盆栽とは
年配の趣味というイメージが持たれがちな盆栽は、近年では草花と寄せ植えにした新しいスタイルでも楽しまれています。まずは、盆栽の基本知識を見ていきましょう。
盆栽の定義
盆栽は、樹木や草、苔を鉢に植えて、植物の姿と鉢を合わせて鑑賞する芸術品です。同じ鉢の中でだいたい1年間以上経過したものが盆栽とされます。自然にある植物の姿を、鉢の中で表現しています。
盆栽の木と枝の構成
盆栽の木には特徴的なスタイルがあります。小さく育てながらも鉢の中で存在感を漂わせるために、剪定や植え替え、針金による枝の成形などさまざまな工夫がされてきました。ここでは、盆栽木の特徴を紹介します。
盆栽木の特徴
盆栽では、自然にあるような木に仕立てる技術が、長い時間をかけて培われてきました。それが鑑賞のポイントにもなります。
盆栽木のポイント
- 正面…盆栽には表裏があります。幹の一番上が向いている方向を正面とします。正面は幹の流れがよく見えるよう仕立てていきます。
- 葉…大木感を出すために小さい葉が密集しているものが、葉性がよいとされます。
- 枝ぶり…一番下の枝から上に向かって左右交互に出ていて、上に行くほど短く細い枝を作ります。それによって木のアウトラインが三角形になり大木感が漂います。
- 幹…自然な曲がりと、幹肌が割れていたり縦に筋が入ったりしている古木感がでているものが、格が高いとされます。
- 根元…立ち上がりの根の状態が八方に広がって大地をつかんでいるような力強さがよいとされます。
樹齢
盆栽初心者が幹の太い盆栽を見て「樹齢はどのくらいなのだろう」と思うことが多くあるようです。実は、盆栽では樹齢はそんなに重視されません。むしろ、古木感が大切です。松の割れた幹肌や真柏の剥けかかった樹皮などに価値を見出されます。
鉢
鉢と植物の組み合わせを鑑賞するのも、盆栽の特徴です。常緑の松柏には泥物(茶色のツヤのない鉢)、それ以外ならば釉薬のツヤのある色鉢をあわせるのが一般的です。これは盆栽ならではの美意識ですが、基本は植物の特徴を考え、植物も鉢も美しく見える組み合わせを選んでいきます。
木を小さく育てる
盆栽はどのような樹種でも2〜3年に1度は植え替えと剪定を行い、大きくならないように育てます。植え替え時には、根に付いた土を落とし1/3〜2/3程度切り落とします。また、枝や葉も鉢と木のバランスを見ながら、樹形を整えて切り落とします。土も培養土などは使用せず、樹種に合わせて配合し、肥料は最小限与え、小さな鉢の中で凝縮して育つように管理していきます。
盆栽と鉢植えの違い
盆栽も鉢に植えた植物ですが、鉢植えの木と盆栽の違いはどのようなところなのでしょうか。違いについて見ていきましょう。
植物+鉢の全体を見る
花を咲かせることや実の収穫を目的とする鉢植えの場合は、目的に応じて培養土を使い、剪定や施肥を行い育てます。それに対して盆栽は鉢と植物全体を見るアートです。時には花芽や実ですら剪定し、鉢と植物をつなぐ苔も貼り、総合的な美しさを追求します。
植え方
盆栽は植える植物が育つ最小サイズの鉢を選びます。鉢上部の縁ギリギリまで土を入れ、「ウォータースペース」を取りません。このように植えることによって鉢と一体感が生まれ、木を大きく見せることも可能です。大きめの鉢で土に余裕があると植物は根をどんどん伸ばし大きく成長し、小さく育てられません。
苔
鉢の縁ギリギリまで土を入れたら、苔を貼ります(全体に苔を貼らないものもあります)。苔は水やりによって土が流れ落ちるのを防ぐとともに乾燥も防ぎます。また苔を貼ることにより、古さや自然な景色の中の樹木を表現できます。苔も自然に生えたように貼るには経験が必要です。
次のページでは、盆栽の歴史を見ていきます!