じゃがいもの栽培⑤収穫
じゃがいもは地中にできるため、栽培過程ではどんな大きさの芋がどのくらいできているか見えません。収穫はドキドキワクワクの瞬間でしょう。春植えのじゃがいもの収穫時期は5月下旬~6月中旬です。梅雨の前に収穫できるのが理想です。しかし品種や地域、その年の気候によっても変わります。収穫の大切なポイントを見ていきましょう。
収穫時期の見極め
じゃがいもの収穫時期の目安は、植え付けから100日経過して、葉の7~8割が黄色くなってきた頃です。完全に枯れてからだでは、大きい芋に「す」が入って空洞化しやすくなります。じゃがいもは土が濡れているときに収穫すると腐りやすいです。晴れた日が2~3日続いて土が乾いた時期をねらって収穫します。試し掘りをして、芋が小さい場合は収穫を遅らせてもよいでしょう。
じゃがいもの掘り方
茎を5cmほど残して切ってから、残った株元を目印にして掘り上げます。離れたところからスコップを入れて、茎を支えながら掘り上げてもよいですし、ある程度手で掘ってもよいです。スコップなどでじゃがいもを傷つけないように注意すること、土の中にじゃがいもを残さないようによく確認することが大切です。
掘り上げたじゃがいもはストロン(ほふく枝)から外します。500円玉より小さい未成熟芋はソラニンなどの有毒物質を多く含むため処分しましょう。掘ったじゃがいもを集めるのは、その場で2~3時間天日干しにした後です。放置し過ぎると乾燥して表面にしわが寄ったり、緑化してソラニンの含有量が増したりするため、注意します。
収穫したじゃがいもの保存
収穫したじゃがいも(馬鈴薯)は、風通しのよい日陰で土が自然に落ちるまで乾かします。すぐに食べるのでなければ水洗いはしません。保存性が落ちるからです。じゃがいもの貯蔵に適した場所は、風通しのよい冷暗所です。蛍光灯の光でも緑化するため遮光し、積み重ねないで保存します。
収穫した芋は種芋にできない
収穫したての新じゃがいもは皮が薄く、水分が多くてしっとりとした味わいです。収穫後に寝かせたじゃがいもは、デンプンが糖質に変化して甘みが増しています。どちらも甲乙つけがたく、それぞれのよさを味わいましょう。ただしウイルス病などの危険があるため、収穫したじゃがいもは次の種芋に使えません。
じゃがいもの栽培⑥応用編
ここまで、じゃがいもの育て方の基本である春植えについて解説してきました。育て方の応用編として、秋植え栽培、マルチ栽培、畑がなくてもできるプランター栽培も可能です。それぞれの育て方について、春植えとは異なるポイントについて簡単にまとめました。
じゃがいもの秋植え栽培
秋植えは春植えより難しい
温暖な地域であれば秋(8月下旬~9月)の植え付けも可能ですが、春植えよりも難しいとされています。理由は、残暑が厳しいと植え付け適期が短いこと、暑さで種芋が腐りやすいこと、寒気が早く来ると芋が大きく育ちにくいことなどです。秋植えに適する品種はデジマ、アンデス赤、さんじゅう丸などが挙げられます。秋植えの育て方は、春と全く同じではありません。
秋植えでは種芋を切らない
秋植えの種芋は小さ過ぎず大き過ぎないものを選ぶのがコツです。秋植えでは種芋が腐りやすいため切らずに使います。それゆえに、種芋が大き過ぎるとたくさん植えられません。そうかといって小さ過ぎると、寒さに耐えられないのです。秋植えの収穫は11月下旬~12月です。霜が降りる前に収穫できるのが理想といえます。
じゃがいものマルチ栽培
じゃがいもではマルチシートを利用したマルチ栽培が行われることもあります。利点は、保温効果によって早植えや早採りが可能になることです。また、遮光効果のあるシートを使えば、雑草を防げるうえにじゃがいもの緑化を防止でき、土寄せの手間が省けます。欠点は、土壌の温度が上がりすぎた場合に種芋が腐ったり、できた芋の保存性が低下したりすることです。
マルチシートを用いた育て方では土寄せをしないため、作付けするときに厚め(8~10cm)の土を被せます。マルチシートを被せるのは作付け後です。画像のように地表に芽が出てきてシートを押し上げてきたら、シートに穴をあけて芽を外に出します。シートがかかっていると元肥の流出が少なく、追肥も必要ありません。他の育て方は春植えに準じます。
じゃがいものプランター栽培
じゃがいもはプランターでの育て方も可能です。プランターは深さ30cm以上、容量20L以上の深型のものを用意し、野菜用培養土を入れます。野菜用培養土ならば土作りやpH調整の手間が不要で、肥料も配合されているため元肥も必要ありません。横幅30~40cmのプランターでは1株、80cmプランターでは30cm間隔で2株を植え付けます。
土寄せは土を足して行う
植え付けの際の土はプランターの深さの1/2~2/3に抑え、残った土は保管しておきます。この土は土寄せの代わりに土を足すときに使うのです。1回目の土寄せの時期には深さの3/4程度まで、2回目の土寄せの時期には鉢の縁から3~4cm下まで土を入れます。土に肥料が含まれていれば追肥は不要です。水やりは土が乾いてから、たっぷりと与えます。
培養土の袋で栽培することも可能
収量は落ちますが、プランターの代わりに野菜用培養土の袋や麻袋を使う育て方もあります。水が抜けない袋の場合は、底に排水用の穴を開けて栽培するのです。その場合もプランター栽培と同様に、植え付けの際に土を半分ほど保管しておき、土寄せの時期に土を足します。野菜用培養土の袋を使えば土を半分取り分けておけばよく、pH調整や元肥や追肥などの手間がかかりません。
まとめ
じゃがいも(馬鈴薯)は、収穫直後も寝かせた後もそれぞれの美味しさがあり、いろいろな家庭料理に活用できます。連作はできませんが、畑はもちろんのことプランターでも栽培でき、初心者でも挑戦しやすい作物です。ぜひご家庭でじゃがいもを栽培して味わってみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC