源助大根の概要
源助大根は正式名称が「打木源助大根」と呼ばれる在来種で、主に金沢市打木町で栽培されている加賀の伝統野菜です。一般的に出回っている「青首大根」とは見た目も味も違い、そのおいしさに魅了されるかたも少なくありません。
基本情報
科・属名 | アブラナ科ダイコン属 |
園芸部類 | 根菜類 |
形態 | 一年草 |
樹高 | 30cm~50cm |
花の色 | 白・うすむらさき |
産地 | 金沢市安原地区・打木地区 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | やや弱い |
耐陰性 | 普通 |
旬の時期 | 10月下旬~2月上旬 |
栽培難易度 | ★★★☆☆ |
特徴
源助大根の2大特徴は「太くて短い形」と「柔らかさ」です。根径8cm根長が22~25cm、尻詰まりがよく見た目も真っ白で美しい加賀の伝統野菜です。しかし、日持ちが悪く市場にはあまり出回りません。家庭菜園での栽培も少しコツが必要でしょう。味は格別で、甘みが強いのと繊維質が少なく柔らかいため煮物に重宝されています。長時間煮ても煮崩れしないため、おでんや煮物・ふろふき大根におすすめです。
歴史
打木地区で松本氏が作った品種
源助大根は、現在の金沢市打木町周辺で栽培されたのが始まりです。昭和17年、農業の研究に熱心だった故・松本佐一郎氏が2種類の大根を独自に自然交配し完成させました。愛知の井上源助氏が育成した太くて短い生育旺盛な「宮重系青首種」と、在来種で古くから作られていた「練馬系打木大根」の優れた部分を受け継いでいます。昭和33年から本格的に栽培が始まりました。
消滅の危機からの復活
昭和40年代後半には、在来種である源助大根から比較的作りやすく日持ちがするF1種の青首大根に転換し、源助大根は消滅の危機に陥りました。しかし近年、そのおいしさが改めて注目され始め生産数も復活しつつあります。
源助大根の育て方
源助大根の重要な栽培ポイントは「幡種時期」と「収穫時期」です。時期を逃すと十分に成長しなかったり、中に「ス」が入ったりするため注意しましょう。
育て方①土作り
土作りは播種の2週間~1カ月前までに行いましょう。1平米の畝に対してバーク堆肥25Lを1袋、苦土石灰を100~150g入れて耕します。長年作物を育て続けている畝の場合は土の状態に応じて量を調整しましょう。
育て方②水やり
発芽までは土が乾燥しないように朝夕と十分に水やりしましょう。表面が乾きにくいようにもみ殻や枯草を敷き込みます。発芽後の水やりは1日1回で十分です。
育て方③肥料
最低でも播種2週間前に、元肥として米ぬかなどの緩効性肥料を混ぜ込んでおきます。成長途中での追肥は特に必要ありません。
育て方④日々の手入れ
苗が小さいころは除草と防虫が特に大切です。雑草に負けないように頻繁に草とりをしましょう。あぶらむしやモンシロチョウが葉を食べないように、こまめに取り除きます。防虫ネットをするのも効果的です。
育て方⑤種採り
収穫後は形のよいものを選別して種採りを行います。一度掘り起こしてから再度土に対して斜めに挿し込みましょう。暖かくなってくる3月初旬には花芽が出てくるため、花が咲く前に不織布などで周りを囲います。アブラナ科の野菜はほかの野菜と交配しやすいことから、みつばちがほかの花粉を持ってこないように気をつけてください。
育て方⑥病害虫
空洞症
空洞症とは大根の中心部が空洞になる現象です。肥料過多や高温、水不足により根の部分がうまく肥大できないことが原因で発生します。残暑が残る時期に播種するのは避けましょう。
裂根(れっこん)
