雑草堆肥について
堆肥とは
堆肥とは、動物のフンや植物などの有機物を微生物により完全に分解した資材のことを指します。肥料の一種に分類されますが植物のための栄養分は少なく、土自体をフカフカとした植物が育ちやすい状態に改良するためのものです。堆肥を英語でコンポストということから、堆肥を作る容器もそう呼ばれています。
雑草の役割
雑草にはよい土を作る働きがあります。雑草が手をかけてもいないのに元気に育つのは、その土がその雑草にあっているからです。荒れ地にはまず生命力の強い雑草が育ち、根で土を耕し、枯れるとその土に足りない栄養を補います。そのサイクルが繰り返されるうちに土内の微生物を多様化させ、やがて繊細な植物を育てられる豊かな土壌に変化するのです。
雑草で作る堆肥
雑草で堆肥は作れます。邪魔者扱いされる雑草ですが、実は上記のとおり、よい土作りに欠かせない存在です。そんな雑草を有効活用しない手はありません。刈った草をその場に敷いておくだけでは虫の温床になるので、少し手を加えて堆肥にしましょう。
雑草堆肥の特徴
動物性の堆肥に比べて、植物性の堆肥は即効性がありません。しかし、土内の栄養素や微生物のバランスを崩さないので、病害虫やさまざまな障害が起きにくく安心して使えます。特に雑草はその土地の足りない栄養素を補う性質があるので、堆肥にすると理想的な土作りに活用できるでしょう。
雑草堆肥の作り方
用意するもの
- 刈った雑草(落ち葉、野菜くずも含めても可):全体の6~7割
- 米ぬか(油かすでも可):適量(全体の約3%)
- 水:適量(湿らせる程度)
- 畑の土:全体の3~4割
- ビニールシート(マルチシートや毛布も可)
材料の量はだいたいの目安なので、きちんと計らなくても大丈夫です。また、堆肥の作り方は人それぞれで決まったものはありません。基本的な作り方を紹介しますが、より自分にあった方法を見つけてください。
雑草堆肥の基本的な作り方
①枠や箱などのコンポスト場を設置する
畑の隅などの空いている土の上にそのまま堆肥を作ってもいいのですが、穴を掘るか箱や枠を作って入れたほうが温度が保ちやすいです。
②刈った雑草と米ぬかをミルフィーユのように重ねていく
雑草や落ち葉はできれば15cmほどに切り、濡れているものは軽く乾かしてからコンポストに入れます。木の枝や生ゴミは分解に時間がかかるので一緒に入れないでください。米ぬかや油かすを混ぜるのは発酵を促進させるためです。よくすき込み、ミルフィーユのように上に重ねていきましょう。これを落ち葉主体で作ると腐葉土になります。
③水で湿らせてから上に土をかける
全体が乾燥気味な場合、湿らせる程度に水をかけます。発酵には水が必要ですが、やりすぎると腐ってしまうので気をつけましょう。保温保湿と防虫防臭のためにフタとして土を上からかぶせます。その後は雨ざらしでもかまいません。
④約2週間~1か月ごとに下からかき混ぜて空気を入れ発酵をうながす
堆肥を長く放置したままだと雑菌が増えてしまうので、時折かき混ぜて空気を入れることにより、発酵をうながします。夏は草刈りをするのによい時期なので、雑草を刈ったタイミングで②~④を繰り返しましょう。
⑤秋口にはビニールシートでおおう
秋には気温が下がってくるので、ビニールシートなどでコンポストをおおって保温したほうが発酵が進みます。雑草を刈る必要がなくなっても、月に一度は全体をかき混ぜましょう。
⑥5~6か月後にカビ臭がなくなれば完成
発酵途中はカビ臭がしますが、完成するころには香ばしい土の匂いに変わります。畑や花壇にすき込み、よい土作りに活用しましょう。
少量の雑草堆肥の作り方
もっとコンパクトな雑草堆肥の作り方もあります。肥料や培養土などの丈夫な空の袋に、刈って一日干した雑草を、一掴みの米ぬかとともに混ぜ入れ、ひもで縛るなどして封をします。その袋にドライバーなどで水抜き用の穴を数か所開けてください。その後一年ほど日向で放置しますが、時々ゆするとよいでしょう。開けたときに土らしくなっていれば完成です。
