アシダカグモの概要
アシダカグモは、アシダカグモ科アシダカグモ属の外来生物で、学名はHeteropoda venatoriaです。夜行性でとても素早く動き、人の動体視力では追いつかないときがあります。海外との貿易が盛んになった明治時代、アシダカグモが最初に発見されたのは長崎です。亜熱帯、熱帯、温帯地域に広く分布しており、原産はインドという説があります。関東以南の本州に生息しますが、近年は分布が北の地域へ広がっています。
ボタニ子
「足(脚)高蜘蛛(あしだかぐも)」という名前の由来になった、とても長い足が特徴なの。クモの糸で巣を張らずに、徘徊してエサを探す益虫よ。
ボタ爺
体部分はそれほどでもないが、足を含めると日本では一番大きいクモなんじゃないかの。ちょっと驚くくらいの大きさだぞ。
アシダカグモはなつくのか
アシダカグモは人になつきませんが、慣れればなついているように見える行動をするため、かわいいと感じる人もいるでしょう。人間がアシダカグモに対して愛情を持って接しても、果たしてアシダカグモが愛情を返してくれるかはわかりません。アシダカグモはとても臆病なクモで、人が近づくと逃げてしまいますが、飼育することは可能です。
アシダカグモはなつくか①エサやり
アシダカグモはとても臆病ですが、飼育し続けてこちらが攻撃してこないとわかれば馴れることがあります。飼育下では、ペットショップで売っているコオロギやミルワーム、レッドローチなどを与えます。すぐに食べなくてもお腹がすけば捕食するため様子を見てください。より馴れるとピンセットで与えるエサを受け取ることがあります。
ボタニ子
自然豊かでムシがいるなら、捕まえてきてあげてもいいのよ。受け取ってくれることを「なつく」っていうかどうかは、微妙だけどかわいいわね。
ボタ爺
個体によって好き嫌いがあるようだぞ。ミルワームよりもレッドローチのほうがいいとか、コオロギも大きい自然のものがいいとかの。
アシダカグモはなつくか②手乗り
基本的に、アシダカグモは人間に対して攻撃を加えることはありません。しかし、駆除しようと追いかけまわしたり、追い詰めたりすると最終手段で噛むことがあります。飼育下で怖い思いをしていなければ、手乗りクモになります。しかし、ただ乗っただけ、逃げなかっただけということで、こちらもなついているように見える程度です。
ボタニ子
アシダカグモって、売ってるのよ。値段はね、1000円~2000円くらいなんですって。
ボタ爺
なつくかどうかはわからんが、害虫を食べてくれる益虫だからの。ムシの値段としては高いかもしれんが、欲しい人がいるんだな。
ボタニ子
益虫だからって、大きいのを交尾させて繁殖させてる人もいるそうよ。寿命も長いからたくさん増えるわね。
アシダカグモはなつくか③攻撃しない
アシダカグモは基本的に自分より大きい生き物に近づきません。まれに、人に登ってくることがありますが、それは何かの衝撃でパニックになり、自分がどの方向へ進んでいるかわからなくなっているだけです。アシダカグモは人間に対しては臆病で、自分から攻撃することはないので、なつくというより毒性や害がないというクモです。
アシダカグモの生態
アシダカグモは何を食べ、なぜ家の中にいて、どうやって増えるのかを知っておくと遭遇したときの驚きや怖さが少し減るでしょう。人間に対して害をなさないクモであることは確かなため、特徴や生態、オス・メスの大きさや模様の違いなどを覚えておくと、出会っても安心できますよ。
卵
アシダカグモの産卵時期は夏です。普段、糸を使って巣を作りませんが、卵を入れる卵のうを作るのに糸を使います。卵のうは大福をつぶしたような形をしており、300個前後の卵が入っています。メ抱卵初期のメスは、卵のうをくわえて孵化まで守るので、その間はエサをとりません。孵化が近くなると、壁や天井に卵のうを貼りつけて、そばで子どもが生まれるのを待ちながら守ります。
ボタニ子