裂根とは、大根の根に亀裂が入る状態のことです。根が肥大する時期に水をやりすぎると肥大スピードが速くなりすぎるため起こります。
そのほかの病害虫 | |
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黒芯症 | 根内部のみ黒色に変色する。圃場の土壌環境(水分・栄養など)が原因の場合と、細菌によって起こるものがある。 |
キスジノミハムシ | アブラナ科の植物を食害する。圃場の掃除を行うとともに、虫の侵入を防ぐために防虫ネットで覆う。 |
アブラムシ | 葉の裏側に発生することがある。葉の養分を吸い取り光合成を阻害する。粘着テープなどで駆除をする。 |
ハイマダラノメイガ | 幼虫が根の芯に入り食入することで成長を阻害。防虫ネットなどで虫の侵入を防止する。 |
源助大根の栽培日記
源助大根の栽培は、播種・収穫時期に気を付ければそれほど難しくありません。家庭菜園で育てて、一本丸ごと採れたての源助大根を味わいましょう。
栽培スケジュールカレンダー
栽培日記①種まき(9月20日)
栽培日記②発芽(9月29日)
栽培日記③本葉成長(10月10日~)
栽培日記④間引き(10月20日~30日)
栽培日記⑤収穫(11月14日~19日)
栽培日記⑥採種(翌年6月21日)
源助大根の保存はどうすればいいですか?
源助大根は日持ちせず、少し当たるだけでも傷む繊細な大根です。収穫後は葉と根を切り離した上でラップに包んで冷蔵庫で保存します。2~3日で食べきりましょう。
源助大根のおいしいレシピ
レシピ①サラダ
材料(4人分)
- 源助大根:適量
- 柿:1つ
- プチトマト:適量
- 旬の葉物:適量
作り方
- 源助大根は、フードプロセッサーなどで細切りにする
- ほかの野菜をお好きな大きさにカットする
- 器に盛り付けをして完成
レシピ②おでん
材料(4人分)
- 源助大根:1本
- こんにゃく、昆布、ゆで卵など:適量
- 出汁:9カップ
- みりん:1/2カップ
- 醤油:1/4カップ
- 麺つゆ:少々
- 甜菜糖:大2
- 塩:大1
作り方
- 大根・こんにゃく・じゃがいもなどは下ゆでをする
- 出汁と調味料を深鍋に入れてひと煮立ちさせる
- 具材を入れて1時間~1時間半弱火で煮込む
ボタニ子
大根は米のとぎ汁で下ゆでをすると、より繊維が柔らかくなりアクを吸着してくれるよ。
煮込んだあとに冷ましてから再度温めると、より味が染みておいしくなりますよ。
大根葉のふりかけ
大根葉のふりかけは、冷蔵庫で3~4日多く作った場合は冷凍で1カ月ほど保存できます。ご飯のお供にぴったりですよ。
材料(550mLのタッパ一ケース分)
- 源助大根の葉:1本分
- 鰹節:適量
- てんさい糖:大さじ1
- 酒・みりん:各大さじ2
- 醤油:適量
作り方
- 大根葉を丁寧に洗い、沸騰したお湯に入れて茎部分は20秒、葉部分は10秒ゆがく
- 冷水に浸し、絞る
- 葉を細かく刻む
- フライパンに大根葉を入れて、パラパラになるまで炒める
- 砂糖を入れてさらに炒める
- みりん・酒を入れてさらに炒める
- 水分が飛んでパラパラになったら醤油を回し入れる
- 鰹節をかけて完成
旬の源助大根を味わいましょう
源助大根は主に金沢市安原・打木地区で育てられている加賀伝統野菜の一つです。その短い丈とずんぐりむっくりとした形が大きな特徴といえるでしょう。長期保存しにくく傷みやすいため市場には出回りにくい大根ですが、味は格別です。煮物にすると煮崩れせず柔らかく味が染みておいしく食べられます。ぜひ家庭菜園で育てて、採れたての源助大根を味わいましょう。
出典:筆者撮影