雑草堆肥作りのポイント
雑草堆肥作りで大切なポイントは水分量、通気性、炭素率(C/N)、温度の管理です。難しいようですが、少し気をつけるだけでうまくいきます。
水分量
水分量は堆肥全体の60%くらいが目安です。それより多いと発酵というよりただ腐敗したり、悪臭がしたりします。刈ったばかりの雑草の水分量は95%くらいなので、一日干した後に堆肥に使うとよいでしょう。水分が少なすぎても微生物が活動できないので、最初は少なめにして、様子を見ながら増やしてみましょう。
通気性
堆肥内の空気の通りが悪いと微生物が活動しづらくなり、発酵も進みません。雑草の根についた土が空気の通り道をふさぐ原因になることもあるので、根の土はよく落としてから投入しましょう。
炭素率(C/N比)
炭素率とは炭素(C)と窒素(N)の比率のことです。C/N=20~30つまり、炭素が窒素の20~30倍になるのが堆肥の理想です。炭素率が低いと腐敗しやすく、高いと発酵しにくくなります。突然難しい話になりましたが、刈ったばかりの草は炭素率が最大値30で、枯れると50に上がります。早めにすき込んでしまいましょう。
温度
夏の間は上にシートがなくても発酵が進みますが、秋に気温が下がってくると微生物の動きも鈍くなります。涼しさを感じるようになったら、コンポストの上にビニールシートなどをかけて保温しましょう。
雑草堆肥に失敗はない?!
好気性発酵と嫌気性発酵
堆肥の発酵には酸素のある環境下で働く「好気性菌」の力を借りた「好気発酵」と、酸素のない環境下で働く「嫌気性菌」の力を借りた「嫌気発酵」があります。嫌気発酵が悪いわけではありませんが、放置しすぎると腐敗状態になりやすく管理が難しいので、一般家庭では主に好気発酵によって堆肥を完成させます。
堆肥作りの失敗と対策
カビが生えた、虫がわいた、ベタベタして臭いなど、堆肥作りに失敗したと感じることがあるでしょう。しかし、それらの現象は水分過多や酸素不足から嫌気性発酵をして堆肥化していく過程なので、実は失敗ではないのです。扱いやすい好気性発酵に切り替えるために、乾燥していて炭素率の高い枯草を入れて水分調整したり、かき混ぜて酸素を入れたりして対処します。
カビ・悪臭
カビが生えたり悪臭がしたりするということは、嫌気性菌が活躍しているのでしょう。嫌気発酵は管理が難しいので、好気性発酵に切り替えます。枯草などを加え水分調整して、よくかき混ぜましょう。
虫
虫がわくのもあまりよい気持ちがしません。しかし、作りかけの堆肥に市販の殺虫剤をまくのは、毒成分が長く残るので厳禁です。木酢液を薄めたものや唐辛子を焼酎につけたものなど、自然素材のスプレーで駆除しましょう。ミミズなどはむしろ堆肥化を手伝ってくれるありがたい存在なので、そのままにしておくという方法もあります。
雑草堆肥についてのFAQ
堆肥と肥料は何か違うものですか?
肥料とは油かすや鶏糞など植物に栄養を与えるためのもの全般を指します。堆肥は土自体を植物が育ちやすいように改良するためのもので、栄養分はあまり含みません。堆肥は肥料の一種とされますが、植物にせっせと与えたからといってよく育つわけではありません。
堆肥の中で種が芽吹いて、雑草が余計に増えてしまわないですか?
発酵時の熱で種は死滅するので問題ありませんが、なるべく種をつける前に刈り取って堆肥に使ったほうが安心ですね。
堆肥内の水分60%くらいってどうやって測るのですか?
堆肥の水分を判断するには水分測定器など専門のものがなくても大丈夫です。堆肥を手で硬く握りしめて、手に湿り気を感じるが指の間から水が出てこない程度が60%くらいです。
出典:筆者撮影