元です。
大根を食べるとさっぱりする理由
こってりした料理に大根をあわせるとさっぱり食べられます。その理由は、大根に含まれるジアスターゼ、リパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼなどの消化酵素です。これらの消化酵素は熱に弱く、加熱すると壊れてしまいます。そのため、大根おろしはこの消化酵素を摂るために適した食べ方です。
葉の栄養
大根の葉は緑黄色野菜に分類されます。ビタミンC、ビタミンE、カリウム、カルシウム、β-カロテンなどを含み、栄養豊富です。葉っぱがついた大根を手に入れることができれば、捨ててしまうのはもったいないですよ。
おいしい大根を選ぶコツ
おいしい大根の見わけ方
大根に葉がついている場合は、まず葉の状態をチェックします。葉がイキイキと美しい放射状にひろがっているものがおいしい大根の目印です。大根を手に持ったときにずっしりと重みを感じるものを選びます。
大根に葉がない場合の見分け方
大根に葉がついていない場合は、美しい白色で太くてまっすぐなものを選びます。ハリとツヤがあることもポイントです。鮮度が落ちてくると表面にしわなどができることがあります。カット野菜の場合は、切り口にス(過成長などで内側に割れがある状態)がないか確認しましょう。
大根の部位による違い
大根の白くて長い根っこは、葉に近い部分から先端までが同じ味や硬さではないことをご存じでしたか?大根は部位によって味や硬さが違うのです。大根の部位による特徴や違いを理解すると大根の使い方が上達しますよ。では早速この違いや特徴をご紹介しましょう。
根本
大根でもっとも甘いところが葉のすぐ下の根元です。水分が多く、硬さはやや硬めです。サラダなどでシャキッとした食感を楽しめるのが魅力です。繊維質が多く硬い部分なのでお漬け物にも向いています。大根おろしは甘いほうが好きという方におすすめの部位です。
中央
大根の真ん中の部分は、柔らかく、甘みと辛みのバランスが良いのが特徴です。中心部のおすすめの使い方は厚切りにしてふろふき大根、おでんなどに最適です。ふっくらとジューシー、クセも少ないので、煮たり焼いたり何にでも使える便利な部分です。
先端
根の先に近くなると辛みや硬さが強くなります。繊維が多い部分なので、薄切りにしてみそ汁の具や漬物などに向いています。マリネやあえ物などもこの部分がおすすめです。辛みの効いた大根おろしが好きな方はこの部分を使いましょう。鍋料理の薬味や天ぷらのつゆには先端部が好んで使われます。
大根の葉
大根は葉がついた状態にしておくと鮮度が落ちやすいので、なかなか目にすることがありませんが、葉つきの大根が手に入ったら、栄養いっぱいのこの部分も捨てずに食べましょう。鉄分、カルシウム、ビタミンAやCなどが豊富です。おひたし、油炒めにするとおいしくいただけます。
大根の部位別の保存方法
丸ごと保存する場合
大根の鮮度を保つ保存方法をご紹介します。まず、葉がついている場合は、付け根から切り落とします。葉をつけたままだと葉から水分が抜けて、根の鮮度が保てないのです。根の部分は葉を切り離した切り口にラップをして、新聞紙や袋にくるみ、冷蔵庫で保存します。
部位別の保存法
大根を切り分けて保存する場合は、根の部分を葉に近いところから根元、中心、先端の3つに切り分けて保存しましょう。濡れたキッチンペーパーなどに包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫で保存します。細かく切った大根を保存する場合は、水にさらして、水気をきり、密封容器に入れます。冷蔵庫で保存し、翌日には食べきってしまいましょう。
冷凍もできます
大根を切った状態で冷凍することもできます。短冊、イチョウなどに切って保存袋に入れて冷凍庫に保存します。保存期間は約1カ月を目安にしましょう。汁物や煮物に冷凍のまま入れられるのでとても便利です。どの部分かを書いておくと目的に応じて使えるので便利です。
大根おろしも冷凍できます
大根おろしにして冷凍もできます。大根をすりおろして、水気をきったら小分けにして冷凍しましょう。しっかり凍ったら冷凍保存袋に移しかえます。食べるときは自然解凍します。こちらも1カ月以内に使いきりましょう。
葉の保存方法
葉は根から切り離したら袋に入れて冷蔵庫で保存します。切り口を濡らしたキッチンペーパーで包むと、より長持ちしますよ。冷凍する場合は、食べやすく切って塩もみします。水気をしぼって、適量を小分けしてラップに包み、冷凍室へ入れます。1カ月程度で使い切りましょう。
おいしい大根おろしの作り方
ご存じの通り、大根おろしとは大根の白い根の部分をおろし金ですりおろした食べ物です。大根特有の香りが魚料理などの臭みをやわらげ、消化酵素が天ぷらなどの油ものをさっぱりとさせます。ここからは、大根おろしをおいしく食べるためのポイントをご紹介します。
大根おろしの辛みのもと
大根をすりおろすことによって、大根の千切りでは感じない辛みが現れます。大根おろしの辛みのもとであるアリルイソチオシアネート(芥子油)は、もともと大根には含まれない物質ですが、すりおろすことによって細胞が壊れ、化学反応によって生まれるのです。このアリルイソチオシアネートは若い大根に多く、葉の近くより先端部に10倍近く含まれます。
大根おろし器の選び方
おいしい大根おろしを作るためには、おろし器選びが大切です。使用するおろし金の刃は鋭いものを使います。刃が尖っていないと味や食感が変わってしまうのです。どのような味や食感にしたいかでおろし器を選びましょう。
おろし金による味や食感の違い
きめ細かでとけるような食感が好みなら細かい刃のもの、ざくざくした粗い食感がほしい場合は粗い刃を選びます。刃は細かいほど辛みはやわらぎます。金属、セラミック、プラスティックなど素材もいろいろあり、らくにおろすなら電動のものもあります。おすすめは昔ながらの銅製のおろし金です。
部位別大根おろしの特徴
根元
大根の最も甘いところなので、根本を使うと甘い大根おろしができます。大根の側面を繊維の向きと並行になるようにおろし金にあて、ゆっくり円を描くようにすりおろします。この方法だと細胞がこわれにくいので辛みがでにくいのです。おろすと栄養分が失われるので、早めに食べきりましょう。
中心
皮をむいて中心部のみを使うといっそう甘い大根おろしを作ることができます。大根の中心部は、どの部分に比べても甘みやうま味のバランスがとれているので、どのような使い方でもおいしくいただける部分です。
先端部
辛い大根おろしを作る場合には先端の部分を使います。皮ごとおろすとさらに辛みが増しますよ。細胞を壊して辛みをだすために繊維を断ち切るように、おろし金に断面を直角にあて上下に力強く動かしましょう。辛さがピークに達するのは、おろした5分後です。
まとめ
大根をおいしく食べるための部位別の特徴をご紹介しました。大根おろしは甘いほうが好みという方は根本の部分を使えばよいということをご理解いただけたでしょうか。大根のどこが辛いかなど、部位別の特徴を理解することで、大根の使い方が上達し、どの部分を使おうかと悩む必要はなくなりますよ。
出典:筆者撮影