夜盗虫(ヨトウムシ)ってどんな虫?
ヨトウムシとは、ヨトウガ(Cabbage moth)という蛾の幼虫のことです。一般的には、同類のハスモンヨトウやシロイチモジヨトウの幼虫も「ヨトウムシ」と呼んでいます。繁殖力が強く、幼虫はイネ科をのぞくあらゆる植物の葉や花、実をも食害してしまいます。屋久島以北の日本全域に生息しており、ガーデニングファンにとっては脅威的な存在です。
ヨトウムシの特徴
ヨトウムシの体表は滑らかで、毛(刺毛)はありません。不用意に触れてしまって、皮膚がかぶれてしまう心配は無用です。また体表の色は成長によって変化し、個体によっても異なるため、一概に「このような色だ」と固定することは難しいです。一般的な見分け方は、頭部だけ黄色っぽく、全体がくすんだ褐色系という老齢幼虫の姿がイメージされます。
ヨトウムシの見分け方
ヨトウムシに似た幼虫はたくさん存在します。その見分け方としては、下記を参考にしてください。
- 体表に毛があるかどうか?⇒ヨトウムシには毛がない
- 尺取り虫のように動くか?⇒ヨトウムシは尺取り虫のように動く
- 身体の側面に黄色いラインがある⇒ヨトウムシの可能性が高い
夜盗虫(ヨトウムシ)の名前の由来
ヨトウムシの幼虫は夜行性です。昼間は土の中に潜んでおり、夜になると地上に這い出して植物を食べます。その様子がまるで、夜に出没する盗賊のようなので、夜盗虫(ヨトウムシ)と名づけられました。
夜盗虫(ヨトウムシ)の生態
ヨトウムシの活動する時期は、初夏から秋にかけてと長期間に及びます。その期間中の繁殖期は2~3回です。蛹で冬を越した個体は、春先に成虫となり産卵します。そのため幼虫は5月下旬から6月にかけて発生することになるのです。この時成虫になった個体が再び産卵し、9~10月に再度の大発生に至ります。ちなみに秋の時期のほうが多く発生する傾向があります。
ヨトウムシの活動時間
ヨトウムシの活動時間は、その名前のとおり夜間帯です。幼虫は、昼間のうちは地中に潜んでおり、夜間に動き出して植物を食べます。成虫もまた「夜蛾」に分類されているとおり、活動時間は夜間です。一生のうちのほとんどを暗闇のなかで暮らしていることになります。
ヨトウムシの産卵
ヨトウムシは植物の葉の裏に産卵します。直径0.5~0.6mmと小さく、色は乳白色です。1回で産卵する卵の数は、数十から数百個といわれ、形状は饅頭型の塊です。産卵も夜間に行われ、春と秋の2回あります。産卵する個体が多ければ、大量発生してしまいます。
幼虫期
ヨトウムシの幼虫期間は1カ月程度と、比較的短いです。生まれたばかりの幼虫は、透明がかった薄緑色ですが、成長に従い淡い黄褐色に変化します。やがて頭部以外は黒ずんだ体表に変わり、斑点が目立つようになってきます。幼虫の最終段階の大きさは、40~50mmと大幅に変化します。この頃が食欲旺盛な時期で、植物の葉脈以外すべて食害するほどです。
蛹期
秋に幼虫として活動した個体は、蛹の状態で冬を過ごします。蛹の大きさは20mm程度と幼虫時期より小さくなり、地中で羽化するのをじっと待ちます。冬は地中で静かに過ごしているため、ヨトウムシの食害が発生することはありません。しかし春に幼虫として活動した個体は、夏の間に蛹化・夏眠し、秋口には成虫に成長します。蛹化する時期は個体によってズレが発生するため、食害の被害からいっせいに解放されるということはありません。
成虫期
ヨトウムシの成虫は大きさが15~20mmと、蛹の時期と同じか、やや小さくなります。セミのような二等辺三角形の形状です。体表は濃い灰褐色か黒褐色で、白っぽい斑があります。ライフスタイルは典型的な蛾のもので、夜間に灯の周辺に集まってきます。成虫の寿命は短く、数日間でその生涯を閉じます。成虫は直接被害を及ぼしませんが、産卵させないよう注意が必要です。