天敵(てんてき)とは?農業場面における意味など具体例をあげてご紹介!

天敵(てんてき)とは?農業場面における意味など具体例をあげてご紹介!

天敵という言葉はいろいろな場面で使われる言葉ですが、農業の場面での天敵は「害虫」と呼ばれる虫が多いです。しかも作物の成長を助ける有益な虫も、農業では天敵と呼ぶことがあります。この記事では、農業における天敵の意味や天敵を駆除する農薬を紹介します。

記事の目次

  1. 1.天敵とは?
  2. 2.農業で天敵とされる主な害虫
  3. 3.害虫の天敵とうまく付きあう方法
  4. 4.作物の天敵を農薬で駆除する方法
  5. 5.まとめ

天敵とは?

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日常会話で使われている「天敵」という言葉には、一般的に「状況を悪いほうへ追い込む要因」といったイメージがありますね。たとえば「冬の乾燥はお肌の天敵」「A部長はB課長の天敵」といった表現をよく耳にすることでしょう。それでは、農業の世界で「天敵」という場合、具体的にはどのようなものを指すのでしょうか。

「天敵」の本来の意味

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天敵とは本来、「生物の生死にかかわる危険な存在」のことを意味します。特に農業分野では、主に害虫のことを指しているのです。また害虫を捕食する益虫も、害虫にとっては天敵として表現されます。つまり、ふだん会話で使っている天敵のイメージに比べて、農業分野における天敵は生死に関わるよりシビアな存在なのです。

農業で天敵とされる主な害虫

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一般的に農業の天敵は「作物に直接被害を与える虫(害虫)」を意味します。農業の天敵は作物の種類と同じかそれ以上の数があるといわれていますが、代表的な天敵は以下のとおりです。

天敵①アブラムシ

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アブラムシは日本だけでも約700種類以上ありますが、その多くが作物の葉や茎を食べるため農業では天敵とされます。アブラムシはてんとう虫のエサなので、双方の数にバランスがとれていれば食害にはなりません。ただしアブラムシが大量発生するとてんとう虫が駆除しきれなくなり、作物への食害がおこります。

てんとう虫を使ったアブラムシの駆除方法

アブラムシの駆除には、天敵であるてんとう虫を活用する方法がおすすめです。てんとう虫は作物の害虫であるアブラムシを捕食しますが、作物の葉や茎を食べることはありません。さらにてんとう虫の体内には野鳥が嫌うアルカロイド成分を含むため、てんとう虫をアブラムシの駆除に使うと野鳥対策にもなります。

天敵②てんとう虫だまし

てんとう虫だましは、見た目は益虫といわれるてんとう虫に似ています。ところが野菜の葉っぱを片っ端から食い荒らすため、農業では作物や生産者にとっての天敵です。てんとう虫だましの好物はナス、トマト、キュウリ、ピーマンなどナス科やウリ科の葉で、大量発生すると収穫量にも甚大な被害がでます。

てんとう虫だましには天敵がいない

てんとう虫だましは、駆除してくれる益虫がいません。草食系のてんとう虫だましには、肉食系のてんとう虫が保有するアルカロイド成分がないのですが、見た目がてんとう虫にそっくりなので野鳥も食べません。そのためてんとう虫だましには天敵がいないのです。

天敵③カイガラムシ

カイガラムシはカメムシ目カイガラムシ科の虫で、作物の葉や茎を食べることはしませんが、作物の液を吸引します。そのためカイガラムシが寄生した作物は、栄養不足に陥り枯れてしまいます。さらにカイガラムシの排泄物はすす病や膏薬病の発生原因なので、作物にとっては非常に恐ろしい天敵です。

カイガラムシの駆除方法

カイガラムシの駆除には、てんとう虫と蜂を使う方法があります。てんとう虫はカイガラムシの卵や幼虫を食べ、寄生バチはカイガラムシの成虫に卵を産み付けるため孵化した幼虫がカイガラムシを食べるのです。ただしカイガラムシを食べるてんとう虫や蜂は種類が限定されているうえに、捕食されるカイガラムシも限定されます。

天敵による駆除が可能なカイガラムシ

基本的に天敵をもたないカイガラムシでは、捕食されるカイガラムシも捕食者である虫も種類が限定されます。幼虫や卵が捕食されるのはイセリアカイガラムシで、捕食者はべダリアテントウムシです。なお成虫が捕食対象となるのはヤノネカイガラムシで、捕食者はヤノネキイロコバチとヤノネツヤコバチの2種類です。

天敵④ハイイロテントウ

ハイイロテントウは外来種で、外来植物のギンネムが大量繁殖すると発生します。ハイイロテントウはギンネムに寄生するギンネムキジラミをエサにしますが、ギンネムは繁殖力がすさまじいため、大量繁殖すると在来植物を枯らしてしまいます。そのため農業分野では、ギンネムの大量繁殖を意味するハイイロテントウは害虫です。

天敵⑤ハエ(ハモグリバエ)

ハエは不衛生な場所を好む習性があるため衛生害虫です。さらにハエの仲間であるハモグリバエの幼虫は、畑の野菜を食べるため作物・生産者の天敵です。ハモグリバエの幼虫はインゲンやエンドウマメなどマメ科の葉が好物で、大量に発生し食害が広がると野菜の生育が悪くなります。

ハモグリバエの駆除方法

ハモグリバエは、ヒメコバチで駆除ができます。ヒメコバチはハモグリバエの幼虫が大好物なので、ハモグリバエが発生した作物の近くにヒメコバチの巣を置くと駆除してくれます。ただしヒメコバチは農薬の影響を受けやすく、ハモグリバエ用の農薬を使うとヒメコバチも駆除されるため注意してください。

天敵⑥カメムシ

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カメムシは農業の天敵の中でも最強クラスの害虫で、ナスやピーマンなどのナス科野菜をはじめエダマメ、稲、果物などさまざまな種類の作物が食害の対象です。しかも畑と水田・果樹園では寄生するカメムシの種類が違います。さらにカメムシは強烈なにおいがあり虫や鳥が好んで捕食しないため、天敵はほぼいません。

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害虫の天敵とうまく付きあう方法

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