ウメは雪が残る季節に芽吹き始め、春の訪れとともに開花する、日本人には馴染みの深い植物です。花だけでなく、ほのかな優しい香りや枝ぶりも楽しめるため、ガーデナーにも人気があります。
園芸部類 | 庭木 |
形態 | 落葉性 |
樹高 | 1m〜5m |
花の色 | ピンク、白、紅、複色 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 強い |
耐陰性 | 強い |
栽培難易度 | ★☆☆☆☆ |
ウメは、ピンク色や白色、紅色などの花を咲かせる、中国が原産の落葉性高木です。開花時期にはほのかな甘い香りを楽しめるのが特徴で、庭や公園のシンボルツリーだけでなく、室内で盆栽としても利用されています。収穫した果実は、果実酒や梅ゼリー、梅干しなどさまざまな調理方法で楽しめるのが魅力です。
しだれ梅は、枝が垂れ下がるように伸びていくのが特徴です。紅色の花を咲かせる「紅枝垂(べにしだれ)」や、真っ白な花が下向きに咲く様子を滝に見立てた「白滝枝垂(しらたきしだれ)」など、たくさんの種類があります。
思いのままは、1つの枝に白色やピンク色など、異なる色の花を咲き分ける「輪違い(りんちがい)」という咲き姿が魅力的な品種です。やや小ぶりな品種で、小さく剪定すれば盆栽としても育てられます。
野梅(やばい)は原産地でもある中国に自生しており、原種にもっとも近いといわれています。枝が細く、トゲのような形をしているのが特徴で、ウメの品種の中でも香りが強く、開花時期に香りを楽しみたい人におすすめの品種です。
植え付け時期 | 11月〜3月 |
花が咲く時期 | 2月〜4月 |
剪定する時期 | 11月〜3月 |
実がなる時期 | 4月〜7月 |
収穫時期 | 5月〜7月 |
ウメは地植えでも鉢植えでも育てられます。地植えの場合は、樹高が5mほどまで大きく成長するため、十分なスペースを確保してから植え付けましょう。鉢植えの場合は、鉢が倒れてしまわないように重みのある鉢を使用します。苔玉を使用して、盆栽仕立てにするのもおすすめです。
ウメは室内でも屋外でも育てられます。鉢植えにして観葉植物として利用したり、切り花にしたりと楽しみ方もさまざまです。盆栽にすると、和室のインテリアにもよくあいます。屋外で記念樹やシンボルツリーとしても育てられている植物です。
ウメは、日当たりと風通しのよい場所で管理してください。耐陰性があるため、半日陰でも枯れる心配はありませんが、日光が全く当たらないと花付きが悪くなります。そのため、室内で育てる場合もカーテン越しの窓辺など、優しく太陽の光が差し込むような場所で管理しましょう。
ウメは、畝を作らなくてもそのまま植え付けられます。しかし、多湿な環境が苦手なため、水はけの場所に植え付ける場合は、畝を作ってから植え付けると安心です。10cmほどの高さの畝を作り植え付けていきましょう。あまりにも粘土質な場合は、川砂や腐葉土をたっぷりとすき込んでから畝を作ってください。
ウメは、排水性の高い用土で育てましょう。市販されている庭木用の培養土を使用しても構いません。自分で配合する場合は、赤玉土と腐葉土を混ぜ込んだ用土を使用してください。地植えにする場合は、土をしっかりと耕し、腐葉土や堆肥を混ぜ込んでから植え付けます。
ウメをポット苗や苗木の状態で購入する場合は、葉につやがあり、病害虫被害を受けていない苗を選びましょう。落葉期の場合は、花芽がたくさんついている苗を選ぶのがポイントです。接ぎ木がしてある苗は、接ぎ木部分がしっかりとくっついており、枝が太くて丈夫な苗を購入してください。
ウメを定植する場合は、品種によっても異なりますが、最低でも30cm以上は株間をあけて植え付けてください。しだれ梅など、横に広がっていく性質のある品種は、50cm〜1mほど株間をあけて定植しましょう。
ウメは、有機質をたっぷりと含んだ用土を好みます。ウメを植え付ける前に、堆肥や有機石灰、籾殻などをよく混ぜ込んでおくのが重要です。元肥として、緩効性の化成肥料を混ぜ込んでおいても構いません。
地植えでウメを育てている場合は、完全に根付いてしまえば降雨のみで十分なため、水やりの必要はありません。鉢植えの場合は、土の表面が乾いてから水やりをしてください。苔玉など、盆栽として育てている場合は、霧吹きを使用して水やりや葉水を行うのがおすすめです。
肥料は12月〜1月にかけて、油かすや鶏ふん、米ぬかなど、有機質を含んでいる肥料を「寒肥」として株元に適量施してください。また、開花後には「お礼肥」として緩効性の化成肥料を与えます。肥料の与えすぎは、肥料やけを起こし枯れる原因となるため注意しましょう。
ウメの苗木が完全に根付くまでは、風で倒れないように支柱を立てておくと安心です。まっすぐ上に伸びていく梅の場合は根付いてしまえば支柱を外しても構いません。しだれ梅など、枝が下や横に伸びていく品種の場合は、支柱や麻紐を使用して誘引しましょう。
