キアゲハの幼虫の生態について
キアゲハは美しく、日本の古き良き伝統を感じる、趣のあるアゲハチョウ。一方で、幼虫の姿は毒々しく、虫が苦手な人から見たら「こんなグロテスクな虫が、あんなきれいなチョウになるなんて、信じられない!」と感じるかも知れません。
アゲハとキアゲハの幼虫の違い
まずはアゲハチョウの幼虫(青虫)の写真です。チョウチョの幼虫のことをよく「青虫」と呼びますが、全くその通りの緑色をしていますね。どこか愛嬌のあるユーモラスな表情は、見る人によっては愛らしく見えるのではないでしょうか。アゲハチョウの幼虫は頭部が大きく、体長は5齢幼虫で約4.5センチ程度。ミカンの葉が好物なので、主に柑橘類の葉っぱに生息しています。
続いてこちらが、キアゲハの幼虫(青虫)です。全体的に黒と緑のしましま模様が特徴で、アゲハチョウの幼虫と比べてみても違いは一目瞭然ですよね!こちらは青虫と呼ぶには少々毒々しい風合いをしており、体長は約5センチと、通常のアゲハチョウと比べると若干大きめ。地域によっては、アゲハチョウよりもキアゲハのほうがたくさん生息しているところもあり、どちらかと言えばキアゲハのほうが馴染み深い虫といえるのではないでしょうか。
アゲハの幼虫はツノが臭い!
アゲハチョウの幼虫といえば、あの強烈に臭い「ツノ」を思い浮かべる人も少なくないでしょう。キアゲハの幼虫も類をみず、やはりツノが臭いです。これはアゲハチョウの幼虫全般に言えることですが、彼らには「臭角」と呼ばれるツノが生えており、怒らせたり危険を感じると、臭角を出し、その臭いツノを使って敵から身を守るのです。
臭い(におい)の理由はツノから出る体液
ということは、あの臭いニオイは「臭角それ自体」から臭うものなのか。答えは「NO」です。アゲハチョウの幼虫は、敵をびっくりさせるために臭角を出しますが、それと同時に、ツノから強烈に臭い体液を発射しているのです。(いくら身を守るための手段とはいえ、臭いのだけは勘弁していただきたいですよね!)
キアゲハの餌は?(飼育する場合)
ニンジンとパセリは絶好のエサ!
キアゲハの幼虫は、ニンジンとパセリの葉が大好物です。もはやニンジンやパセリの葉は、キアゲハの「エサ」と評してよいほど、セリ科の葉っぱが大好物なのですよ。そのため、ニンジンやパセリを育てているガーデナーさんにとって天敵となるのがキアゲハの幼虫。
手で取って退治するのは得策ではない
黒と緑のしましま模様が目立つので、見つけるのは簡単ですが「手で取って退治しよう」などと考えるのはやめておきましょう。キアゲハの幼虫を素手で取ろうとすると、彼らは身の危険を察知して、あの強烈に臭い臭角で威嚇してきますので気をつけましょう。
キアゲハを飼育方法は?
エサはニンジンやパセリの葉
もし飼育する場合は、先述した通り、キアゲハの幼虫はニンジンやパセリの葉が好物なので、それらを与えるのがベスト。とはいえ、小さな青虫のためだけに、いちいちスーパーでニンジンやらパセリやらを買ってくるのは手間がいりますよね。ましてや、スーパーで販売されている野菜のほとんどが消毒済のため「与えた瞬間、キアゲハの幼虫が命を落としてしまった」なんてことも起きかねません。
餌を水耕栽培してみよう
そこで、キアゲハのエサにおすすめなのが、自宅でニンジンなどのセリ科の植物を無農薬で水耕栽培することです。野菜の水耕栽培は簡単なので、小さな子どもでも楽しめますよ。育てたニンジンの葉は青虫に、根は食卓に。きっとお子さんも楽しみながら自然の大切さを学ぶことでしょう。
サナギになったら動かない
キアゲハの幼虫がまるまると太り、じっとしていたり、あまり動かない状態になったら、それはもうすぐサナギになるサイン。動かないからといって、けして死んでしまったわけではありません。動かない状態から約2〜3日ほどでサナギになるので、あまりちょっかいを出さずに、そっとしてあげましょう。そしてサナギになったら何もせず温かく見守ってあげましょう。
飼育する場合は「たまご」からがおすすめ
なお、幼虫を捕獲して飼育している場合だと、サナギになった途端に、コバエなどの寄生虫が湧き出して死んでしまうケースもありますので、そこは気をつけたいところですね。ちなみに、芋虫に寄生するコバエは、青虫の段階から湧いてくるケースが多々ありますので、キアゲハを飼育するときは、できるだけ「たまご」の状態から飼育することをおすすめします。
成虫になったら自然へかえそう
キアゲハが成虫になったら外へ出し、自然へかえすのが「自然界へのマナー」といえるでしょう。しかし、長らく昆虫を飼育していると、誰しもが「誰かに捕まってしまうかも……」「他の虫や鳥に食べられてしまったら嫌だ!」と心配になるはずです。
旅立ちは優しく見守ろう!
