バットグアノはどんな肥料?
グアノとは海鳥やコウモリの糞や遺骸が堆積され、長い年月をかけて化石になったものを指し、良質な肥料として利用されています。もともとはグアノといえば多くが海鳥由来でしたが、現在では「バットグアノ」が主流になっています。今回はそのバットグアノについて詳しく説明していきます。
バットグアノはコウモリ由来
「バット」は英語で「bat」と表記され、日本語で「コウモリ」のことを意味します。バットグアノとは堆積・化石化したコウモリの糞を肥料として活用したものになります。主に熱帯の降水量の多い地域のコウモリの棲み処や洞窟などから採掘されます。
バットグアノの成分
リン酸が主成分
バットグアノはリン酸成分が多いのが特徴です。コウモリの糞にはもともと窒素・リン・カリウムが含まれていますが、化石化していく過程で窒素とカリウムは分解され減少していきます。その結果リン酸の割合が増加し、良質なリン酸質グアノになるのです。
主な肥料成分一覧
成分 | 比率 |
窒素(N) | 1.0%未満 |
リン酸(P) | 25~35% |
く溶性リン酸 | 15~20% |
カリ(K) | 1%未満 |
カルシウム(Ca) | 35~50% |
マグネシウム(Mg) | 1.0%前後 |
ケイ素(Si) | 5%前後 |
腐植酸(フミン酸) | 6~10% |
バットグアノの肥料成分は堆積場所や堆積年数によって含有量が変わるため、商品によって差があります。だいたい平均してみると、窒素とカリの含有量がとても少なく、リン酸とカルシウム量が多いのがわかります。腐植酸や微量要素のマグネシウムやケイ素なども含みます。
バットグアノの肥料効果は?
バットグアノは植物にとってどのような効果が得られるのでしょうか。詳しく説明していきます。
茎や根の生育が良くなる
バットグアノの主成分であるリン酸は根の伸長に大きく役立ちます。根がしっかり張るとそれに合わせて地上部の茎の生長も促進されるため、がっしりとした健康な株に育つのです。
花や実付きが良くなる
根がしっかりと張って葉も茂り、株が健康に育つことが良い花をたくさん咲かせることにつながります。実が付く野菜に利用すると、味の良いものがたくさん収穫できるようになります。バットグアノなどのリン酸質肥料が「実肥(みごえ)」とも言われるのはこのためです。
リン酸の吸収効率が良い
リン酸は植物への吸収効率が悪く、土壌中の2割程度しか有効に利用されません。残ったリン酸は土壌中のアルミニウムなどと結合して利用できなくなってしまいます。しかしバットグアノに含まれるフミン酸はリン酸が金属との結合を阻害してくれるため、リン酸の吸収性が高まるのです。
土壌改良効果もある
バットグアノにはカルシウムが多く、土壌が酸性に傾くのを防ぐ効果があります。また腐植質であるフミン酸が多く含まれることで、土壌中の微生物が活性化し石灰のように土を固くせず、土壌改良効果が期待できます。
ゆっくり長く効く
バットグアノのリン酸成分は根が出す酸によって肥料成分が溶け出す「く溶性リン酸」が多くを占めています。そのため、根の生長に合わせてゆっくりと長く肥料効果が続き、肥料焼けも起こしにくい特徴があります。
バットグアノの効果的な使用方法は?
