トゲが魅力のサボテン
サボテンは、ナデシコ目サボテン科の植物の総称です。多肉植物の一種ですが2500種もあるため、多肉植物とは区別されています。サボテンの故郷は南北アメリカの乾燥した砂漠地帯です。しかし、暑さを好む種類ばかりではなく、低温に強い種類もあります。サボテンは千差万別の形や美しい花も魅力ですが、トゲに魅かれるという人も少なくないかもしれません。
ボタニ子
サボテンって、普通の植物のような葉っぱはないし、不思議な形よね。多肉植物との違いもよくわからないわ。
ボタ爺
サボテンがなぜこんな形に変化してきたのか?という謎に迫る前に、サボテンの身体のつくりをみておこう。
サボテンのつくり
サボテンの特徴はトゲだと思いがちですが、トゲのないサボテンもあります。また、トゲのある植物はサボテンだけではありません。サボテン独特なのは刺座(しざ)またはアレオーレ(areole)と呼ばれる器官です。刺座(アレオーレ)はトゲの根元にあり、フェルトのような綿毛で覆われています。また、サボテンの成長点(植物の身体を盛んに成長させる部分)は、てっぺんの中心部です。
ボタニ子
多肉植物とサボテンとは、刺座があるかないかで判別できるのね。
柱サボテンや球サボテンの一部では「稜(陵:りょう)」と呼ばれるひだが縦に並んでいます(画像は断面)。稜は茎に日陰をつくるため、陽射しの強い環境では有利です。また、ひだは茎の水分量に応じて伸び縮みし、水分が多いときはふくらみ、乾燥した時期はしぼみます。稜の上に並ぶ刺座のわきには「芽点(がてん)」があり、芽や花が出る場所です。
ボタ爺
サボテンが柱型から球型に変化していったのは、表面積が最も小さく、体積が最も大きくなる形が球だからじゃ。
イボ型サボテンの場合
球型サボテンが進化し、稜がイボ状に変化したものがイボ型サボテンです。このイボのような突起もひだと同様に、体内の水分量によって膨らんだりしぼんだりします。このタイプのサボテンでは、芽点がイボの間のくぼみにあるのが特徴です。芽点は花を咲かせて子孫を残す大切な部分で、ダメージから守りやすい場所に移っていったと考えられています。
ボタニ子
サボテンの根はどうなっているの?
サボテンの根
サボテンにも普通の植物と同様に根があります。根の形は種類によりさまざまです。主根が深く伸びるタイプ、ひげ根がたくさん出るタイプ、主根が芋のように肥大するタイプなどがあります。サボテンの根は、荒れ地で身体を支え、雨が降ったときには水をできるだけ多く吸い上げるために大切なものです。
ボタニ子
サボテンには葉っぱがなくてトゲがあるのはなぜかしら?変化には必ず理由があるはずよね?
ボタ爺
サボテンのトゲには、生き残りをかけた重大な意味と役割が隠されておるのじゃ。
サボテンにはなぜトゲがある?
「サボテンになぜトゲがあるのか?」という問いの答えとして、4つの理由があるといわれています。それぞれの理由について、トゲが果たしている意味と役割を見ていきましょう。
理由・役割①身を守るため
サボテンのトゲは、身を守る役割を果たしているといわれています。サボテンは茎や実にたくさんの水分を蓄えており、水の少ない荒れ地に生きる生き物にとってごちそうです。サボテンはトゲで武装し、ほかの生き物に食いつくされないようにしています。また、貯水槽の役割を果たす大切な茎を、吹き荒れる砂嵐から守る意味でも大切な器官です。
理由・役割②温度調節をするため
トゲは、温度調節の意味でも大切な役割を果たしています。サボテンの生息域の気候は、昼間は強い日差しで焼けるような高温になり、夜には凍えるほど冷え込むのが特徴です。トゲは動物の毛のような意味があり、茎の周りに空気の層を作って急激な温度変化から身を守ります。また、陽射しを遮り紫外線を防ぐという点では、すだれのようだともいえるでしょう。
理由・役割③水分を吸収するため
サボテンのトゲは、水分確保の面でも重要な意味を持っています。サボテンの生息地は昼夜の温度差が大きく、夜間に霧や朝露ができやすい環境です。サボテンのトゲは空気中の水分を凝結させやすくします。こうして集めた水分をトゲの根元から吸収するのです。サボテンはトゲがあるおかげで、わずかな水分を効率よく集めて取り込めます。
理由・役割④子孫を増やすため
一部のサボテンのトゲは、子孫繁栄の意味でも大切な役割を果たします。その代表として挙げられるのが、「ジャンピングカクタス」とも呼ばれる「チョヤ」というサボテンです。このサボテンの近くを動物が通ると、植物体の一部が鋭いトゲでくっつきます。動物に遠くまで運んでもらい、落ちた場所で栄養繁殖を行います。
ボタニ子
なぜサボテンにトゲがあるのか、その理由はひとつではないのね。ところで、サボテンのトゲって、もともとは何だったのかしら?
サボテンのトゲはもともとは何?
モクキリンの花、咲いてます!今季最後かもしれません。温室に観に来て下さい!!中南米温室入り口の真上で待ってます。 #東山動植物園 #植物園 #温室 #モクキリン #サボテン #木の葉サボテン pic.twitter.com/c0PGGQ1wE7
— 名古屋市東山動植物園 (@higashiyamapark) November 1, 2020
サボテンのトゲは、葉っぱや茎が変化したものです。最も原始的なサボテンといわれる木の葉サボテンには、トゲも刺座もありますが、普通の植物のような葉っぱがあります。葉っぱにある気孔は昼間開いて、光合成に使う二酸化炭素を取り入れる大切な器官です。しかし昼間気孔を開くと、体内の水分を多量に失うことにもなります。そこでサボテンは葉っぱをトゲに変化させ、光合成の仕方も変えました。
ボタ爺
サボテンの祖先はもともとはジャングルのような場所に生育していたが、砂漠のような荒れ地に進出していったといわれておるよ。
サボテンは光合成を茎で行います。サボテンの表面にある気孔の数は、普通の植物の1/20~1/50程度です。この気孔は夜だけ開いて二酸化炭素を取り込みます。二酸化炭素はリンゴ酸の形で蓄えられ、日中に二酸化炭素に戻して光合成を行うのです(CAM型光合成)。サボテンは水分の損失を最大限に抑えるために、葉っぱをトゲに変化させ、厳しい環境で生き残ってきました。
ボタニ子
ふうん、サボテンは乾燥に耐えるために葉っぱを捨て、光合成の仕組みまで変化させたのね。進化ってすごいわ!
ボタ爺
サボテンは種類によって形も花も個性的じゃが、ここではトゲに注目してみてみよう。
出典:写真AC