卵の殻は肥料になるのか?
卵は茶わん蒸しや目玉焼き、オムライスなど、食卓で人気の料理や調味料に使われていて、消費量は1人あたり年間約330個といわれています。日本全体での卵の生産量も年々増加しており、年間で2500~2600トンもの卵が作られています。たくさんの卵が食べられているということは、たくさんの卵の殻がごみとして出ている、ということです。今回はそんな卵の殻を肥料として再利用できるのか、ということをお伝えしていきます。
肥料とは?
肥料は、植物が成長するために必要な栄養成分を補うために使われます。植物が必要とする栄養成分はカルシウムや亜鉛、マグネシウムなど全部で17種類です。この中で窒素、リン酸、カリは植物の成長にとって重要なため「肥料の3要素」と呼ばれています。窒素は、植物の体を作るために必要で、リン酸は開花や結実を促す成分です。カリは植物の根を丈夫にし、寒さや病気への抵抗力を強めてくれます。農業などで畑にまく肥料というのは、「肥料の3要素」の成分を指すことが多いです。
卵の殻に入っている成分
卵の殻の主成分は炭酸カルシウムで、殻全体の約94%になるといわれています。他にも炭酸マグネシウムやリン酸カルシウム、微量の水分や有機物が含まれています。炭酸カルシウムは卵の殻以外にも、貝殻やサンゴの骨格、石灰岩などの主成分です。炭酸カルシウムの用途は幅広く、肥料の他にはチョークや歯磨き粉、研磨剤や入浴剤の原料としても使われています。また、殻の周りについている薄皮や卵白には動物性たんぱく質が含まれています。
成分が土壌改良材として使える
卵の殻に含まれる炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムは、酸性の土壌を中性へと傾ける効果があります。日本は雨がよく降る国です。そのため、土壌の中に含まれているアルカリ成分が雨で流れてしまい、日本の土壌のほとんどは酸性土壌です。酸性が強い土壌は植物の根が傷んだり、根がリン酸を吸収しにくくなったりと植物の成長にとってあまりよくありません。一方で、アルカリ性が強い土壌になると、植物の根がマグネシウムやミネラルを吸収しにくくなってしまい、植物の成長が妨げられてしまいます。卵の殻肥料は、土の酸性度が酸性から中性になるような使い道がよいでしょう。ただし、柑橘類やお茶、ブルーベリーなどは酸性土壌のほうが成長しやすいです。
物理的に土壌改良材として使える
卵の殻はひなが呼吸できるように空気が通りやすい構造になっています。卵の殻をまけば、軽石をまいたときのように土の中の通気性がよくなり、植物の根の成長を手助けすることもできるのです。さらに、卵の殻は有機物になるのですが、有機物は土の中の微生物の餌になるので、微生物の種類が増えて植物が成長しやすい土になることができます。また、卵の殻の尖った部分をナメクジやネキリムシが嫌うので、虫よけという使い道もあるでしょう。
肥料として使う場合の作り方は?
卵の殻には様々な成分が含まれていますが、卵の中身を出してそのまま土にまいても分解されず、肥料にならないのです。ここでは、どうしたら肥料として卵の殻を使うことができるのかを見ていきましょう。
そのままの卵の殻では使いづらい
卵の殻は鳥のひなをふ化させるためにあるので、丈夫なカルシウムでできています。そのため、きちんと粉砕していない卵の殻だと土に混ぜても分解されにくく、土にかえるまでに何十年という時間が必要になります。そのままの状態の卵の殻では、肥料としての使い道がありません。
卵の殻を使った肥料の作り方
まずは、卵の殻を洗わないで乾燥させましょう。湿気が多くない時期なら1~2日ほどで乾燥します。次に、乾燥した卵の殻をミキサーで粉末状になるまで細かくしていきます。作り方はこれだけです。あとは粉末状にした卵の殻を土にまけば肥料として使えるでしょう。
市販の肥料が使いやすい
家庭で出た卵の殻を肥料にしてもよいのですが、ホームセンターで売られているような卵の殻を使った肥料は細かく粉砕、加熱処理されています。そのうえ、窒素やマグネシムなどの栄養成分も配合されているので、家庭で出る卵の殻に比べて分解されやすいです。
効果が出るのに必要な期間は?
卵の殻の肥料は有機肥料になるのですが、有機肥料は土の中の微生物に分解されてから土にかえるので、効果が出るまでに1~2週間程度時間がかかります。酸性の雨がたくさん降るような地域であったり、土の中の微生物が活発だったり土の中の温度が高温だったりすると、早く分解されるでしょう。
まとめ
今回は卵の殻に肥料としての使い道があるのかについてお話しました。卵の殻をただゴミとして出すのはもったいないですが、家庭で出た卵の殻はそのままでは肥料にならないので、プランターや花壇、畑にまくなら、細かく砕いて使うのがよいでしょう。ぜひ、卵の殻の肥料を使ってガーデニングを楽しんでみてください。