浄土式庭園とは?庭園の特徴や名所、見どころを詳しくご紹介!

浄土式庭園とは?庭園の特徴や名所、見どころを詳しくご紹介!

浄土式庭園は庭園の種類のひとつですが、どのような庭なのかは広く知られていません。日本各地に数多くの浄土式庭園がありますが、それが浄土式庭園だと気が付かずに訪問している人も多いです。今回は、浄土式庭園の特徴やおすすめスポット、見るべきポイントについて紹介します。

記事の目次

  1. 1.浄土式庭園とは
  2. 2.浄土式庭園の特徴
  3. 3.浄土式庭園の名所①~⑤
  4. 4.浄土式庭園の名所⑥~⑩
  5. 5.浄土式庭園を見に行こう!

浄土式庭園とは

出典:写真AC

浄土式庭園とは、平安時代以降に発達し、主に江戸時代~鎌倉時代にかけて築造された日本庭園のことです。平等院を始め、日本各地には数多くの浄土式庭園が現存します。仏教の教えに基づき造られた庭園で、神が宿るとされている石や水を中心に、小さな島や山、丘などが配置されています。自然な景色を楽しむ「自然風景式庭園」のひとつです。

浄土式庭園の特徴

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日本庭園にはさまざまな形式のものがあり、それぞれ特徴が異なります。浄土式庭園には数多くの魅力が秘められており、挙げるとするならば大きく3つの特徴があります。庭園の美しさや造りを味わうためにも、浄土式庭園の名所を巡る前に、しっかりと特徴や魅力を把握しておきましょう。

特徴①極楽浄土を表現している

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浄土式庭園の大きな特徴は「極楽浄土を表現している」ことです。阿弥陀堂などの仏堂の前に大きな池を造るのが主流で、これによって「大海を越えて浄土に至る」という情景が表現されています。極楽浄土は死後の世界ですが、庭園を訪れることで池の向こう側に極楽浄土を感じられるとされ、現実にある悩みや辛さからひとときの間でも解き放たれるというわけです。

浄土とは

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浄土とは、成仏するために精進するところであり、仏に導かれて行く場所、いわゆる「仏の国」のことです。仏の国には地獄や飢餓といった悪や煩悩がなく、清らかな世界が広がっているとされています。人は死後浄土に行き、悩みや苦しみを持たず穏やかに幸せに過ごせるというのが、浄土思想の考えです。

特徴②四神相応(しじんそうおう)の教えによる配置

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浄土式庭園には、池、山、道、川が設けられており、当時主流であった陰陽五行説「四神相応」の教えに沿ってそれぞれの配置が決められています。四神とは東の青龍、西の白虎、南の朱雀、北の玄武の4つの神のことです。それぞれ流水、大道、くぼ地、丘がふさわしい場所であるとされていることから、庭園の東に川、西に道、南に池、北に山が設置されました。

特徴③回遊式庭園のひとつ

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浄土式庭園は、園内を回遊して観賞するタイプである「回遊式庭園」のひとつです。回遊式庭園は日本庭園の集大成ともいわれており、広い庭園内に施されたさまざまな景色を楽しめる作りが特徴です。浄土式庭園は極楽浄土という想像上の景色を表したものであり、回遊する人々の心に安らぎを与えるといわれています。

浄土式庭園、蓬莱式庭園、縮景式庭園の違いは何ですか?

浄土式庭園、蓬莱式庭園、縮景式庭園の違いは「何を表現しているか」です。浄土式庭園は「極楽浄土」を、蓬莱式庭園は不老不死を願う「蓬莱神仙思想」を表現しており、どちらも想像上の世界観を作り出しているのが特徴です。縮景式庭園は、富士山や天橋立など実在する景色を再現した庭園のことで、世界各地の名所を模倣しています。

ボタニ子

ボタニ子

蓬莱式庭園は不老不死の仙人が住む蓬莱山、長寿の象徴である鶴や亀をモチーフにした島で構成されるのが特徴だよ!

浄土式庭園の名所①~⑤

①平等院

「浄土式庭園といえば平等院」といわれるほど、京都にある平等院の庭園はとても人気があります。平等院の鳳凰堂は国宝や世界遺産として有名ですが、庭園も1922年には国の史跡・名勝に登録されました。阿字池(あじいけ)と呼ばれる池の表面に映し出される朱塗りの鳳凰堂の様子がなんとも美しく、夏にはハスの花が咲き誇り幻想的な空間を味わえます。

ボタニ子

ボタニ子

朝日が昇る頃に鳳凰堂の扉を開くと、池の水面に反射した光が天井の円鏡に当たって阿弥陀如来が美しく照らし出されるんだよ!

ボタ爺

ボタ爺

神秘的じゃのう!

世界遺産 平等院
【公式ページ】1052年、藤原頼通によって京都府宇治市に開かれた寺院で、鳳凰を屋上に戴く鳳凰堂(国宝)には仏師・定朝作の阿弥陀如来像、周りには52体の雲中供養菩薩像が音楽を奏しています。 壁扉画、日本三名鐘の一つといわれる梵鐘とともに国宝を多く所蔵しています。平等院蓮、桜、紅葉、藤棚など四季折々の草花が楽しめる観光名所です。

②毛越寺(もうつうじ)

岩手県の平泉にある毛越寺は世界遺産に登録されており、平安時代に造られた日本庭園は浄土式庭園の代表作として有名です。毛越寺の建物は鎌倉時代に多くを焼失していますが、庭園は平安時代末期に作庭されたものがほぼ当時の状態で残っています。晴れの日には空の様子が映し出されるほど池の水が美しく、出島石組や池中立石など石組のすばらしさもみどころです。

ボタ爺

ボタ爺

毛越寺の庭園の奥には日本で唯一平安時代から残る「遣水の遺構」があるんじゃ。タイミングがあえば曲水の宴の再現も楽しめるぞ!

ボタニ子

ボタニ子

初夏にはアヤメ祭りが開催されるよ!秋には紅葉も楽しめるんだって。毛越寺を訪れるたびに違った雰囲気を味わえるってすてき!

天台宗 別格本山 毛越寺
岩手県平泉、天台宗別格本山毛越寺は、国の特別史跡、特別名勝に二重指定された、平安時代の優美な浄土庭園に境内の四季折々の花が彩る観光地です。

③観自在王院跡(かんじざいおういんあと)

観自在王院跡は毛越寺の隣にある日本庭園で、平安時代に作庭されました。戦国時代にそのほとんどを焼失しましたが、発掘調査や整備が施され、現在は史跡公園として親しまれています。「舞鶴が池」と呼ばれる曲線的な美しさを持つ大きな池は圧巻です。池の南には中の島、毛越寺よりの方向には遣水や滝石組があり、池を中心に見どころがつまっています。

ボタニ子

ボタニ子

春に訪れると、池のほとりに咲くしだれ桜を楽しめるよ!秋の紅葉もとってもきれいなの!

観自在王院跡 │ 平泉の文化遺産 構成資産 │ 平泉の文化遺産
平泉の文化遺産

④無量光院跡(むりょうこういんあと)

平泉駅から中尊寺方面に向かう途中にある無量光院跡は、平等院を模して建てられた寺院の遺跡です。かつてはなだらかな金鶏山を西に阿弥陀堂がありましたが、火災などで消滅しやがて荒廃していきます。しかし遺跡は良好な形で残り、庭園は整備・復元されました。山に夕日が沈む様子が西方極楽浄土を体現していることから「浄土庭園の最高傑作」ともいわれています。

ボタ爺

ボタ爺

無量光院跡の阿弥陀堂は、かつては平等院鳳凰堂を越えたといわれたほど立派だったんじゃよ!

ボタニ子

ボタニ子

池のほとりにあったかつての本堂は焼失したままだけど、復元整備する予定もあるみたい。夕暮れもステキだよ!

無量光院跡 │ 平泉の文化遺産 構成資産 │ 平泉の文化遺産
平泉の文化遺産

⑤白水阿弥陀堂(しらみずあみだどう)

白水阿弥陀堂は平安時代に福島県に建立された歴史ある阿弥陀堂で、別名は「願成寺阿弥陀堂(がんしょうじあみだどう)」です。国宝にも指定されている阿弥陀堂がある庭園は、毛越寺と並んで東日本最大級の広さを誇ります。池の中心部にある朱塗りの反橋が美しいだけでなく、「州浜(すはま)」とい技法を用いるなど、より池を美しくみせる工夫が施されています。

ボタニ子

ボタニ子

州浜という技法は、池底に大粒の石を、池のほとりや岬には細かな石を配置することで、力強いイメージを作り上げることだよ!

ボタ爺

ボタ爺

梅や桜、アヤメやハスなど、自然もとっても豊富なんじゃ。秋に開催される紅葉のライトアップは見ごたえがあるぞ!

国宝 白水阿弥陀堂
白水阿弥陀堂は、永暦元年(1160年)、藤原清衡の娘・徳姫が建立した平安時代末期の阿弥陀堂で、福島県唯一の国宝建造物に指定されています。
ボタニ子

ボタニ子

次も引き続き、浄土式庭園の名所を紹介していくよ!

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浄土式庭園の名所⑥~⑩

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