寒肥とは?
寒肥(かんごえ)とは花や植木、果樹など春に活動を活発化させる植物に対して冬季に与える肥料のことです。ほとんどの植物は冬が休眠期のため根は養分を吸収せず、この時期に土を深く掘り寒肥料を与えても根を傷める心配がありません。土を掘ることで通気性もよくなり、春先に根が伸びやすくなって養分の吸収もよくなります。
寒肥料の種類
種類①植物性の寒肥
植物性の寒肥には、「腐葉土」や「生ごみで作る肥料」などがあります。腐葉土は枯れ葉や樹木の皮、枝が落ちて重なり、時間をかけて土状に変化した肥料です。生ごみから作られる肥料は、生ごみ処理機やコンポストなどに入れて発酵させて作ります。
種類②動物性の寒肥
動物性の肥料には、有機肥料と呼ばれる「鶏糞」や「牛糞」などがあります。有機肥料を土のなかに入れると微生物の餌となり、微生物が繁殖して増えると作物が成長しやすい土壌になります。微生物によって分解しきれなかった有機物は土の中に残り、土壌の保水性や通気性をよくする役割をはたします。
種類③油かす
油かすは、大豆や菜種を搾ったあとに残るカスを利用した有機肥料です。未発酵タイプと発酵タイプのものがあり、未発酵のものは土の中で発酵してから効果をだすため時間はかかりますが、コストが安く農地など広い場所への施肥が適しています。発酵済みのものは効果がすぐに得られますが、ややコストが高いため庭の植木や花などの植物に使うのがおすすめです。
おすすめの寒肥3選①「腐葉土」
腐葉土には「栄養補給」「水はけ」「保温」効果がある
腐葉土は養分が少なくなった土壌の栄養補給と、養分を作る微生物を増やすための餌の役目、腐葉土の中に残っている葉や枝のかけらが土の中で適度なすき間を作り、水はけをよくする効果などがあります。植木のまわりに撒いて雪や冷たい風を遮断し、土の中を温かく保つ保温効果もあります。
腐葉土の選び方
腐葉土はしっかり発酵したものを選ぶ
発酵済みの腐葉土は臭いが少なく、枯葉や枝などが崩れやすなって触るとふっくらと柔らかさを感じます。黒く変色し腐っている腐葉土を使うと病原菌が増えて病気や根ぐされの原因になるので、臭いや柔らかさなどに注意して選びましょう。
腐葉土の選び方
- 変な臭いがしない
- 葉や枝などの形が崩れやすくなっている
- 黒っぽく腐っていない
おすすめの寒肥3選②「鶏糞」
鶏糞には「成長」「開花」促進効果がある
鶏糞にはチッ素が含まれ、チッ素は植物の形成するたんぱく質や光合成に必要な葉緑素の元となり、植物の成長をうながします。翌年の開花促進に作用するリン酸も豊富に含まれ、茎や枝葉、根など植物全体の成長をよくする効果もあります。
鶏糞の選び方
粒状やペレット状のものが撒きやすく、炭化鶏糞は臭わない
鶏は消化した食物の栄養を吸収する腸が短いため吸収しきれず、糞にはたくさんの栄養が含まれています。乾燥タイプの鶏糞は粒状やペレット状になっていて撒きやすく、高温で焼いた炭化鶏糞には臭いがないので扱いやすくなっています。
鶏糞の選び方
- 粒状・ペレット状のものが撒きやすい
- 炭化鶏糞は臭いが気にならない
おすすめの寒肥3選③「牛糞」
牛糞には「土壌改良」「保水」効果がある
牛糞には植物を丈夫に育てるための三要素「チッ素」「リン酸」「カリ」が含まれ、土壌の保肥力が高まり微生物やミミズが増えて土質がよくなります。牛の糞に藁やおがくずを混ぜて3~6ヵ月ほど発酵させたあとに残った藁やおがくずのカスは、土の中で水はけと適度な保水のバランスをとります。
牛糞の選び方
臭いが少なく崩れやすい完熟済みのものを選ぶ
牛糞は完熟すると臭いが少なくなり(土の臭いより若干臭うくらい)、手に持つとほろほろと崩れるようになったものを選びます。80℃ほどの熱で発酵が進むため、完熟した牛糞は病原菌が少なくなり雑草の種も死滅しています。
牛糞の選び方
- 臭いが少ない
- ほろほろと崩れやすくなっている
- 完熟済みのもの
寒肥以外の施肥「お礼肥」
植物の回復や健康にかかせないお礼肥
