ユキザサ(雪笹)とは?
雪のように白い花を咲かせるユキザサ(雪笹)は多年生の植物です。名前に「笹」の文字が使われていますがイネ科の植物ではなく、チューリップやヤマユリと同じユリ科で、成長すると70cmほどの高さになります。芽吹いたばかりの柔らかい葉は食用可能で、春の山菜としても知られています。
基本情報
名前 | ユキザサ |
和名 | 雪笹 |
別名 | アズキナ |
学名 | Maianthemum japonicum |
分類 | ユリ科:マイヅルソウ属 多年草 |
高さ | 20cm~60cm |
開花時期 | 4月~7月 |
利用 | 山菜 薬用 |
原産地と自生場所
ユキザサの原産地は日本・中国・朝鮮半島です。北海道から九州に分布し、広葉樹林が多い山地の半日陰に自生します。やや湿り気のある場所を好む性質です。
和名の由来
雪笹の「雪」の文字は、花の色が雪のように白く、雪の粒子のように細かい花を咲かせることが関係しています。また「笹」の文字は、ユキザサの葉の様子が笹の葉によく似ていることからつけられたといわれています。
ユキザサの特徴
特徴①茎
ユキザサはL字に曲がった根茎をもち、根茎から根を伸ばして水分や養分を吸い上げます。地上の茎はあまり曲がることはなく、まっすぐ伸びるのが特徴です。茎は緑色や小豆色で、別名「アズキナ」の由来は茎の色が関係しているといわれています。

ボタニ子
「アズキナ」の由来はほかにもあり、ユキザサの葉を茹でたときの香りが、小豆を煮たときの香りに似ていたため呼ばるようになったともいわれています。
特徴②葉
付け根から葉先までの長さは約6cm~15cmほどで、横幅は約3cm~7cm、葉の中央部分が広がった楕円形です。葉の表面にはつやと縦に走るくっきりとした葉脈があり、細かい毛が生えています。葉の縁が大小に波打つのが特徴です。

ボタニ子
生育環境や栄養状態によって、波打ちが細かくたくさんウェーブするものや、波打ちの数が少なく緩やかにウェーブする株もあります。
特徴③花
白い小花が花柄にかたまってつきます。花びらの長さは約3mm~4mmで数は6枚、花全体の大きさは約6mm~8mmほどです。両性花(りょうせいか)のユキザサは、花の中央に短い雌しべと、雌しべを囲むように6本の雄しべがあります。両性花の花は自家受粉を避けるため雄しべが雌しべより長くなることがあり、ユキザサも雄しべが長く外へ伸びています。
特徴④実
開花後、花柄に粒状の丸い実をつけます。小さい実は熟すにつれ約5mm~8mmほどの大きさに膨らみ、色も緑色から赤色に変化して美しいつやを放ちます。実のなかには1粒~2粒ほどの種が入っています。

ボタ爺
野鳥が好んで食べるユキザサの完熟した実は、人間も食べることができるんじゃよ。
ユキザサの食べ方
山菜として知られるユキザサは、春に芽吹いたばかりの新芽や、草丈10cm~20cmほどの若い芽が食べられます。ワラビやゼンマイのようにあく抜きをする必要はなく、収穫後すぐに調理できる山菜です。茎や葉に臭みはなく優しい甘さが特徴で、適度な歯ごたえと柔らかさがあります。

