コガネムシとは
コガネムシは夏になるとよく見かける昆虫です。漢字では「黄金虫」と書き、その名のとおり成虫は金属的な光沢のある体をしています。カブトムシに近い種類ですがコガネムシのほうが小さく、幼虫の体長は2~3cm、成虫の体長が2cmほどです。幼虫は夏から翌年の春まで土のなかで過ごし、さなぎの時期を経て初夏に成虫になります。
害虫としてのコガネムシ
一見無害なようにも見えますが、コガネムシは幼虫、成虫ともに草花や野菜を食べる害虫です。幼虫のあいだは根を食べ、成虫になると葉をかじって植物を弱らせてしまいます。屋外で管理している鉢植えやプランターにも発生しますが、おもに地植えで育てているバラやオリーブ、また無農薬で栽培している野菜などが被害にあうケースが多くみられます。
コガネムシの幼虫による被害
コガネムシは成虫より幼虫による被害のほうがより深刻です。植物にとって非常に重要な根を食べられてしまううえ、土のなかにいるので発見しづらいことが理由です。このため被害が大きくなりやすく、気付いた時には手遅れということも少なくありません。大切な植物をコガネムシの幼虫から守るためにしっかりと対策をしましょう。
コガネムシの幼虫駆除
コガネムシの幼虫が発生したらなるべく早く駆除しましょう。対策が遅れれば遅れるほど被害が大きくなってしまいます。駆除の方法は大きくわけて、薬剤を使った殺虫と実際に捕まえて退治する方法の2種類です。被害の大きさや対象となる植物の種類、栽培の目的などに応じて適切な方法を選びましょう。
幼虫駆除①薬剤
地植えで広範囲に被害がみられる場合や畑の野菜に対しては、薬剤による殺虫が効率的です。薬剤の使用に抵抗がなければおすすめの方法です。薬剤にはそれぞれ対象となる植物や用法、用量が細かく定められています。間違った使い方をすると人体にも影響する恐れがありますので、特に食用目的の植物に使用する場合は注意してください。
オルトランDX粒剤
オルトランはさまざまな害虫に対して効果があり、殺虫効果が長続きするためポピュラーな薬剤です。オルトランには液剤や粒剤などいくつかの種類がありますが、一般的にコガネムシの幼虫駆除にはオルトランDX粒剤を使います。対象となる植物の種類には制限があり、おもに鉢植えや地植えのバラに対して有効です。
ダイアジノン粒剤
ダイアジノンは効果の持続性が高く、おもに野菜に対して使われる薬剤です。ダイアジノンにも用途によっていくつか種類がありますが、手軽に使えて効果の高い粒剤がおすすめです。
薬剤の使い方
オルトランDX粒剤やダイアジノン粒剤は、定められた量の薬剤をそのまま土の上に撒くか、土に混ぜ込むだけで使えます。幼虫が直接薬剤を食べるか、水やりのたびに土のなかに殺虫成分が浸透することで効果を発揮します。
薬剤の使用上の注意
- 薬剤の使用は用法、用量を正しく守るとともに、小さなお子様やペットのいるご家庭では保管にも細心の注意を払いましょう。
幼虫駆除②捕獲
土を耕す際などに見つけたコガネムシの幼虫はその場で退治しましょう。土のなかにいるすべての幼虫を駆除するのは難しいですが、薬剤を使わず安全、確実に殺虫できる方法です。捕まえた幼虫はすぐに退治してください。一か所に集めておくと、素早く土に潜って逃げてしまいます。
幼虫駆除③土の交換
鉢植えやプランターに被害が発生した場合は、土をまるごと交換するのが手っ取り早くて確実な方法です。このとき屋外で保管していた堆肥や培養土を使うと、すでに卵や幼虫が含まれていることがあるので注意しましょう。
コガネムシの幼虫予防
日ごろから予防しておくことも重要な対策です。ここでご紹介する方法のうち薬剤と熱湯消毒以外の方法は、すでに発生しているコガネムシの幼虫には効果がありません。しかし被害が発生する前や一度駆除したあとに行っておくことで、寄ってくるコガネムシをかなり防ぐことができるでしょう。
幼虫予防①薬剤
