単肥の種類②カリ成分
カリ成分単肥の特長
カリ成分は元素でいうと「カリウム」をさし、「加里」とも表記される3要素のひとつです。鉱石やかん水を濃縮したり結晶化したりすることで化学肥料として生産されています。カリウムは植物の身体を直接構成する成分にはなりませんが、栄養素を全身に巡らせることや呼吸をするための気孔の開閉に不可欠な成分です。
カリ成分単肥の種類
カリ単肥①塩カリ
塩化カリは鉱石から削り出して精製しており、化学肥料のなかで最もカリウム成分割合が高いです。価格面で安い鉱石由来のものと高価な海水由来のものがあり、海水由来の塩カリは有機栽培でも使用が可能です。水に溶けやすい肥料のため、元肥としての使い方だけでなく地面の上からまく追肥にもなります。
カリ単肥②硫酸カリ
硫酸カリは塩カリを加工して精製された化学肥料です。水に溶けやすく塩素を出さないためイモ類などの肥料として適しています。また、土壌に肥料成分が蓄積して連作障害の要因となる塩類集積が塩カリに比べておきにくいのも特徴です。ただし、硫酸加里の硫酸イオンが土壌を酸性にするため、pHには注意してください、
カリ単肥③重炭酸加里
重炭酸カリウムは硫酸加里より水に溶けやすく速効性のカリ肥料です。肥料の化学的性質がアルカリ性であり、散布後に炭酸ガスが発生する特徴があります。このため、塩害の要因になりにくく、かつ、炭酸ガスによる野菜成育促進効果も期待できるため、温室やビニールハウスでおすすめの肥料です。
カリ成分単肥の上手な使い方
下葉の枯れはカリウム欠乏の合図
トマトやキュウリなどの果菜類は、実をつける過程で体内のカリウムが減少するため、欠乏症が発生しやすいです。カリウムが欠乏すると下葉の葉先から枯れていきますが、窒素欠乏と異なり葉色全体が薄くならないのが特徴です。追肥は葉面散布でも充分な効果が見込めるため、単肥を水に溶かして散布しましょう。
場所や作物で使い分ける
カリ単肥の選び方は、野菜の特性を考えることが大切です。サツマイモなどの根菜類は硫酸加里、キャベツやニンジンなどは塩素を好むため塩加里を施用するのが適しています。一方で、硫酸加里は土壌pHを酸性に傾けることから、ホウレン草など酸性に弱い野菜には使用を避けましょう。温室やビニールハウスでの野菜栽培には、炭酸ガス効果が期待できる重炭酸加里がおすすめです。
堆肥を投入している場合は施用量を調整
硫酸加里や塩加里は土壌中の塩類集積がすすむため、供給過剰には注意が必要です。家畜の堆肥を元肥に使っている場合はカリ単肥を減らすのがおすすめです。家畜の堆肥にはカリウム成分が含まれており肥料成分の代わりになるため、牛糞1tであれば4.8kg、豚糞1tであれば6.8kgのカリウム単肥と置きかえられます。
紹介した商品比較表
商品 | |||
---|---|---|---|
商品名 | 塩化カリ | 硫酸カリ | 重炭酸加里 |
価格 | 4,000円 | 4,980円 | 5,148円 |
肥料の原料 | 塩化カリウム | 硫酸カルシウム | 重炭酸カリウム |
肥料の種類 | 化学肥料(一部有機肥料) | 化学肥料 | 化学肥料 |
成分kgあたり単価 | 333円 | 498円 | 2,238円 |
効果の早さ | はやい | はやい | とてもはやい |
土壌pHへの影響 | 弱酸性 | 酸性 | 弱アルカリ性 |
カリ成分 | 60% | 50% | 46% |
商品リンク |
単肥の種類③リン酸成分
リン酸成分単肥の特徴
リン酸成分の単肥は、実肥ともよばれ窒素とカリに並ぶ三要素の肥料です。リン鉱石や動物の糞から精製され、水に溶けやすいものと溶けにくい種類があります。リン酸成分は施用しても土壌の性質によっては、土壌アルミニウムとくっついてしまい植物に供給されないことがあるため、散布場所には注意しましょう。
リン酸成分単肥の種類
リン酸単肥①過リン酸石灰
過リン酸石灰は、リン酸肥料のなかでも広く使われている即効性の化学肥料です。成分が中性で水溶性であるため、土壌表面へ散布しても根に供給することが可能です。また過リン酸石灰はリン鉱石を原料に精製されますが、製法の違いにより肥料成分割合が高く単価の安い重過リン酸石灰もできます。
粒状過リン酸石灰
過リン酸石灰
参考価格: 2,980円
リン酸成分 | 17.5% |
---|---|
肥料の原料 | 第一リン酸カルシウムと硫酸カルシウム |
肥料の種類 | 化学肥料 |
成分kgあたり単価 | 851円 |
効果の早さ | はやい |
土壌pHへの影響 | 中性 |
ボタニ子
施用量が少ないと散布ムラが発生しやすいから、少ないときは過リン酸石灰、多いときは重過リン酸石灰を選ぶとよいね。
リン酸単肥②ようりん
ようりんは厳密にいうと、ケイ酸やマグネシウムなどほかの成分を含むため単肥ではありませんが、リン酸成分を高める場合に多用されるため紹介します。この肥料は2つの鉱石を熱加工処理することで製造されており、水に溶けにくい「く溶性リン酸」を含み、土壌をアルカリ性に傾ける特徴があります。施用されたリン酸を奪いやすい黒ボク土の元肥として最適です。
リン酸単肥③リン酸グアノ
リンサングアノは海鳥やこうもりなどの糞が長い時間をかけて堆積し化石になったものを加工した肥料です。リン酸以外の成分として、有機物由来の腐食酸を多く含んでおり、肥料を保持する力を高める効果があります。リンサングアノのリン酸はようりん同様にく溶性のため、効き目がゆっくりで成分が無駄になりにくいです。
リンサングアノ
参考価格: 4,480円
リン酸成分 | 20~27% |
---|---|
肥料の原料 | 動物の糞などが化石化したもの |
肥料の種類 | 有機肥料 |
成分kgあたり単価 | 830円 |
効果の早さ | ゆっくり |
土壌pHへの影響 | アルカリ性 |
リン酸単肥の上手な使い方
小さすぎる葉はリン欠乏の合図
リン酸が足りなくなると、新たに細胞をつくるのが難しくなるため、新しい葉が小さくなります。また、一部の植物では細胞の老化現象によりアントシアニンが生成され、葉が赤紫色になります。このような症状が発生すると、追肥でリン酸を供給する必要がありますが、過リン酸石灰のような水溶性リン酸でないと効果がないため注意が必要です。
火山灰土壌にはく溶性リン酸を散布
リン酸を施用するときに注意する点が、土壌分類に適した肥料選択です。日本で多くみられる火山灰土壌で構成された黒ボク土(黒い水はけのよい土)は、非常にリン酸を奪う力が強く、水溶性リン酸を施用してもほとんど植物に吸収されることはありません。そのため、リン酸を供給する場合は、水稲栽培であれば「ようりん」、野菜栽培であれば「リンサングアノ」を施用してください。
紹介した商品比較表
商品 | |||
---|---|---|---|
商品名 | 過リン酸石灰 | ようりん | リンサングアノ |
価格 | 2,980円 | 2,980円 | 4,480円 |
肥料の原料 | 第一リン酸カルシウムと硫酸カルシウム | リン鉱石と蛇紋石 | 動物の糞などが化石化したもの |
肥料の種類 | 化学肥料 | 有機肥料 | 有機肥料 |
成分kgあたり単価 | 851円 | 745円 | 830円 |
効果の早さ | はやい | ゆっくり | ゆっくり |
土壌pHへの影響 | 中性 | アルカリ性 | アルカリ性 |
リン酸成分 | 17.5% | 17~20% | 20~27% |
商品リンク |
出典:Wikimedia Commons