アシダカグモのメスって、交尾しなくても卵を産むよ。無精卵だからかえらないけどね。
ボタ爺
交尾して生まれた卵でも、うまく孵化しないと判断したら食べてしまうのだよ。次の産卵に備えて栄養にするんだの。
子ども
孵化直後のアシダカグモの子どもたちは、1カ所に集まって暮らします。子どもたちの集合体は「団居(まどい)」といいます。団居に刺激を与えると子どもたちはパニックになって、散り散りに走り逃げる姿が「クモの子を散らす」の語源です。成長して団居を出る際は、体重が軽いため「しおり糸」という糸を出してバルーニングで飛んでいき、その先でエサを捕食します。
ボタニ子
バルーニングってね、クモの子どもがしおり糸っていう糸を出して、風にのって移動する方法のことをいうの。
ボタ爺
大人になると大きくなるからバルーニングどころか、命綱としてのしおり糸も切れて、落下することが多いんだな。ちょっとドジでかわいいの。
オスとメスの違い
メス
アシダカグモのメスは、体長が2cm~3cm、足の長さが約5cmあります。8本の足はほぼ同じ長さで、全部を広げるとディスクメディアくらいの大きさです。全身に白、灰色、褐色を混ぜたような灰褐色の毛が生えており、毛の色の混ざり具合で個体差があります。大きいどっしりした腹部分はかっこいいともいわれ、足はジャノメ模様です。
オス
アシダカグモのオスは体長が1cm~2.5cm、足は約5cmでメスより一回り小さめです。体はややスレンダーで、頭胸部に左右対称の黒い模様があります。見ようによってはハートマークに見えます。体中に灰褐色の毛が生えているのはメスと同じですが、メスよりも少し色が明るめです。口の脇に生殖器が2本生えています。
ボタニ子
カマキリもそうなんだけど、交尾のあと、オスは気をつけないとメスに捕食されちゃうんだって。
ボタ爺
オスは命がけで交尾してるんだの。ほかの種類のクモもオスが捕食されることが多いらしいぞ。
成長と寿命
アシダカグモの子どもは孵化してから1年~2年で成虫になります。成虫になるまでにオスは約9回、メスはおよそ10回の脱皮が必要です。脱皮前に何かのトラブルで足が取れてしまっても、脱皮後に再生しますが、多少色や長さが違ってきます。アシダカグモの寿命は、オスが3年~5年、メスが5年~7年とクモの中では長生きです。個体によっては寿命が10年近くになるものもいます。
ボタニ子
アシダカグモは寿命が長いから、飼育すると結構長い付きあいになるわね。小さいメスを手に入れたら寿命まで、ずいぶんと仲よくなれそう。
ボタ爺
上手に育てればエサを受け取ってくれるかもしれないし、寿命も延びるかもしれんな。脱皮前はエサを食べないけど、心配はいらんよ。
毒性
アシダカグモはプロテアーゼ、ヒアルロニダーゼ、エステラーゼという消化系の毒性を持っています。しかし、毒性は人間には無害で、エサである節足動物の消化に対して必要なものです。人間は脊椎動物で、神経伝達物質が違います。たとえ噛むことがあっても、痛いだけで人体に影響はありません。毒性はアシダカグモのエサになる害虫にだけ作用します。
ボタニ子
アシダカグモって、怖がりだから自分より大きな人間を噛むなんてことはめったにないわ。人間に効かないなら毒性もなしね。
ボタ爺
追い払おうとして追っかけまわして、怖がらせて手で触ろうなんてしたら噛むことがあるよ。危ないから気をつけよう。
生息地
アシダカグモの生息地は、エサのあるところです。家の中、蔵、物置や神社などを生息地としています。基本的に室内での遭遇が多いのは、家の中にいる害虫を捕食する益虫だからです。家の中で見つけても放置しておいて問題ありません。放置していても家の中からエサがいなくなればどこかエサがあるほかの家へ生息地を変えるからです。
ボタニ子
冬の生息地はね、家具の裏や天井裏とかの温度があまり変わらない場所よ。暖かい場所を好むのね。
ボタ爺
沖縄くらいの気温ならば外でも越冬できるけど、本州は無理だの。
出典:写真AC