駆除の項目でご紹介したオルトランやダイアジノンをあらかじめ土に混ぜ込んでおくと、高い予防効果を期待できます。地植えや畑など栽培面積が広い場合におすすめです。コガネムシの幼虫以外にケラやネキリムシなども殺虫してくれます。
幼虫予防②熱湯消毒
古い培養土をリサイクルする場合などは、熱湯をかけて消毒する方法もあります。無農薬で確実に殺虫し、カビなども退治してくれます。大量の土には行えないということと、やや手間がかかるのが難点です。
幼虫予防③木酢液
木酢液(もくさくえき)とは木炭を作る際に出る煙や水蒸気を冷やしてできる液体です。木酢液は市販されているので、指定の倍率に希釈して葉や土に散布することでコガネムシが寄りつくのを防ぎます。土壌の改良や植物の活性化の効果もありますが、においが強いので注意しましょう。
幼虫予防④コンパニオンプランツ
コンパニオンプランツとは一緒に植えることで互いによい影響をおよぼす植物のことです。コガネムシが嫌がる植物を一緒に植えることで被害の予防効果が期待できます。ニンニク、水仙、キャットニップ、チャイブ、ルー、マリーゴールドなどが代表的な例です。
幼虫予防⑥土の表面を覆う
植物の根元の土を覆ってしまうことで、コガネムシの成虫が産卵するのをあらかじめ防ぐ方法です。よく使われるのは不織布で、コガネムシ対策専用のものも販売されています。不織布のほかにはバークチップやヤシガラを土の上に敷きつめるのも効果的です。いずれも物理的にコガネムシを防ぎつつ、そのまま水やりをすることができます。
コガネムシの好む植物
コガネムシの幼虫はとても多くの種類の植物を食べます。そのなかでも特に下の表の植物には注意が必要です。
野菜 | ダイズ、インゲンマメ、サツマイモ、落花生 |
草花・花木 | バラ、ボタン、ラベンダー |
庭木・果樹 | オリーブ、クリ、ブドウ、カキ、ヤナギ、アカシア |
コガネムシの幼虫の発生時期
コガネムシは夏に産卵し1~2週間で幼虫になるので、この時期の予防が効果的です。しかし一度卵を産みつけられてしまうと、ほぼ一年中被害にあう危険があります。特に春と秋は幼虫の活動が活発になり、被害が大きくなりやすい時期です。通常は約1年で成虫になりますが、寒い地域では2年かけて成虫になる場合もあるようです。
コガネムシの幼虫の見つけ方
どんなに駆除や予防をしてもいつの間にかコガネムシの幼虫の被害をうけてしまうことはあります。被害の拡大を防ぐにはなるべく早く見つけることが大切です。コガネムシの幼虫は土のなかにいるので見つけるのは簡単ではありませんが、いくつかポイントをご紹介します。
水やり時にチェック
水やりは植物の状態をチェックする絶好のタイミングです。ちゃんと水やりをしているのに葉がしおれていたり、土がぶかぶかとやわらかくなっていたりするときは、土のなかでコガネムシの幼虫が悪さをしている疑いがあります。また葉が虫に食われているのを見つけたら、すでに成虫が産卵している可能性があります。
雑草の様子にも注意
栽培している植物だけでなく、雑草の様子もよく観察しましょう。除草剤などを使っていないのに急に枯れたり元気がなくなったりしている場合は注意が必要です。根をコガネムシの幼虫にかじられたのかもしれません。掘り起こして根や土をよく調べてみるといいでしょう。
植えつけの際はよく耕す
植えつけや植え替えの際は、よく耕して土の状態を確認しましょう。もし一匹でも発見したら、ほかにもたくさんいる可能性が高いと言えます。一匹ずつ捕まえて退治するか、薬剤を使うなどの対策を行いましょう。また屋外に保管していた堆肥や培養土を使う場合は、そちらも確認することをおすすめします。
まとめ
コガネムシは身近な昆虫であるだけに、害虫としてはとても厄介な存在です。特に幼虫に関しては絶対といえる対策がなく、ガーデニング愛好家や農家の人にとって大きな悩みの種でしょう。大切な植物を守るためには、予防と駆除を地道に繰り返すしかなさそうです。自分の栽培スタイルにあう対策法を工夫してみてください。