食用菊「もってのほか」とは
食べるために栽培された菊は食用菊と呼ばれます。「もってのほか」は食用菊の一種で、美しい薄紫色の花びらのみを食べる大輪型の種類です。正式名は「延命楽(えんめいらく)」、地域によっては「もって菊」とも呼ばれ調理用の菊、秋の味覚として定着している食材です。
旬の季節
もってのほかの旬の季節は、10月中旬~11月中旬ごろです。おもに山形県など東北の地域で栽培されています。もってのほかは独特の風味や味のよさだけでなく、淡い紫の花弁が美しいため「食用菊の王様」「横綱」と称され、人気の高級食用菊として出回ります。
ユニークな名前の由来
もってのほかというユニークな名前は、一軒の農家で菊びたしを食べた殿様が「百姓にはもってのほか(もったいない)である」といったという言い伝えに由来します。そのほか「天皇のご紋である菊を食べるなどもってのほか」「もってのほかおいしい」など諸説あります。
もってのほかの特徴
もってのほかは花弁の形が特徴的です。通常の食用菊はヘラのように平らな形状をしていますが、もってのほかの花弁は筒状に丸まっています。この形状のおかげで調理しても形が崩れにくく、シャキシャキとした歯ざわりが楽しめます。
もってのほか以外の食用菊
もってのほか以外では、青森に阿房宮(あぼうきゅう)という食用菊があります。阿房宮は八重咲で、黄色の小輪種です。小輪種の食用菊は、おもに生の状態で刺身などの料理に添えるつま飾りとして使われます。
食用菊のおいしい食べ方5選
食べ方①おひたし
材料(1パック分)
- もってのほか:1パック
- 湯:適量
- 酢:大さじ1
- しょうゆや酢じょうゆ:適量
作り方
- 花びらのみをちぎり取る(中央の黄色い部分は苦味があるので取り除く)
- 鍋にお湯を沸かし酢を入れる
- 湯が沸騰したらもってのほかの花びらをいれ、箸で混ぜながらしんなりするまでゆでる
- 花びらを冷水にとる
- 水気をしぼって保存容器などにいれる(このまま冷凍保存も可能)
- 食べる直前にしょうゆや酢じょうゆであえる
食べ方②ゴマみそあえ
材料(2~3人分)
- もってのほか:1パック
- 湯:適量
- 酢:大さじ1
<ゴマみそだれ>
- みそ:大さじ3
- しょうゆ:小さじ2
- ゴマ:大さじ1
- 砂糖:大さじ1
- 酢:小さじ2
<トッピング>
- すりゴマ:適量
作り方
- 前述のおひたしと同様にもってのほかをゆでて、水気をしぼる
- ボウルにゴマみそだれの材料をすべていれ、よくまぜる
- 食べる直前にもってのほかとゴマみそだれをあえる
- 好みですった煎りゴマをかけて食べる
食べ方③もってのほかのジャム
材料(ガラス瓶1つ分)
- もってのほか:100g
- グラニュー糖:50g
- レモン汁:大さじ1
- 水:100mL
作り方
- もってのほかの花びらをがくから外し、水洗いする
- 鍋に湯をわかし、もってのほかをいれ、10秒ほど湯通しする
- 冷水にとって、ザルにあげて水気をきる
- 鍋にもってのほかと砂糖と水をいれ弱火にかける
- 焦げないように混ぜながら20分ほど煮たらレモン汁を加える
- とろみがついたら火をとめて、消毒した瓶に詰める
食べ方④食用菊の天ぷら
材料(2人分)
- 食用菊:10輪
- 天ぷら粉(衣用):50g
- 冷水:75mL
- 天ぷら粉(下ごしらえ用):適量
- サラダ油:適量
作り方
- 水をはったボウルに食用菊を浸して洗い、ザルに上げて水気を取り除く
- 天ぷら粉に冷水を加え、軽くまぜる
- 下ごしらえ用の薄力粉をボウルに入れ、食用菊全体にまぶす
- サラダ油を約170℃に熱する
- 食用菊に天ぷら衣をつけて、ガクの方から油に落とす
- 30秒ほどで上下をかえし、再びガクをしたに向ける
- 全体がカラリと揚がれば、キッチンペーパーにとって余分な油をきる
食べ方⑤料理の彩りとして
もってのほかの薄紫色の花びらは、さっと湯通しすると美しい紅紫色に変わります。下ゆでしたもってのほかを、ちらし寿司やまき寿司の彩りにするのもおすすめの使い方です。そのほかみそ汁や吸い物の具やサラダの彩りなど、さまざまなレシピに応用してみましょう。
もってのほかの栄養成分
もってのほかは、おもにビタミン類が豊富で、なかでも皮膚や粘膜を丈夫にするビタミンB2が多く含まれます。もってのほかには体内にある解毒物質「グルタチオン」の生成を高める効果が認められています。刺身のつまとして利用するのはこの解毒作用を期待してでしょう。
食用菊の選び方
新鮮な食用菊の選び方
- 花びらの先までシャキッとしているもの
- 新鮮で花びらの色がきれいなもの
- 花びらがきれいな筒状に丸まっているもの
食用菊の保存方法
食用菊は、傷みやすくあまり日持ちしない食材です。食べきれない場合は、下茹でした状態でラップに薄く広げて包み、さらに保存袋に入れて冷凍しましょう。冷凍後もなるべく早く食べることをおすすめします。
まとめ
もってのほかは、おいしくて色美しい日本を代表するエディブルフラワー(食べられる花)です。和菓子やスイーツなどの彩りにも使われるなど人気があります。さわやかな苦みと美しい色がほかの食材に映える、もってのほかのレシピを試してみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC