ホタルガとは?
ホタルガ(蛍蛾)はチョウ目マダラガ科に属する蛾です。成虫は大きさ25~30mmで、羽を広げると45~60mmになります。蛾にはめずらしく昼行性で、日中に活動します。夜は外灯などに寄ってくる性質もあります。その見た目や、チョウのようにひらひらと飛ぶ様子が個性的な蛾です。
ボタニ子
ホタルガの見た目を「かわいい」「おしゃれ」という人もいれば、「気持ち悪い」「苦手」っていう人もいるみたい。
へえ~。とにかく見た目のインパクト大ってことだね!
ボタニ子
そんなホタルガについて、これから詳しく見ていきましょう。
ホタルガの名前の由来
ホタルガはその名の通り「ホタル蛾」で、「ホタルのような蛾」という意味です。これはその配色に由来しています。黒い羽と赤い頭をしたホタルガは、たしかにホタルの配色と同じですね。ところで、みなさんはホタルを触ったことがありますか?ホタルは、刺激を与えると嫌なにおいを出します。においを出すことで外敵から身を守っているのです。実はホタルガも同じ特性をもっています。このことから、ホタルガはホタルを擬態しているのではないかといわれています。
ホタルガとホタルのように、同じ毒性や危険性をもつ生物が似たような外見をしていることがあります。擬態することで危険だと認識されるため、天敵に捕まりにくいという効果があります。
ホタルガの分布
ホタルガは日本全国に分布し、海外は朝鮮半島でも確認されています。生息場所はおもに平地で、マンションや住宅地に大量発生することもめずらしくありません。
ホタルガの発生時期
ホタルガの発生時期は年2回あります。幼虫は4~6月と8~9月、成虫は6~7月と8~9月です。さらに9月末頃、成虫が葉に産卵したあとは幼虫の形態で越冬します。
ホタルガとシロシタホタルガ
ホタルガとよく似た種類の蛾に、シロシタホタルガがいます。上の写真が成虫の姿ですが、本当にそっくりですよね。シロシタホタルガの「シロシタ」とは、後翅(4枚ある羽のうち、後ろの1対)が白いことに由来します。ホタルガの後翅は黒いので、まずこの点が違います。また、羽を閉じたときにできる白線の形も違います。ホタルガはV字、シロシタホタルガは直線です。さらに、この白線の位置が少し高いのがシロシタホタルガです。
ホタルガとシロシタホタルガの見分け方
後翅の色 | 白線の形 | 白線の位置 | |
ホタルガ | 黒い | V字 | 下部寄り |
シロシタホタルガ | 白い | 直線 | 中央寄り |
この写真はシロシタホタルガの幼虫です。次項にホタルガの幼虫を載せていますが、こちらはあまり似ていませんね。幼虫のえさとなるのは、ハイノキ科のサワフタギやクロミノニシゴリです。
ホタルガに毒はある?
