秋を鮮やかに彩る彼岸花
彼岸花(ヒガンバナ)は中国が原産の球根植物です。堤防沿いやあぜ道に多く、季節が夏から秋に移り変わるころに、花が一斉に咲きます。彼岸花は毒を含む植物ですが、球根に多くのでんぷん質が含まれていることから、飢饉時の非常食や漢方薬として用いられてきました。
科目 | ヒガンバナ科ヒガンバナ属 |
原産国 | 中国 |
園芸分類 | 球根 |
草丈 | 約30~60cm |
開花時期 | 7月下旬~10月下旬 |
学名 | Lycoris radiata |
英名 | Red spider lily |
別名 | 曼殊沙華、葬式花、地獄花など |
特性 | 毒があるが、生薬として用いられる |
名前の由来
彼岸花は秋の彼岸の頃に咲くことから、この名前がつけられました。彼岸花の別名「曼殊沙華(マンジュシャゲ)」は、赤い花を意味するサンスクリット語が語源です。また、お釈迦様が法華経を唱えた際に天から降ってきた花といわれており、仏教と深いつながりがあるといえます。
彼岸花の特徴
花や葉の特徴
彼岸花はまっすぐに伸びた茎と、放射状に咲く赤い花びらが特徴的です。この放射状の花がくもの巣のように見えることから、英語圏では「スパイダーリリー」と呼ばれるようになりました。また、彼岸花は咲くときに葉はありません。彼岸花は、花が枯れてから葉が生える珍しい植物です。
ボタニ子
球根の特徴
彼岸花の球根はユリの根や玉ねぎによく似ています。これは鱗茎(りんけい)と呼ばれる形状で、厚みのある葉が幾重にも重なっているのが特徴的です。彼岸花の球根には毒がありますが、栽培を目的に楽しむ分には影響ありません。
彼岸花には毒がある
彼岸花は、茎や球根にアルカロイドという有毒成分を含んでいます。彼岸花が田んぼの近くや墓地に多いのは、有毒成分を利用して、モグラやイノシシなどから農作物や埋葬した遺体を守るためだったといわれています。とくに球根は水につけると毒性が抜けると言い伝えられていますが、真意は定かではないため食べてはいけません。
アルカロイドとは?
アルカロイドは、万が一口にすると腹痛や吐き気、中枢神経のまひが起こります。最悪の場合、死に至ることもある有毒成分です。正しい知識を持って取り扱ってください。
ボタ爺
毒があり、触れると死んでしまうことから、「地獄花」「死人花」とも呼ばれていたぞ!
彼岸花は仏壇に供えてもよい?
彼岸花は仏教と深いつながりがある植物ですが、仏壇に供えるのはNGです。彼岸花には毒があり、毒を含む植物を仏壇に供えることは、仏様に毒を盛るのと同じ行為といえます。故人が生前好んでいた場合は仏壇に供えても構いませんが、一般的には推奨されることではありません。
彼岸花の開花時期について
開花時期は全国ほぼ同じ
彼岸花は青森県~沖縄県まで広く分布しており、野生下で花が咲く時期はどの地域も9月中旬ごろです。また、園芸用品種の中には7月ごろから咲くものもあります。彼岸花を早く彼岸花を楽しみたい場合は、早く咲くタイプの品種を選んで栽培するのもよいでしょう。
北海道に野生種はいない
北海道には、野生種の彼岸花は寒さに耐えられないため存在しません。北海道で彼岸花を楽しむなら、園芸用に品種改良されたものを鉢植えで室内管理するのがおすすめです。
花と葉が見られる時期は異なる
彼岸花は外気温がおよそ20℃になったら、花茎だけを伸ばします。春は蕾を作るために球根に栄養を蓄える季節で、暖かくても花は咲きません。花茎が伸びて1週間程度経過したのち、鮮やかな花が咲きます。花が咲き終わったあとに葉が出てくるため、花と葉を両方楽しむのは難しいといえます。
葉が見られるのは秋~春
彼岸花の葉が見られるのは、10月下旬頃~3月下旬頃です。4月を過ぎると葉は枯れて、休眠期に入ります。彼岸花の葉は細長く、一見するとニラやアサツキに似ています。とくに春は山菜取りを楽しむ季節にもなるため、間違って採取しないように注意してください。
開花時期に彼岸花が見られる名所4選【東日本】
東日本の名所①最勝院(青森県)
最勝院は青森県弘前市にある寺院です。赤い五重塔が目印で、国の重要文化財に指定されています。もともと彼岸花はありませんでしたが、住職が群馬県の親せきから球根を譲ってもらったことがきっかけで境内で彼岸花が見られるようになりました。青森県は、彼岸花が咲く日本最北端です。
施設情報
住所 | 青森県弘前市銅屋町 |
開花時期 | 9月中旬~10月上旬 |
公式サイト | 金剛山 最勝院 |
東日本の名所②羽黒山公園(宮城県)
羽黒山公園は宮城県大崎市にあり、この地域の観光名所でもあります。園内の丘一面に彼岸花が群生していて、赤いじゅうたんのような光景ですよ。彼岸花の開花中は「彼岸花の里まつり」が開かれ、和太鼓の演奏などが楽しめます。赤い彼岸花のほかに白い彼岸花もあるため、ぜひ探してみてくださいね。
施設情報
住所 | 宮城県大崎市古川小野字羽黒72番1 |
開花時期 | 9月中旬~10月上旬 |
公式サイト | 宮城県大崎市公式ウェブサイト |
東日本の名所③常楽寺(栃木県)
常楽寺は栃木県鹿沼市にある、真言宗豊山派の寺院です。録事尊(ろくじそん)という呼び名でも親しまれていて、雷様の病気を治した寺として伝えられています。境内の参道沿いに多くの彼岸花が咲き、さらに白いソバの花も一緒に観賞できますよ。
施設情報
住所 | 栃木県鹿沼市下粕尾949 |
開花時期 | 9月中旬~10月上旬 |
公式サイト | 鹿沼観光だより・常楽寺(録事尊) |
東日本の名所④葛西臨海公園(東京)
葛西臨海公園は、東京都江戸川区の海沿いにあります。園内では9月中旬ごろから彼岸花が咲きはじめ、キバナコスモスやピラカンサの実も一緒に楽しめます。子ども向けの遊具やバーベキュー広場、宿泊施設などもあり、季節を問わずファミリーやカップルに大人気の名所です。
施設情報
住所 | 江戸川区臨海町6丁目 |
開花時期 | 9月中旬~10月上旬 |
公式サイト | 葛西臨海公園 |
彼岸花の別名に「葉見ず花見ず」があるの。花と葉を同時に観賞できない彼岸花の特性からつけられているよ!