タカラダニの概要
タカラダニはダニの仲間です。ゴールデンウィークの頃から発生し、日本では北海道~沖縄のほぼ全域で見られます。ビルの外壁や庭先のブロック塀などによく発生しています。赤い体色から「アカダニ」とも呼ばれており、体長は1mm前後とダニとしては大型です。雑食性で花粉や小型の昆虫などを食します。一方で生態については不明な点も多く、今後の研究結果が待たれる存在でもあります。
最近まで別種のダニと間違われていたのも、タカラダニの生態に不明な点が多いのが原因なんだよね。
名前の由来
タカラダニの名前は、タカラダニの幼虫の生態に由来しています。タカラダニの幼虫は、セミやアブラムシなどの節足動物に寄生し、体液を吸います。赤い小さなタカラダニの幼虫が節足動物に寄生している様子が、まるで赤い宝石がついているように見えることから「宝ダニ(タカラダニ)」という名前がつけられました。
「赤いタカラダニがたくさんついているセミを捕まえると、お金持ちになれる」という言い伝えがあるそうですよ。
この言い伝えが、タカラダニの名前の由来になったという説もあるんだよ。
タカラダニの基本データ
学名 | Balaustium murorum |
和名 | カベアナタカラダニ(タカラダニ) |
別名 | アカダニ(赤ダニ) |
活動時期 | 5月~6月 |
体長 | 0.3mm~1mm |
寿命 | 成虫は約1カ月~2カ月(産卵後は約1日) |
おもな餌 | 花粉、セミ、アブラムシ、コケ |
タカラダニの特徴
特徴①赤い体
タカラダニの特徴は赤い体です。「アカダニ」という別名も、赤い体色から名づけられました。体長は1mm前後と小さいですが赤い体色が目立つため、大量発生すると不気味に感じられます。タカラダニはおもにビルの外壁や屋上、庭を囲むブロック塀といったコンクリートで発生します。その途中で家の中へ侵入することも多いです。
特徴②活動期は春~夏
タカラダニの活動期間は、地域やその年の気候によってズレはありますが5月~7月です。おもにビルの外壁や庭先のブロック塀といったコンクリートです。家ではエアコンの室外機やベランダなど、日当たりのよい場所で見られます。暑過ぎる日や寒過ぎる日はほとんど見かけません。温暖で晴れた日に盛んに活動します。
特徴③成虫の寿命は2カ月程度
タカラダニの成虫は、2カ月~3カ月しか生きられません。2カ月~3カ月間の活動期を過ごした後に卵を産み、約24時間内に死んでしまうといわれています。しかしタカラダニは生態に謎が多い生き物です。卵からかえった後~成虫になる前の過程や時間の長さなど、いまだにわかっていない点がたくさんあります。卵~寿命が尽きるまでの期間に関しては現時点では不明です。今後の研究成果が待たれます。
特徴④オスがいない
タカラダニの生態で、大きな謎とされているのが「オスがいないこと」です。これまで確認・捕獲されたタカラダニはすべてメスで、オスはいまだに発見されていません。「もともとメスしかいない種」「何らかの理由でオスがメスに性転換している」など、さまざまな説がありますが現時点(2020年8月現在)では謎のままです。
特徴⑤雑食性である
タカラダニのエサは、一般的には花粉、アブラムシやセミなどの節足動物、コケなどの地衣類(ちいるい)とされています。タカラダニは幼虫が節足動物に寄生して体液を吸います。そして成虫がもっとも盛んに活動する5月~7月は花粉が多い時期です。タカラダニがコンクリート上でよく発生するのは、エサになるコケや花粉が多孔質のコンクリートによく付着するからだともいわれています。
タカラダニは「雑食だが肉食性ではない」といわれていますが、アリの死骸を運んでいたという情報があります。
タカラダニは基本的な食生活についても不明な点が多いんだ。あらゆる面で、今後の研究成果が待たれる生物なんだよ。
タカラダニの発生原因
タカラダニは毎年活動期に入ると、コンクリートや庭の花壇、植木鉢に大量発生します。発生原因については、タカラダニの小さい体とエサが関係しているのではないか、と推測されています。タカラダニが発生するコンクリートの割れ目や、庭の花壇や植木鉢のわずかな隙間は非常に小さいため、外敵が入ってこられません。日当たりが悪いので、タカラダニがエサとするコケが生えやすい場所でもあります。
タカラダニが発生する場所は外敵が侵入しにくいため、身を隠すのにも卵を産むのにも最適なんですね。
コンクリートの割れ目や庭の植木鉢の隙間には、エサになるコケもたくさん生えているから、卵からかえった幼虫もよく育つんだね。
タカラダニの被害
被害①見た目が不快
タカラダニは見た目が不快な害虫です。タカラダニは雑食ですが、人を刺すということはほとんどありません。しかし赤い小さな虫が大量発生している様子は不気味です。わずかな隙間に入り込めることも、余計に不快な印象を与えるでしょう。
保健所へ寄せられるタカラダニに関する苦情のほとんどは、「タカラダニが大量発生して不快だ」というものです。
日本国内で「タカラダニに刺された」といった被害報告は出ていないけど、油断しちゃダメだからね。
被害②洗濯物や布団を汚す
タカラダニはベランダや家の中に侵入することも多いです。その際に洗濯物や布団に付着することがあります。タカラダニはよく晴れた日に活動するため、そのときにベランダに干してある洗濯物や布団に付着することが多いです。また、家の中に侵入したときは、押し入れのなかにしまっている布団や、家の壁などで大量発生します。
タカラダニは小さいため、洗濯物や布団を取り込む際に気づかずに潰してしまい、洗濯物や布団を汚してしまう恐れがあります。
実際に、公園に設置しているコンクリートの椅子に座った際、服にタカラダニの赤い体液がついてしまっていたという例もあるんだよ。
被害③アレルギー誘発
日本国内で、タカラダニが人を刺したという報告はありません。ただし、潰したタカラダニの体液が衣服や洗濯物・布団を汚す、皮膚に付着する、皮疹アレルギー発症の原因になるといった被害が確認されています。タカラダニは小さいため、気づかずにうっかり潰してしまう可能性が高いです。潰して皮膚に体液が付着してしまった場合は、すぐに水で洗い流しましょう。
次ページは「タカラダニの予防と駆除対策」です。
タカラダニは2001年までは同属種のハマベアナタカラダニと混同されていました。間違いとわかった原因も、この年に初めて幼虫が発見されたからです。