寒肥以外にもお礼肥という施肥があり、植物が花を咲かせたあとや果実の収穫後にほどこします。お礼肥を与えることで花や果実に取られて少なくなった養分を補給し、株や葉など植物全体の健康を保つことができます。
おすすめのお礼肥
お礼肥には化成肥料を使う
花後や収穫後に消耗した植物には、効き目が早い即効性の化成肥料を使ってお礼肥を与えます。やり方は、枝先端の真下に直播するか、肥料の臭いやペットの誤食が心配なときは株のまわりを囲むように深さ10cmほどの穴を掘って埋め込み施肥します。
つぎは実践編、バラへの寒肥の与え方を紹介します
バラの寒肥
バラへの寒肥は新しい葉や根を伸ばす成長のスタートにかかせず、寒肥をすると成長促進効果だけでなく花のつきがよくなり病気にも強くなります。寒肥は地植えのバラのみに与え、水やりのさい肥料分が流れでてしまう植木鉢のバラには必要ありません。
バラにおすすめの寒肥
緩効性の牛糞と即効性の配合肥料がおすすめ
バラの寒肥は土壌をよくする牛糞と、チッ素やカリなどの3要素が含まれた配合肥料を与えるのがおすすめです。牛糞はゆっくりと養分が吸収されていく遅効性の肥料で土質もよくする役割をはたし、即効性の配合肥料を合わせることでバランスよく成長していきます。
寒肥料の時期
バラの寒肥料の時期は1月~2月
寒肥料の時期は1月から2月の冬季がよく、1月と2月はバラの休眠期間にあたります。休眠中に与えることでバラへの負担が少なくなり、活動の時期まで寒肥料は土の中で吸収されやすい状態に変化していきます。
寒肥料の与え方
与え方①株の周りに穴を掘る
寒肥料を与える場所は、主の幹からいちばん離れた枝先端の真下(分かりにくいときは根元から25~30cm離れた場所)あたりに、深さ約30cmほどの穴を1ヵ所掘ります。株が大きいバラやツルがよく伸びたバラは、株の周りに3~6ヵ所ほど穴を開けて寒肥を与えます。
与え方②混ぜ合わせた肥料を穴に入れて土を戻す
30cmの穴1つに対し牛糞5Lと一握りの配合肥料を用意し、牛糞と配合肥料をバケツなどでよく混ぜ合わせてから穴に入れて掘り上げた土を戻します。数ヵ所穴がある場合は、穴ひとつひとつに同じ手順で肥料を入れていきます。
庭木の寒肥
庭木への寒肥もバラと同じように、その年の成長を決める大切な作業。おすすめの寒肥料と与える時期、やり方を知って、庭木がすくすく成長するように土質をよくしておきましょう。
庭木におすすめの寒肥料
緩効性の有機肥料がおすすめ
おすすめの寒肥料は鶏糞・牛糞・油かすなどの緩効性肥料で、成長が活発になり始めるころゆっくりと効き目がでてくる有機肥料を使います。ホームセンターやネットショップで、庭木や植木の寒肥用にブレンドされすぐに使える肥料が手軽に購入できます。
寒肥料の時期
庭木への寒肥料の時期は12月~2月
庭木や植木もバラと同じように、休眠期間の12月~2月、根が活動し始める前に寒肥の作業を終了しておきます。庭木への寒肥は芽吹きをうながし、病害虫に対抗する強い幹作りにかかせない肥料です。
寒肥料の与え方
庭木や植木への寒肥の与え方には3種類の方法がある
庭木や植木への寒肥の与え方には「壺肥」「輪肥」「車肥」など3種類の方法があり、それぞれのやり方は効果的に栄養素を吸収させ、根や樹木の幹、周りの植物を守りつつ寒肥をほどこすやり方になっています。与え方はバラと同じく、枝先端の真下あたりに深さ30cmほどの穴を掘って肥料を埋め込みます。
3種類の方法
- 壺肥…庭木や植木が密集した場所に3~6ヵ所穴を掘って施肥する
- 輪肥…1本だけ独立した樹木のまわりを輪状に掘って施肥する
- 車肥…大きい樹木の周りに4~6ヵ所ほど放射状に掘って施肥する
まとめ
寒肥は冬季に与えることで植物への負担を軽減し、春の活動から1年間の成長に大きな影響を与える肥料。おすすめの寒肥はつぎの3つがあります。
- 植物性の寒肥…「腐葉土」「生ごみで作る肥料」
- 動物性の寒肥…「鶏糞」「牛糞」
- 大豆や菜種を搾ったあとに残るカス…「油かす」
つぎはおすすめの寒肥3選を紹介していきます