ツワブキとは
ツワブキは、緑の葉を一年中茂らせる観葉植物です。特に、寒い冬にも濃い緑で庭を彩ってくれるため、ガーデニングで大人気。丈夫で温度の変化にも強いため、初心者にも育てやすくおすすめです。九州を中心に、茎を山菜として食べる地域もあるため、野菜感覚で育てるのも楽しいかもしれませんね。
学名 | Farfugium japonicum |
和名 | ツワブキ |
分布 | 本州・四国・九州・朝鮮・台湾 |
草丈 | 20cm~50cm |
晩秋から初冬にかけて黄色い花をつける
ツワブキは、晩秋から初冬にかけて、菊に似た黄色い花を咲かせます。日光を追うように伸びるさまは、寒い季節の庭を華やかに彩ってくれます。また「石蕗の花(つわのはな)」は、古くから冬の季語としても愛されています。小林一茶や斎藤茂吉など、多くの有名な歌人がツワブキの花を歌ってきました。
品種によって葉の形が様々
ツワブキの名前の由来は、大きく艶やかな葉です。しかし品種によっては、葉の形が違うものもあります。ちしゃのように縮れた葉を持つ『大獅子』や、星を散りばめたかのような紋を持つ『天星』を通常の葉を持つ品種の間に植えると、庭のアクセントになります。
花言葉は「困難に負けない」など
ツワブキの花言葉は、「困難に負けない」「謙虚」などです。丈夫で、潮風の強い海辺や日当たりの悪い日陰でも成長できる、強い生命力を持っていることに由来します。また「愛よ甦れ」という花言葉もあり、こちらも低い温度にさらされても濃い緑を保ち続ける姿から付けられました。
茶花としても愛されるツワブキ
ツワブキは日本庭園の定番である他、花の種類の少ない季節に咲くため、茶室にいける茶花としても知られています。茶花は比較的落ち着いた花が好まれますが、ツワブキの花は明るく葉も艶がありますから、若い葉と組み合わせて落ち着いた雰囲気を出してあげると品が出ます。
ツワブキとそっくりなフキ
ツワブキにそっくりな植物として、フキがあります。こちらも、庭に植えられたり山菜として野山に生えていたりと、多くの点で共通します。ツワブキと一番大きく異なる点は、花が咲く時期です。フキは晩冬にふきのとうをはやし、その先に小さく白い花をたくさんつけます。
葉の様子で見分けがつく
夏など花がつかない時期は、葉で区別すると区別しやすくなります。フキ(写真上)は表面がザラザラしていますが、ツワブキ(下)はその名の通りツヤツヤと光っているため区別できます。また茎の形も異なっており、フキのほうが茎が太く中空となっています。
ツワブキの育て方1:植え付け
ツワブキの苗植えは、4~5月頃、もしくは暑さの落ち着いた9~10月頃が目安です。鉢植え・地植えどちらでも育てることができますが、鉢植えの場合は、年に一度植え替えが必要です。花は日の当たる方に向かって伸びていくため、半日陰になる場所で育てる場合はやや注意が必要です。
置き場所は日当たり重視で
置き場所は比較的融通がきき、半日陰程度でも問題なく育ちます。ただし紋が入る品種は強い日光に弱いので、鉢植えの場合は夏の間、置き場所を移動させたほうがいいかもしれません。地植えの場合も、午後は日が陰る場所に植えたほうが、夏の日差しにも耐えやすくなります。
用土は水はけが大事
用土は、水はけが良いものを用意しましょう。市販の草木用培養土を使うか、小粒赤玉土8:腐葉土2で混ぜたものがおすすめです。地植えの場合は、10~20cmほど土を盛ってから植え付けるようにします。元肥は、鉢植え・地植え共に窒素・リン酸・カリが等量の配合肥料を少量施します。
ツワブキの育て方2:水やり・肥料
鉢植えは表面が乾いたらたっぷり水をあげて
地植えの場合、水やりは特に必要ありません。晴れた日が長く続くなど、どうしても気になるときだけあげればいいでしょう。一方鉢植えの場合、土の表面が乾いたらたっぷり水をあげるようにしてください。特に夏場は、水が足りなくなる事が多いので気をつけてください。
追肥は月1回を目安に
鉢植えの場合、4月から9月にかけて、月に一度追肥が必要になります。緩効性肥料・もしくは有機肥料を与えてください。その場合、窒素・リン酸・カリが等量の物を選ぶのがおすすめです。地植えの場合は特に与えなくても育ちますが、大きく育てたい場合は、同じように肥料を与えてあげてください。
ツワブキの育て方3:病気・害虫対策
病気には比較的強い
ツワブキは病気には比較的強い植物です。ただし、5月から8月にかけてのうどんこ病には注意。白いカビのようなものが表面に付き、光合成を阻害します。また長雨に合うと、茶色い粒ができる褐斑病を発症することもあります。どちらも、病気の葉を切り捨てると、そのうち再生します。
害虫には注意!特にキクスイカミキリに気をつけて
ツワブキの天敵は、害虫のキクスイカミキリです。春から夏にかけて、株全体は元気なのにしおれかけている葉があったら要注意。茎を根元から取り除き、中に幼虫がいるかどうか確認してください。万が一幼虫がいなかった場合、掘り起こして根を裂いて幼虫を捕殺する必要があります。薬剤で防止できますが、被害が出はじめてからでは手遅れになるので、早め早めに使用してください。
ツワブキの育て方4:増やし方
株分けは植え替えと一緒に
ツワブキの増やし方は、株分けです。基本的に植え付けと同時に行います。古くなった部分を境に自然に分かれますが、株ごとに2~3本ずつ茎がつくように、消毒したナイフで切り分けてもかまいません。その後は、通常通り植え付けてください。ただし、株分け直後の株はまだ弱っているため、キクスイカミキリには要注意。置き場所の近くにキク科の雑草が生えていないか、注意してください。
種を採取して増やすこともできる
花が終わる12月頃になると、白く大きな綿毛ができます。これを採取しておくと、種で増やすこともできます。ただし、増やし方としては株分けのほうがおすすめ。というのも、種から育てた場合はあまり大きくならないことが多いからです。小さな盆栽として育てる場合には、こちらでも十分な場合が多いです。
ツワブキの食べ方
ツワブキは観葉植物としてだけでなく、春の山菜としても知られています。フキに似た強い香りが最大の魅力で、特に新芽の部分が柔らかく食べやすいので、初心者にもおすすめです。特に、九州を中心とした西日本各地では、ツワという名前で親しまれています。また、定番の伽羅蕗(きゃらぶき)は、三重県の名物である天むすの定番のお供となっています。
煮物や天ぷらがおすすめ
フキと比べると皮がむきやすいので、料理はしやすい方です。沸騰したお湯で30秒ほど茹でると、全体の皮がつるりとむけるようになります。その後、1~2分茹でてから半日水にさらせば、下処理は完了です。煮付けるが定番ですが、同じくらいおすすめなのが天ぷら。庭先に植えたツワブキを食べるのは心苦しいかもしれませんが、色々なところで生えているのを見かけますから、そういった物を摘んでみると試しやすいですよ。
まとめ
ツワブキは、丈夫で気候の変化や荒れ地に強いのが強みです。他の花が咲かない晩秋の花なので、ガーデニングにもありがたいところ。他の季節でも、艶のある大きな葉で庭のアクセントにはぴったりです。日当たりと害虫にさえ気をつければ、初心者でも育てやすい植物ですから、ぜひ一度育ててみてください。
出典:筆者撮影