はじめに
1年を通じてスーパーマーケットでも手に入るじゃがいも。煮ても、焼いても、炒めても、蒸しても、と様々な調理方法で大活躍している食材です。家庭菜園でも初心者が育てやすい野菜のひとつとして人気があります。そんなじゃがいもですが、実はたくさんの種類があるんです。「男爵」に「キタアカリ」、「メークイン」などはおなじみではないでしょうか? 今回、ご紹介するのは「とうや」という品種です。
じゃがいも「とうや」の特徴
「とうや」の特徴はどんなところにあるのでしょうか。「男爵」や「キタアカリ」との共通点や違いを交えながらご紹介します。
①粘質系である
滑らかな食感
「とうや」は後述しますが粘質系のタイプなので、ホクホクした食感は少ないです。粘質系の特徴として、滑らかな食感がありますが、時々、滑らかでも食べてみると硬さを感じるじゃがいもに出くわすと思います。「とうや」はその中でも、調理することでも硬さが残るような品種ではありません。
「とうや」のでんぷん質
粉質系である「男爵」「キタアカリ」と比較すると、粘質系である「とうや」のでんぷん質は低いです。そのため、両者よりもカロリーは低いです。ちなみにじゃがいもから作られているでんぷんは他の作物から作られているものに比べて粒子が大きめで、リン酸を多く含んでいるという性質があります。そのため弾力性を高める効果があり、例えば、かまぼこ、片栗粉、餃子の皮の打ち粉などに利用されています。
②早生品種である
早生品種であること
早生品種ということは栽培期間が短く、肥大するのが早いです。これは男爵との共通点でもあります。生長がスピーディーなため、元肥を規定量しっかり施しておけば追肥の必要はありません。
大きめで表面が滑らか
大玉になりやすい傾向にあるため、適切なサイズにするには密植気味に植え付けることが肝心です。普通は株間が30cmほどになるようにと推奨されていますが、「とうや」の場合はもう少し狭めてよいでしょう。また、「男爵」や「キタアカリ」は芽が深く凹凸がはっきりしていますが、「とうや」は表面の凹凸が少ないのが特徴です。
③結果、芽が浅い
時短メニューに向いている
「男爵」と「キタアカリ」は芽が深く、包丁で皮を剥きながら取り除こうとすると、包丁の柄に近い角ばった個所でぐるっと円を描くように取り除くなどしなければなりません。しかし、「とうや」に関しては芽が浅いため、皮を剥きながらでも除去がとても容易です。この違いは味に影響するものではありませんが、ひとつのメニューで4~5個など多めにじゃがいもを必要とする場合は、下ごしらえが楽になります。忙しい現代人にはうれしいじゃがいもです。
④病害虫への耐性がある
病害虫への耐性
「とうや」はPVYと呼ばれる「ジャガイモYウィルス」への耐性が強い品種となっています。特に種イモのときに感染していると、品質や収量が下がってしまう恐れがあります。しかし、「とうや」は他の種類のじゃがいもに比べて、その耐性が備わっているのです。ちなみに、この症状の原因としてはアブラムシによる媒介で感染しやすいとされています。ほかには「ジャガイモシストセンチュウ」の耐性も備わっています。
じゃがいもの栽培方法(概要)
栽培カレンダー ~ 「とうや」の適期は?
じゃがいもの栽培に適した時期は春と秋の2回です。※ご紹介していく栽培カレンダーは本州を中心とする暖地・中間地となります。
- 1月:
- 2月:(春作)畑の準備
- 3月:(春作)種イモの準備および植え付け
- 4月:(春作)芽かき、土寄せ
- 5月:(春作)土寄せ、追肥
- 6月:(春作)収穫(梅雨入り前に。目安は定植後100日)
- 7月:
- 8月:(秋作)畑の準備
- 9月:(秋作)種イモの準備および植え付け(気温が和らいできた頃に)
- 10月:(秋作)芽かき、土寄せ、追肥
- 11月:(秋作)土寄せ、収穫(霜がおりる前に採りましょう)
- 12月:
連作障害に注意
なお、じゃがいもはナス科の野菜です。同じ科目を同じ場所で作ると連作障害という症状が発生することがあります。ナス科の主な野菜の種類としては、ナス、トマト、ピーマン、トウガラシなど、夏に収穫されるものが多いです。そのため、秋作のじゃがいもを栽培する場合には、前作がナス科の野菜にならないように気を付けましょう!
じゃがいもの栽培方法(畑の準備)
畑の準備は、①耕す、②元肥、③畝、の3つのステップで進めていきます。なお、この準備の流れについては、「とうや」に限らず、じゃがいも全般で共通のものとなります。
①耕す
じゃがいもは土中で数を増やしていきます。土が硬いと根が広がりにくいので、深さ30cmは耕すようにしましょう。
②元肥を入れる
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じゃがいもは元肥をドカッと入れなくても比較的問題なく生長します。注意が必要なのは、石灰の量です。酸度計をお持ちであれば、pH5.5~6.0を目安に調整してください。じゃがいもは弱酸性の土壌を好みます。石灰を入れ過ぎて、pH7.0を超えてくるとソウカ病の発生要因(イモの表面がザラザラしてしまう病気)につながります。
③畝(うね)を立てる
1株ごとの間隔が狭いと生育に支障をきたすので、少なくとも株間30cm以上は離しましょう。また、1条植えであれば、畝幅は50cmは取っておくとよいでしょう。なお、白黒ダブルマルチを使用することでさらに生育促進が図れます。白マルチに黒マルチを裏打ちしたものですが、白色が上にくるように使います。その効果は地温の上昇を抑えながら、保湿と雑草抑制に効果があります。秋作の種イモは出来るだけ高温にさらしたくないので、利用したいアイテムのひとつです。
次のページでは、じゃがいもの植え付け方法を紹介するよ!
出典:写真AC