はじめに
みなさんはじゃがいもの花を見たことはありますか?じゃがいもはナス科の野菜で可食部は茎が肥大化した塊茎ですが、同じナス科のトマトやナスのようにちゃんと花も咲かせます。じゃがいもを栽培していないと見る機会がありませんが、意外にも可愛らしい素敵な花なんです。この記事では、じゃがいもの花と果実を摘むか摘まないかの管理方法や食べることができるのかについて解説していきます。
じゃがいもの花の特徴
基本情報
分類 | ナス科 |
形態 | 多年草 |
原産 | 南アメリカ(ペルー、チチカカ湖周辺) |
草丈 | 50~70cm |
開花時期 | 5月下旬~6月 |
誕生花 | 5月17日 |
花言葉 | 慈善、慈愛、情け深い、恩恵 |
開花時期
じゃがいもの開花時期は5月下旬〜6月ごろになります。種芋を2月下旬〜3月上旬に植えつけた場合、4月中旬ごろになると芽がでてきて、5月までには伸びた茎の先端に蕾(つぼみ)をつけます。蕾は2週間もたてば開花して見ごろになり、葉や茎の香りとともに、淡い香りを漂わせています。北海道では開花時期が6月下旬からとなっており、一面が白や紫のカラフルな花で覆われています。
収穫の目安
じゃがいもの花は収穫の目安になります。じゃがいもの花が開花しているころは、まだまだ塊茎は生育段階ですが、花も落ちて茎葉がしおれ出すとちょうどよい大きさになっています。茎葉が黄色くなって、晴れが2~3日続いた日に、じゃがいもを傷つけないようにやさしく掘って収穫してください。
他の野菜との比較
じゃがいもの花は大きな花弁が開き、中央に黄色の雄しべが雌しべを包むように並んでいます。じゃがいもの花は一つの花茎に多くの花をつけることで、ほかのナス科の野菜と区別できます。
ナスの花
ナス科のナスの花はじゃがいもの花とよく似た形をしています。しかし、ナスの花は脇芽のように茎葉の途中にひとつずつしか花をつけないことで区別できます。何よりもナスのトレードマークである紫色のへたが、花の花托部分になっているため間違うことはないでしょう。
トマトの花
トマトは伸ばした花茎の先に複数の花をつけます。ただし、色が黄色とじゃがいもにはない色のため、区別できます。また、実を付けるために花びらが下を向いていることが多いのも特徴です。トマトであればひとつの実に栄養が集中するように摘果しましょう。
ピーマンの花
同じくナス科のピーマンですが、雰囲気はじゃがいもの花に似ています。花びらが一つずつはっきりと開いているため、じゃがいもの花より綺麗に見えますね。じゃがいもの花との違いは、雄しべと雌しべの色がじゃがいもが黄色でピーマンが緑色になっている点です。この雄しべと雌しべの部分はやがて実になり、私たちがよく知るピーマンになります。
ボタニ子
次のページでは、じゃがいもの花の管理方法や食用にできるかについて解説するよ。
じゃがいもの花の管理
じゃがいもの花を摘むか摘まないかという点については、摘まないやり方が主流になっています。トマトやピーマンのように実を付ける野菜については、無駄に花が咲くとエネルギーを消耗してしまいますが、じゃがいもは実を収穫する野菜ではないため、収量への影響は小さいといえます。大面積のじゃがいも栽培となると摘むだけでも一苦労ですし、摘んだ後に雨が降ると病気の原因になります。
花がつかない理由
じゃがいも栽培において、収穫の目印になる花ですが、花がつかない場合もあります。こういった場合は次のことが考えられます。
理由①花がつきにくい品種
じゃがいもには花がつきにくい品種があります。ゴツゴツしてほっこりした食感のじゃがいもの王様『男爵イモ』や新じゃがとして春先に収穫できる『にしゆたか』は花をつけなかったり、蕾で落下したりと開花することがほとんどありません。花をたくさんつける品種としては、じゃがいも界の女王として有名な『メークイン』があげられます。
理由②肥料の過不足
花がつきやすい品種でも花がつかない場合があります。その場合は、窒素肥料の与えすぎや不足が考えられます。じゃがいもは元々窒素肥料をあまり必要としない野菜ですが、極端に少ないと花が育ちません。また、窒素肥料が多い状態ですと、茎や葉ばかりが茂ってしまい花を咲かせません。極度の乾燥状態になっても花がつかないことがありますので、天候やじゃがいもの生育状況をみながら、水やりや追肥を行い標準の状態にもっていくことが栽培管理では重要です。
じゃがいもの花や果実の食用について
花の食用について
じゃがいもの花は食べることができるの?
答えはNoになります。じゃがいもを含むナス科の植物には毒素を含むものが多く、食べられる部位は限られた部位になります。じゃがいもの日光を浴びた部分は、葉緑素とともにアルカロイド配糖体というソラニンなどを含んだ毒素成分が含まれています。このアルカロイド配糖体を口に含むと、おう吐や下痢、めまいなどの症状にみまわれるため、日光を浴びて咲いているじゃがいもの花は食用には向きません。さらに、加熱処理をしても毒素が分解されることはないため、どうやっても食べることはできないのです。
果実の食用について
花が咲いたあとに、じゃがいもにも果実がつく場合があります。通常、じゃがいもは種芋による栄養繁殖を行うため、種子による繁殖はあまり必要ありません。そのため、品種によっては花を咲かせても実がつかない品種があります。「キタアカリ」「ホッカイコガネ」「こがね丸」などの品種であれば結実しやすいです。
じゃがいもの果実は食べられるの?
通常はじゃがいもの果実も食べられません。トマトも実が緑色をしているものは毒素成分をふくんでおり、食べることができません。これと同様で、実が緑色のじゃがいもの果実は食べられません。ただ、実が熟すとともにアルカロイド成分は減少していくようで、黄色になるころには影響が小さくなります。果実に糖分が集まっているため、ほのかに甘いフルーティーな味がします。
いろいろなじゃがいもの花
①メークイン
煮崩れしにくいじゃがいもとして有名なメークインは、紫色の花びらの先端が白くなっており、マーブル様の可愛らしい花をつけます。花の数も多く、枝も長くにぎやかに見えるため、家の花瓶にさしても見栄えします。
②キタアカリ
ビタミンCが多く食味がよいことで知られているキタアカリは、すこし丸みを帯びた赤紫色の花をつけます。花粉の量が多いため結実する花も多く、果実を見やすい品種です。
③シンシア
シンシアはフランスで改良された品種で、白く大きな美しい花をつけます。茎が太くて長く、先端に少ししか花をつけないため、優雅なたたずまいが印象的な花です。
④レッドムーン
皮の色が赤紫色のレッドムーンは、花びらの色も同様の濃い赤紫色です。花をつける数が多い品種のため、開花時期にじゃがいも畑に行くと、一面に紫色の花が咲きほこる素敵な風景を見ることができます。
まとめ
じゃがいもの花についてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。土臭いどっしりとした印象のあるじゃがいもの可愛らしい一面をみることができましたね。花の色と茎葉の形を覚えておくと品種をある程度特定できるそうです。初夏の北海道に行くと、たくさんのじゃがいも畑を見られますので、どんなじゃがいもなのかなと、想像しながら見回るのも楽しそうですね。
出典:写真AC