トマトにおける剪定の役割
トマト栽培でいう剪定とは、「脇芽取り」「摘芯」「摘果」「摘葉」の4つの手入れのことをいいます。品質のよい実をたくさん収穫するために、伸びすぎた枝や葉をとり除いて、実の数を制限するということです。4つの剪定の意味を知って、栽培に活かしましょう。
①脇芽取り
脇芽取りとは、葉の付け根からでるわき芽を摘みとることいいます。わき芽かきともいい、特に大玉トマトや中玉トマトの栽培では養分を実に集中させ、大きな実を生らせるために欠かせない作業です。わき芽をとらずに放置すると葉や枝が混みあうため、日当たりや風通しが悪くなって病害虫の被害を受けやすくなります。
②摘芯(摘心)
摘芯(てきしん)とは、頂点の枝を折りとる、切る作業のことです。摘心とも書き、ほかには芯止め、ピンチとも表現されます。主枝(しゅし)が支柱の先端に届くころを目安に、成長点である枝の先端をとることで草勢を維持し、養分を必要なところに行き渡らせる効果があります。
➂摘果
摘果(てきか)とは、未熟な実を間引くことをいいます。その房の花房がすべて結実し、実の肥大が進んだ場合、ほかと比べて小さな実、形の悪い実をとってしまいます。また、ひと房に7つ以上実がついたときは小さな実を摘果するのが株に負担をかけないためにもよいでしょう。
④摘葉
摘葉(てきよう)とは、株もとの葉や傷んだ葉を摘みとることです。葉かきともいいます。枯れた葉や傷んだ葉、病気の葉は光合成率が悪いうえ、ほかの健康な葉への日を遮ったり、風通しを悪くしたりするため取り除きます。
トマトの剪定の必要性
品種により剪定の有無が異なる
家庭菜園で栽培されるトマトのほとんどが、剪定を必要とする「非芯どまり系」品種です。「非芯どまり系」品種とは、気候次第で大人の背ほど枝の伸びるトマトのことをいいます。大きくて美味しいトマトを栽培するには養分を葉や実に集中させることが大切で、剪定が必要です。一方、「芯どまり系」品種は加工用中玉トマト、ミニトマトに多い品種です。伸びる枝数が決まっているため、剪定の必要がありません。
品種 | 非芯どまり系品種 | 芯どまり系品種 |
特徴① | 摘心するまで主枝が | のびる第二花房以降の主枝はのびない |
特徴② | 葉3枚 | ごとに実がなる 性 質葉2枚ごとに実がなる性質 |
特徴③ | わき芽をとり1本立ちにする栽培 | 第一花房すぐ下のわき芽をのばす栽培 |
剪定 | 必要 | ほとんど必要ない |
大きさによって剪定の必要度が異なる
大玉トマトと中玉トマトは、わき芽を剪定して主枝1本だけを育てると大きな実を収穫できます。ミニトマトはプランターでも育てやすく、品種によってはわき芽をとらない放任栽培(ソバージュ栽培)が可能です。芯どまり系品種のミニトマトは横張に育つため、広い栽培スペースを確保しましょう。
サイズ | わき芽かき | 摘芯 | 摘果 | 摘葉 |
大玉トマト | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
中玉トマト | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
ミニトマト | ★☆☆☆☆ | ★★☆☆☆ | ★☆☆☆☆ | ★★☆☆☆ |
トマトの剪定スケジュール
プランター栽培、地植え栽培ともにトマトは花が咲いてからおおよそ60日で収穫です。定植時期によっては7月ごろトマトの枝が支柱の先端に届いている株もあります。上記は一般栽培地で行う剪定の参考にしてください。
トマトのわき芽とりの仕方
わき芽とは
葉の付け根の「節」から出てくる小さな芽が脇芽(わき芽)です。わき芽は、葉とは違って小さな苗のような形状です。出てきたわき芽を放置すると、主枝のように大きく育ちます。このわき芽が伸びた枝が側枝(そくし)です。栽培期間中は、摘んでも摘んでも出てきますよ。
わき芽かきの理由
トマトの成長に必要な養分は主枝を通り葉や実へ運ばれますが、その途中にあるわき芽に養分をとられては生育に悪影響です。手で摘みとれるうちにわき芽かきを行うことで、養分を葉や実に集中させられ、傷口も小さく済むため病原菌への感染リスクも減らせます。
接木苗のわき芽かきで注意すること
接木苗を植えたとき、台木から出たわき芽は必ず摘み取りましょう。台木から直接でたわき芽は台芽(だいめ)といって穂木の養分を取ってしまうからです。
わき芽かきのメリット
- 取り込んだ栄養が必要なところに集中するため、品質のよい実が育つ
- わき芽の葉がおおい茂るのを防ぎ、光合成が効率よくなる
- 風通し、見通しがよくなり病害虫を予防できる
わき芽かきの時期
トマトの苗を植えて1週間たつけれど、なかなか大きくならないわ・・・。
植物の生育に欠かせない成長ホルモンは、実はわき芽に多いんです。生育が遅い株のわき芽かきは遅らせるとよいでしょう。
わき芽かきの前に観察すること
定植時期の苗には、小さなわき芽がついています。すぐに摘み取るのではなく、株の生育状態を観察しながら、苗の活着を待って摘み取るのが安心です。また、トマトは肥料が効きすぎると葉ばかりが茂り過繁茂(かはんも)という状態になります。そんなときも、わき芽かきを少し遅らせることで落ち着かせられます。
わき芽かきのやり方
わき芽が小さなうちは、手で摘みとれます。主枝ほどの太さまで成長してしまったものは、清潔なハサミやナイフを使いましょう。ただし、傷跡が大きくなることや、ハサミやナイフを介して病原菌に感染する恐れがあるため、なるべく手で摘める、折りとれるうちに手入れするのがおすすめです。
わき芽かきを失敗してしまったら?
作業途中で「間違えて主枝を折ってしまった!」ということもあるでしょう。そんなときは、残っているわき芽を伸ばし育てられます。
傷口からの病原菌感染には注意が必要です。
わき芽の有効活用
摘んだわき芽って捨てるのがもったいないわ・・・・。
摘んだわき芽をプランターの土に挿しておくと発根して苗を作ることができますよ!
わき芽を挿して苗づくり
トマトのわき芽には成長点があり、挿し木をすることで発根し、苗を作れます。これは栄養繁殖といってもとの株と同じ遺伝子を持つため、数株育てているなら最も元気な株のわき芽を使うのがよいでしょう。
出典:筆者撮影