蛾には、有名なドクガやチャドクガのように毒のある種類も多いですが、ホタルガに毒はあるのでしょうか。ここからはホタルガの毒について解説します。
幼虫に毒がある
写真はホタルガの幼虫です。黄色い体に黒い帯のようなラインが入っていて、成虫に劣らず印象的な外見ですね。ホタルガの成虫に毒はありません。しかしこの幼虫には毒があります。幼虫はいわゆる毛虫ですが、チャドクガやイラガのように毛に毒をもっているのではなく、体液に毒をもちます。触れたりして刺激を与えると臭い体液を出します。それが肌にふれると、約10時間後にその部位が赤くなりかゆみが出ます。症状は2日ほど続きます。
ホタルガの幼虫は体液に毒があります。むやみに触らないように気をつけましょう。
幼虫のえさはサカキやヒサカキ
ホタルガの幼虫は、ツバキ科のサカキやヒサカキ、ニシキギ科のマサキなどをえさとしています。成虫はこれらの葉に卵を産みつけます。次々に生まれる幼虫は食欲旺盛で、植え込みのサカキなどをすっかり食べ尽くしてしまうこともあります。サカキやヒサカキを植えているお宅は、葉の裏まで注意深く観察しましょう。そこでもしホタルガの幼虫を発見したら、すぐに駆除することが大切です。
ホタルガの成虫の駆除方法
成虫に毒はなく、直接害を与えるものではありません。しかし、成虫も嫌なにおいを出します。また、大量発生して壁にとまっていたり、夜間に灯りへ寄ってくる光景に嫌悪感を抱くこともあるでしょう。このようなときは、蛾に効果のある殺虫剤を使うことがおすすめです。
ボタニ子
ちょっとかわいそうな気もするけど、近くに卵を産んだら困るよね。
たしかに。それに、蛾のアレルギーを持っている人もいるしね。
ホタルガの幼虫の駆除方法
ここからは幼虫の駆除方法について解説します。ホタルガの幼虫は、サカキやヒサカキなどの植物にとって大きな脅威となります。深刻なダメージを受ける前にしっかり駆除しましょう。また、駆除するときの注意点も合わせて確認していきます。
駆除のときに気をつけたいこと
マスクや手袋をつけて作業する
はじめに注意することは、駆除するときの格好です。幼虫の体液や薬剤が体につかないよう、マスクやゴーグル、手袋をつけて作業します。また服装は、長袖と長ズボンで行うのが望ましいでしょう。
なるべく早い時期に駆除する
次に気をつけたいのが駆除する時期です。幼虫は、大きくなると薬剤が効きにくくなります。なるべく早期に発見し、幼虫が育つ前に手を打つのが理想的です。幼虫の発生時期は4~6月と8~9月の2回あるので、その時期が来たら早めに植栽をチェックしましょう。
幼虫の駆除その①殺虫スプレー
幼虫の数が少なく範囲も狭いときは、毛虫用の殺虫スプレーを使うのが最も便利で効果的です。樹木用のものを選びましょう。こちらの殺虫スプレーは、一度使用すると効果が2週間続くという特徴もあります。
幼虫の駆除その②液体殺虫剤
被害が広範囲にわたっているときは、液体殺虫剤を薄めて散布するのがおすすめです。こちらは毛虫に特化したタイプで、400~800倍に希釈したものを噴霧器などで散布します。噴霧器を持っていない場合は、100円ショップやホームセンターで売っているスプレー容器でも代用できます。また農薬ですので、取扱いには十分注意してください。身体を保護する服装で、注意書きをよく読んでから使いましょう。
ホタルガの予防対策
ここまでは、発生してしまったホタルガの駆除方法についてお伝えしてきましたが、そもそもホタルガを寄せつけないことが理想的ですよね。ここからは、その予防対策について解説します。
予防対策その①浸透性の殺虫剤
幼虫の発生時期より前に使うことで効果を発揮します。1000倍に薄めたものを植物の根元や葉に散布すると、成分が浸透して害虫の発生を予防します。毎年大量発生して困っている、という場合にはぜひ試してみてください。
予防対策その②木酢液
予防として薬剤を使うのは抵抗がある、という人には木酢液をおすすめします。におい取りや入浴剤としても人気のある木酢液ですが、園芸にも大きな効果があります。規定量の水で薄めて葉や土にまくと、植物の育成を促進すると同時に害虫予防も期待できます。持続性はないので、2週間に1回ほど散布しておくとよいでしょう。薬剤ほどの効果は望めないかもしれませんが、マイナス面が特にないので試す価値はあります。
まとめ
その特異な外見で注目を集めているホタルガには、天敵から身を守るためのさまざまな知恵が隠されていることが分かりました。その姿に好意をもっている人も少なくありません。しかし、大量発生して植え込みの葉を食べ尽くしたり、人にも影響のある毒を持っていたりと迷惑な害虫でもあります。特に毒をもつ幼虫に対しては早期発見を心がけ、駆除をしっかり行いましょう。
出典:写真AC