ウメは、その年に開花した部分から新芽が出てくるのが特徴です。11月〜3月にかけて、新しく伸びた枝や花芽を切ってしまわないように注意しながら、切り戻し剪定をしていきましょう。伸びすぎている枝や、葉や枝が込み入っている部分を剪定して樹形を整えていきます。室内で育てている場合は、こまめに剪定をして、樹形を小さく保ちましょう。
ウメの収穫時期は6月〜7月です。この時期は「梅雨」と呼ばれており、6月〜7月に降る雨によって、ウメの果実が実るといわれています。実り始めの青みがかったウメは、梅酒や梅シロップに加工する場合にぴったりです。7月下旬の赤く熟したウメは、梅干し作りに適しています。用途によって収穫時期が変わるため、自分好みの状態で収穫しましょう。
ウメは落葉性のため、冬が近づくと葉が黄色くなり、やがて茶色く枯れ込んできて落葉します。冬は葉のない状態で休眠期に入るのが特徴です。耐寒性は強いですが、霜や雪に埋もれてしまうと、株が弱って枯れる恐れがあるため、冬前にマルチングをしてから冬越しさせましょう。
ウメの葉が黄色く変色する場合は、水やりの仕方を見直してみましょう。水の与えすぎによる「根腐れ」や、水が足りずに「水切れ」を起こしている可能性があります。とくに小さな鉢で育てている場合は、水やりによるトラブルが起きやすいので注意しましょう。
ウメは、栄養不足の状態が続くと実がならない場合があります。有機質な用土を使用して、寒肥とお礼肥を欠かさないように管理してください。また、日光も大切な栄養源です。実がならない場合は、太陽の光がたっぷりと当たる場所に移動させてみましょう。
ウメの実が大きくならない場合は、実がつきすぎている可能性があります。適度に「摘果」をして、果実の数を減らしていきましょう。着果量を減らすと、果実に十分な栄養分が行きわたり、実が大きく成長します。
うどんこ病は、カビが原因で発生する病気です。感染した部分が白く粉をふいたようになる病気で、光合成が妨げられます。放置すると腐敗が始まり、悪臭を放つようになるため、早めに切り取って処分しましょう。風通しのよい場所で管理し、適度に剪定をすると予防できます。
すす病は、ウメの果実が感染しやすい病気です。ジメジメとした多湿の時期や、雨が長く続いている場合に発生しやすく、感染した部分が灰色の斑点状になります。薬剤を散布しても治せないため、ほかの部分への感染を防ぐためにも早めに切り取って処分しましょう。すす病に感染した果実は食べないように注意してください。
アブラムシは、年間を通して発生しやすい害虫です。集団で寄生し、ウメの成長に必要な栄養分を吸汁します。数が少ない場合は、ガムテープに貼り付けて駆除しますが、大量発生した場合は殺虫剤を散布して駆除してください。
カイガラムシは、名前のとおり貝殻のように硬い甲羅をもつ害虫です。殺虫剤が効きにくいので、見つけたら歯ブラシなどを使って払い落として駆除します。5月〜7月にかけて発生しやすく、多湿な環境を好むため、風通しよい場所で育ててカイガラムシの発生を予防しましょう。
ウメの種まきは11月が適期です。指で用土に穴をあけてから、種をまいていきましょう。寒さにしっかり当てないと発芽しないため、種まき後は屋外で管理するのがポイントです。
地植えの場合は横に大きく成長するため、株間をたっぷりとあけて種をまいていきます。30cm〜50cmほど株間をあけて種まきしていきましょう。鉢植えの場合は、基本的には1つの鉢に対して、種を1つだけまいてください。
11月に種まきをすると、春の暖かさとともに発芽します。発芽するまでは水切れに注意しながら、風通しのよい半日陰で管理してください。極端に乾燥したり、冬に暖かい場所で育てたりすると、うまく発芽しない恐れがあります。
挿し木は「休眠枝挿し」と「緑枝挿し」の2つの方法があります。休眠枝挿しは、ウメの休眠期に当たる1月〜2月頃に枝を切り取り、切り口を水につけた状態で3月まで保存してから、赤玉土などの挿し木用の用土に挿していく方法です。緑枝挿しは5月〜7月に若くて健康な枝を切り取り、挿し穂として使用します。どちらも発根までは日陰で管理してください。
ウメの増やし方の中で、もっとも成功率の高い方法が「接ぎ木」です。接ぎ木は3月に行いましょう。前年に伸びた枝を5cm〜10cmほど切り取り、挿し穂を作ります。鉢植えにした「台木」に切り接ぎして、ビニールテープなどで固定してください。接ぎ木をした部分が乾燥すると枯れてしまうため、鉢ごと袋に入れて密閉しておくのがポイントです。
ウメは、開花後に果実をつけるのが特徴です。7月〜8月にかけて果実を収穫していきましょう。果肉を洗い流し、中から種を採取します。11月までは、新聞紙などに包んで風通しのよい日陰で保管してください。種まきの適期である11月に、種を一度水洗いしてから赤玉土などの用土に種をまいて増やしていきましょう。
出典:写真AC