素晴らしい効果が期待できるバットグアノですが、使用方法によってはその効果が半減してしまう場合もあります。正しい使用方法をご紹介します。
元肥として利用する
植物にとってリン酸が必要な時期は花や実が付く時期ではなく、生育の初期に効かせることが重要になります。まだ根が十分に伸びる前に吸収し、体内の細胞内に蓄えることでその後の生育の良し悪しが決まります。そのため元肥として植物に必要な量を与えることが基本の使用方法になります。
窒素肥料とカリ肥料も一緒に与える
バットグアノは窒素分とカリ分が少ないため、元肥として単用するだけでは植物の生育に不十分です。窒素・リン酸・カリ成分がバランスよく含まれている肥料と併用するか、もしくは窒素肥料として油かす、カリ肥料として草木灰などを組み合わせて使用すると良いでしょう。
施肥は植え付け1か月前
有機質の緩効性肥料のため、土壌中の微生物による分解が始まり肥料の効果が出始めるのに時間がかかります。植物を植え付ける1か月前には元肥として土になじませておくことで、生育初期から有効に利用できるようになります。
追肥として利用する
花が次々と長く咲く植物や、トマトやナスなど長く収穫できる野菜などは元肥として施した肥料成分が徐々に少なくなってしまいます。生育に合わせてバットグアノを追肥として株回りに与えます。
土に埋め込むのが効果的
先にも述べた通りバットグアノは「く溶性リン酸」が多いため、追肥する場合に土の上に置くだけではあまり効果的とは言えません。根が伸びていく範囲の土に混ぜ込むことで、肥料が根に触れやすくなりリン酸の吸収が高まります。この時根を傷めないように注意しましょう。
液肥としての利用は難しい
有機肥料では水に溶かして、数か月発酵させた上澄みを液肥として追肥する方法もあります。しかしく溶性リン酸が多いバットグアノをその方法で液肥としても、水に溶けだすリン酸分は少なく本来の効果を最大限に活かすことは難しいと言えます。追肥は液肥だけでという方は、バットグアノを元肥で利用し、窒素・リン酸・カリがバランスよく配合された液体肥料を併用することをオススメします。
使用量の目安
商品による使用量の幅が大きい
メーカーによって商品の成分に差があるため、使用量の幅がとても広くなっています。中には記載がないものもあります。下記の表はあくまでも平均的な使用量になりますので、使用する際には商品のパッケージで必ず確認しましょう。
花壇や菜園(1㎡あたり) | 150g~300g前後 |
65㎝プランター(鉢土12L) | 50g~70g前後 |
5号鉢(鉢土1.2L) | 5g前後 |
バットグアノと相性の良い植物3選
バットグアノは幅広い植物や野菜などに利用できますが、特にオススメしたい植物を3つご紹介します。
①トマト
トマトは生長初期の根張りがその後の味を左右します。トマトは実が着き始めてからはやや乾燥気味に管理することで味がよく甘みが増しますが、根張りが悪ければ乾燥にも耐えられず生長不良につながります。バットグアノを元肥として与えることで、リン酸が根を強くするためしっかりとした株になります。
②芝生
リン酸効果によって根の張りが良くなるため、芝生は伸びすぎず密に育ちます。そのため芝刈りの回数が少なくてすむメリットがあります。またバットグアノに含まれるケイ酸によって、葉が倒れにくくしっかりとした芝生が出来上がります。芝生に限らず、イネ科の牧草や稲にも同じ効果が期待できます。
③洋ラン
濃い肥料を好まない洋ランにとってゆっくり優しく効くバットグアノはとても相性がよく愛好家の方も多く利用しています。特に冬から春に咲くカトレアなどは秋の花芽が分化する時期に与えると効果的です。
ようりんとの違いは?
野菜作りのテキストなどでよく名前を聞く肥料の中に「ようりん」があります。バットグアノと同じリン酸質肥料としてよく利用されますが、どのような違いがあるのかまとめてみました。
ようりんは無機質肥料
別名「熔成リン肥」とも言われます。バットグアノが有機質肥料であるのに対し、ようりんはリン鉱石を基に作られた緩効性の無機質の化学肥料になります。マグネシウムとケイ酸が多く含まれるのが特徴です。
ようりんの肥料成分一覧 | |
成分 | 比率 |
く溶性リン酸 | 約20% |
カルシウム(Ca) | 約50% |
マグネシウム(Mg) | 約15% |
ケイ素(Si) | 約20% |
ようりんは土壌改良に向く
ようりんはカルシウムやマグネシウムを多く含むため、苦土石灰の役割も兼ね備えた肥料として考えることもできます。やせ地や新しく畑を始める場所などの養分補給を兼ねた土壌改良に向いています。アルカリ性なので酸性土壌や火山灰土壌の改善にも役立ちます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?ホームセンターやインターネットでも簡単に手に入れることが出来ます。300gくらいから少量の小袋タイプもあり、価格も良心的なのでまずは試しにそちら利用してみるというのも良いと思います。ぜひこの機会にご自身のガーデンライフに取り入れてみてください。