ツワブキ(石蕗)とは
ツワブキ(石蕗)は、昔から木の根元や日本庭園の石組み、小路などで秋冬の花の少ない季節を彩る際に親しまれてきました。寒さに強く、関東より南では冬も地上部が枯れずに葉を茂らせる特徴があります。初冬から春にかけて新芽が多くでる時期は、ツワブキの新芽の茎を折りとって収穫する、山菜狩りが楽しめますよ。
ツワブキ(石蕗)の花の特徴
ツワブキの花は薄黄色から濃い黄色が一般的で、葉の形にかかわらず写真のような黄色い花を咲かせます。花にはキク科の特徴がよくでていて、品種により花弁が針のように細いものから八重になるものまでさまざまです。白兎の品種名で知られる白花石蕗(しろばなつわぶき)は、はじめ薄黄色で咲き、しだいに白色にかわります。
花期は10月から12月まで
ツワブキ(石蕗)の葉の特徴
ツワブキの春の新芽は、山菜として楽しみます。写真よりもさらに小さく(10cm程度まで)若いうちに収穫した葉は、日本料理の青かいしき(料理の下に敷くもの)としても人気があります。また、江戸時代から続く葉芸(葉にでる珍しい特徴や変異)はオモトが有名ですが、ツワブキの古典園芸でもさまざまな葉芸を楽しむことができます。
ツワの山菜狩りは2月ごろから
ツワブキ(石蕗)の種類
自生するツワブキは斑入りではなく、緑色のツヤのある葉をもちます。海沿いや山、林などの山菜狩りで見かけるのは写真のツワブキが多いのではないでしょうか。ツワブキは変異が表れやすい性質をもつ植物のため園芸品種がとても多いです。葉の色や形に特徴が表れるものをさっそく見てみましょう。
葉の模様に特徴のある品種
秋に葉が白くなる白山は緑と白が混ざった様子を楽しめます。
秋に葉と葉脈が白くなる白峰は秋芸品種(秋に葉の色が変わる)です。
葉の形に特徴のある品種
葉が波打つ獅子芸をもつ品種は大獅子、黄色い星斑が入るものは鏡獅子が代表的です。
葉がモミジの葉のような形で斑入りの品種は紅葉々蛍が代表的です。
葉が分厚く細かく波打つ羅紗葉(らしゃば)もあります。株が充実するまでは、芸がはっきりと出ない場合があります。
ツワブキ(石蕗)の園芸利用
日陰でもよく育つツワブキは、岩の間に植えるとつやのある葉、秋から冬にかけては黄色い花弁がより引き立ちます。雨の降ったあとや、霧の出ているときは葉のツヤが増し、生き生きとしている姿を見せてくれます。海辺の潮風にも強く雨に打たれても形を崩しません。
モミジの根元に下草として植えると、秋の紅葉時期にはツワブキとモミジの共演が美しいです。俳句では11月(初冬)の季語として詠まれる「石蕗の花」は、花の少ない時期に海辺や山に咲く様子に寂しさを感じることが多いようです。寒さにあたって赤く染まったモミジとなら、明るい印象になりそうですね。
小路の両わきに植えた例です。秋冬の花を楽しむほか、大きな葉が地面へあたる日光を遮るので雑草予防になります。また根の張りがよい性質があるので、土砂の流出を防ぐ効果もあります。海風にも強いので、道を吹き抜ける風にも負けません。植える場所を選ばないところも、ツワブキのよいところですね。
ツワブキ(石蕗)の食材利用
山菜狩りでとってきたツワを美味しく食べるにはとってきたらすぐに下処理(あく抜き)をするのが大切です。春の山菜には植物のもつ天然毒(ピロリジジンアルカロイド類)が含まれているので、あく抜きをしないと食べられません。ツワブキもフキも下処理方法は同じです。
ピロリジジンアルカロイド類は、植物が作る天然物の一種で、ピロリジジン環構造(右図)を共通に含むアルカロイドの総称です。ピロリジジンアルカロイド類は、キク科、ムラサキ科、マメ科などの一部の植物に含まれており、600 種類以上の非常に多くの種類があります。その一部には、とても強い毒性があり、肝障害の原因となることが知られています。ヒトでは確認されておりませんが、動物実験では発がん性があるものもあることが報告されています。
ボタ爺
天然毒は水溶性なので、茹でこぼしたあと十分に水にさらすのがポイントじゃ。あく抜きが十分でないと、えぐみや苦みが強くて食べられないぞ!
ツワブキの下処理方法
1,桶などにふきを並べ浸るくらいの熱湯をかけ、1分おきます。
2,湯を捨て、水をかけます。
3,水を捨て、上の方から剥きます。(手が黒くなるので、薄いビニール手袋をおすすめします。)
4,剥いたらすぐに水につけます。水を何度か変えながら3〜4時間位浸け、アクを抜きます。
5,すぐに使わない時はジッパー付きの袋などに入れて冷凍しておきます。
ツワブキの調理例
ツワブキは油との相性がとてもいいです!ごま油で炒め煮にするといい香りです。
まとめ
艶のある大きな葉や、斑入りの葉が魅力のツワブキは、種類も多くカラーリーフとして古来から人気のある植物です。春は山菜としての利用を楽しみ、秋冬には黄色い花が庭を明るく彩ります。手入れもほとんど必要なく日陰でも元気に育つので、ガーデニングをはじめたばかりの方へもおすすめの植物です。ぜひお好みの品種で葉芸を楽しんでくださいね。
出典:筆者撮影