ですが、野生のアゲハチョウは皆、天敵から身を守ったりして、強く生き残っていくのが本来の姿。つまり、他の虫に捕獲されてしまったとしても、それはそれで、そのチョウの運命なのです。確かに、名残惜しかったり寂しい気持ちもあるかも知れませんが、自然界でもたくましく生き残っていくことを信じて、彼らの「旅立ち」を優しく見守りましょう。
キアゲハの幼虫は「ほうじ茶の味」?
キアゲハを飼育していて、その可愛さのあまり「外になんか出すもんか!」と悶々としている人は、いっそのこと「自分で食べる」という手もあります。あまりおすすめはしませんが、キアゲハの幼虫は火を通せば食べられます。
ほうじ茶のような味がする模様
実際にキアゲハの幼虫を食べた人によれば「ほうじ茶」のような味がするそうです。確かに、イナゴやエスカルゴが食べられるのだから、青虫も食べられないことはないですよね。とはいえ、よほどキアゲハに愛のある人でないと、茹でて食べる行為は苦行に近いといえますね。
キアゲハの幼虫の駆除方法と注意点は?
前章では、キアゲハの「育て方」をご紹介しましたが、この章では「駆除」の方法についてまとめていきます。キアゲハを育てるのではなく「目の前から消し去りたい!」とお思いの人は、ぜひこの章を通してキアゲハの駆除方法を学んでいただければ幸いです。
防虫ネットをかぶせよう
キアゲハの幼虫による被害を防ぐには、防虫ネットなどのアミをかぶせるとよいでしょう。アミをかぶせるときの注意点は、野菜の葉が大きくならないうちにかぶせること。というのも、野菜の葉が大きく育っていると、キアゲハなどの芋虫や、他の虫に食い荒らされる危険性があるからです。
張るタイミングは「野菜がこれから大きくなる」とき
よって、防虫ネットはあくまでも「これから大きくなる野菜向け」の対策であり、すでに大きく育ってしまった野菜に対しての効果はいまいちですね。ですが、何もしないよりは、飛んでくる虫の被害を最小限に抑えられますので、試してみる価値はあります。
おすすめの殺虫剤の使い方と注意点
「べニカXスプレー」シリーズ
そこで、芋虫などの虫退治におすすめなのが「殺虫スプレー」です。しぶといコバエやキアゲハなどの幼虫にも効果を発揮する「アースガーデンT(葉を食べる虫退治)」や「ベニカXスプレー」などが有名ですね。説明書通りに使用すれば特に問題はありませんが、注意点として、あまり葉に近づけないように吹きかけて下さい。
虫が怖くて触れない場合などはオルトランDX
葉に液体が大量にかかると、最悪の場合は枯れてしまいますので、虫を箸などでつまんで、いったん別の場所に隔離してから吹きかけるのが好ましいですね。「怖くて虫なんて触れない!」という人は「オルトランDX」などの粒剤を地面に撒くとよいでしょう。
まとめ
キアゲハは美しく、趣のあるアゲハチョウですが、幼虫の姿は毒々しい!と感じる人が多いかも知れませんね。ですが、食欲旺盛で、美味しそうにニンジンの葉をむさぼる幼虫を観察すると、意外と愛着が湧いたりするものですよ。キアゲハの飼育は子どもの自由研究にもおすすめなので、ニンジンを育てている人は、お子さんと一緒に、卵から育ててみると面白いのでは?