じゃがいもの栽培は簡単?
じゃがいも(馬鈴薯)は、カレー、おでん、肉じゃが、フライドポテト、ポテトサラダなど、子どもも大人も大好きな料理に大活躍します。でんぷん質を多く含み、育て方も簡単で、世界各国で食用とされている作物です。普段食べている芋の部分は地下茎が肥大化したもので、根が肥大化してできるさつまいもとは異なります。
じゃがいもはナス科の多年草
じゃがいも(馬鈴薯)はナス科ナス属の多年草で、南アメリカのアンデス山脈原産です。自然界では冬になると地上部分は枯れますが、地下茎(芋)が越冬して翌年に芽を出します。国産じゃがいもの生産量第1位は北海道、第2位は長崎、第3位は鹿児島です。じゃがいもは日本全土で比較的簡単に育てられます。畑がなくてもプランターでも育てることが可能です。
じゃがいもは種から栽培する?
野菜や植物の育て方といえば、種まきや苗の植え付けから始まることが多いです。じゃがいもはどうでしょうか。じゃがいもにも花が咲きますし、画像のように実をつけることもあります。果実はミニトマトにそっくりで赤く熟しますが、完熟することはまれで、途中で落果しやすいです。
通常は種まきから栽培しない
果実の中には種があり、種まきすれば発芽もします。しかし種まきからでは大きな株には成長せず、小さいじゃがいもしかできません。株が大きく育って、普通の大きさのじゃがいもが採れるようになるまでには、3年もかかります。種まきでじゃがいもを作るのは、品種改良で新しい馬鈴薯を生み出すために交配をするときだけです。
じゃがいもは種芋から育てる
一般的にじゃがいもは、種芋を植え付けて栽培します。種芋とは、種として使い、土に植え付けて発芽させる芋のことです。じゃがいも(馬鈴薯)は国の指定種苗として、検疫に合格しないと種苗として移動できません。種芋は栽培中から種芋として扱われ、食用とは区別されます。
種芋は厳しい検査を通過した特別な芋
3種類の害虫(ジャガイモガ、ジャガイモシストセンチュウ、ジャガイモシロシストセンチュウ)と7種類の病気(馬鈴しょウイルス、輪腐病菌、青枯病菌、そうか病菌、粉状そうか病菌、黒あざ病菌、疫病菌)について検査が行われます。これに合格し「種馬鈴しょ合格証票」がつけられた種芋から、じゃがいもは育てられるのです。
じゃがいもの栽培①定植場所の準備
じゃがいも(馬鈴薯)を家庭で栽培してみたい方もいるかもしれません。じゃがいもの育て方では、準備、種芋の植え時と植え付け、芽かきと土寄せ、収穫など、各栽培過程で知っておくべきポイントがあります。まずは初心者にも取り組みやすい春植えでの育て方について解説していきましょう。
種芋の植え時
じゃがいも(馬鈴薯)の育成適温は15~24℃です。暑さに弱く、30℃以上では芋ができません。じゃがいもの植え時は春と秋の2回がありますが、秋植えよりも春植えのほうが初心者にもチャレンジしやすいです。春植えの植え時は2月上旬~4月上旬ですが、地域や品種、その年の気候によって時期がずれることがあります。
梅雨前に収穫できるよう逆算する
じゃがいもは高温多湿が苦手であり、収穫時期に土が乾いていないと貯蔵性が悪くなるため、梅雨前に収穫するのが理想的です。植え付けから収穫までは約100日といわれています。梅雨入りが6月上旬~中旬とすると、3月上旬には植え付けを完了しなければなりません。植え付け前の芽出し作業に20~30日かかるため、2月上旬~中旬には栽培の準備を始めましょう。
植え付け場所の準備
定植場所を選ぶときに覚えておきたいことは、じゃがいもは連作障害を起こしやすいということです。連作を行うと生育が妨げられたり、そうか病などの病気が出やすくなったりします。一度じゃがいもやナス科の作物を植えた場所や土を使う場合には、少なくとも2~3年は間をあけましょう。近くにナス科の野菜がある場所も避けます。
土壌のpHは5~6
土作りは植え時の2週間~1カ月前に行って寝かしておくのが理想です。じゃがいも(馬鈴薯)に最適な土壌は、pH5~6程度の弱酸性の土です。日本の土壌のpHは弱酸性のことが多いため、土のpHをチェックし、石灰は控えめに混ぜてpH調整します。石灰を入れすぎて土壌のpHがアルカリ性に傾くと、そうか病が発生しやすいです。
元肥を混ぜて畝を作る
じゃがいもは水はけのよい土壌を好みます。排水性をよくするために、畝(うね)を作るのがポイントです。まず石や古い根を取り除き、土壌に元肥と、pHに応じて石灰を入れて土作りをし、深さ25~30cmをよく耕します。元肥としては完熟堆肥や、じゃがいも用有機配合肥料が適当です。周りより5cm程度高く盛り上げた畝を、50~60cm幅で作ります。
じゃがいもの栽培②種芋の準備
種芋は検査に合格した芋のため、前年に収穫した芋やスーパーの芋は使えません。春植えの種芋は1月頃から、ホームセンターや園芸種苗店などで販売されます。寒さで種芋が腐ることもありますし、芽出し作業があるため、植え時の1か月前くらいに購入するのがおすすめです。初心者に育てやすい春植え品種としてはキタアカリや男爵があります。
種芋購入のポイント
種芋購入には「種馬鈴しょ合格証票」以外にもポイントがあります。春植えの場合は1個30~50g程度の小さめの種芋を選ぶと切らずに植えられ、切り口から腐る心配がありません。皮にしわがなくて張りがあり、ずっしりと重いものがよいです。発芽が始まっている場合は、発芽場所が分散していて、芽が太くしっかりしていて色が濃いものを選びます。
芽出し(浴光育芽)
じゃがいも(馬鈴薯)の種芋は植え時の2~3週間前から、芽出し(浴光育芽)を行って発芽させます。芽出しを行うことで発芽時期もそろいますし、生育もよくなるのです。発芽しない悪い種芋を選別することもできます。朝から夕方まで毎日やわらかい日光を浴びせ、時々ひっくり返して全面に光を当てましょう。
芽出しの適温は10~20℃
芽出しの間は温度を10~20℃に保ちます。強い日差しで温度が上がり過ぎないように注意し、雨の日や冷える夜間は屋内に取り込むことが大切です。2週間程度で種芋が発芽します。しっかりとした芽が5mm程度出た頃が植え時です。タイミングが合うように土作りと並行して進めます。
種芋を切る
1個30~50g程度の小さめの種芋の場合は、切る必要はありません。春植えで50g以上の大きな種芋の場合は、1片40~60g程度になるように半分~数個に切り分けます。切る際の注意点は、芽が均等になるように縦に切ることです。じゃがいもはへそ(親株とつながっていた部分)から縦に繊維が通っているので、横向きに断ち切らないようにします。
切り口を腐敗させない
種芋は切り口から腐りやすいため、切り口を上にして1~3日天日干しをして乾かすことが大切です。しかし干し加減が難しいともいわれます。すぐに植えたい場合は腐敗防止のために、草木灰やハイフレッシュ(粉末ケイ酸塩白土)を切り口にまぶしましょう。
出典:写真AC