ボタニ子
若い芽は葉が少し開いていても、収穫して食べられますよ!
収穫の方法
新芽や若芽の根元部分をナイフやハサミで切り取るか、手でもぎ取り収穫します。収穫したものはカゴやビニール袋に入れて持ち帰りますが、上下をそろえてから輪ゴムで軽くとめると持ち運びしやすくなります。
収穫の際はよく似た毒草に注意しましょう!
ユキザサの新芽や若芽によく似ている植物に、「ホウチャクソウ(宝鐸草)」や「コバイケイソウ(小梅蕙草)」、「スズラン(鈴蘭)」などがあります。どれも茎や葉に毒をもち、まちがって食べてしまうと中毒症状をおこす危険性があるため、収穫の際はよく確認し、少しでも心配のあるものは採らないようにしましょう。
収穫後の保存方法
収穫後すぐに調理しない場合は、土汚れを落とさずに湿らせた新聞紙で包んでおくと数日保存できます。すぐに調理する場合は、水洗いしてから新聞紙に包んでおくとしおれずに鮮度が保てます。どちらも長期間そのままにしておくと茎や葉がしおれて味も落ちるので、鮮度が高いうちに調理して食べるようにしましょう。
おすすめの食べ方
おすすめの食べ方はおひたしや和え物です。茹でたユキザサの新芽や若芽を水にとって冷まし、水気を絞ってから食べやすい大きさに切ります。おひたしはお好みの薬味をのせて醤油などをかけ、和え物は麺つゆや酢みそがよく合います。また茹でずにそのまま衣をつけて天ぷらもできます。

ボタニ子
調理したものはラップや蓋つきの鉢などに入れ、冷蔵庫で保存できますよ。長期の保存はできないので、早めに食べるようにしましょう。
ユキザサの仲間①ハルナユキザサ(榛名雪笹)
【基本情報】
名前 | ハルナユキザサ |
和名 | 榛名雪笹 |
学名 | Maianthemum robustum |
高さ | 80cm~150cm |
開花時期 | 6月~7月 |
ハルナユキザサの特徴
ハルナユキザサ(榛名雪笹)は日本固有の植物で、群馬県や長野県などに分布します。ユキザサと同じく木が密集する山地の日陰で育つ植物です。ユキザサに似た葉の様子と、長野県の榛名山(はるなさん)で見つかったことが名前の由来です。葉が大きく、人が見上げるほどの高さに成長することもあり、全体的に大型の印象をうけます。
ユキザサとハルナユキザサの見分け方
草丈や葉の大きさで見分けられます。
- 草丈…ユキザサの草丈20cm~70cmに対し、ハルナユキザサは草丈80cm~150cmと大型です。
- 葉の大きさ…ハルナユキザサの葉はユキザサより長く幅広です。
ユキザサの仲間②ヤマトユキザサ(大和雪笹)
【基本情報】
名前 | ヤマトユキザサ |
和名 | 大和雪笹 |
学名 | Maianthemum hondoense |
高さ | 40cm~70cm |
開花時期 | 5月~7月 |
ヤマトユキザサの特徴
ヤマトユキザサ(大和雪笹)もハルナユキザサと同じく日本固有の植物です。東北の南部から近畿地方に分布し、山地の日陰や林の縁に自生します。ヤマトユキザサの調査や基本標本を作る際に採取された場所が奈良県であったことから、「大和の国」にちなんで名前がつけられたといわれています。花は雌雄異株で雌株と雄株が別々に存在し、花色は白だけでなく薄い黄緑やクリーム色もあります。
ユキザサとヤマトユキザサの見分け方
分類の違いや草丈で見分けられます。
- 分類の違い…ユキザサは雌雄同種で1つの株に雌花と雄花をもち、ヤマトユキザサは雌雄異株で雌株と雄株が別に存在します。
- 草丈…ユキザサよりヤマトユキザサのほうがやや草丈が高くなります。
まとめ
綿雪のようにまっ白い花を咲かせるユキザサはユリ科の多年草で、日本の山地に多く自生し、半日陰を好む性質です。花が雪のように白いことや、葉の様子が笹に似ていることが名前の由来といわれています。春に採れる山菜としての一面をもち、新芽や若芽にあくやえぐみがないため下処理をせずそのまま調理できます。おひたしや和え物、天ぷらなどシンプルな食べ方がおすすめです。春に採れた際は、ぜひシンプル料理で味わってみてください。
出典:写真AC