水管理のやり方は?田んぼの中干しの目的や年間管理についてご紹介!

水管理のやり方は?田んぼの中干しの目的や年間管理についてご紹介!

水管理は米作りの半分を占めるほど大事という意味で「水見半作(みずみはんさく)」といわれます。地域や気候をみながらやり方を工夫しなければいけませんが、水管理の目的や時期ごとのやり方について理解できれば大丈夫です。この記事では、年間の水管理について解説します。

記事の目次

  1. 1.水管理とは
  2. 2.水管理の目的
  3. 3.水管理のやり方
  4. 4.水田への水の引き方
  5. 5.最新の水管理のやり方
  6. 6.水管理のまとめ

水管理とは

水路と田んぼ

出典:写真AC

水管理は米作りに不可欠な水を田んぼに供給する管理手法です。水稲は日本でこそ、身近な作物ですが、大豆や麦・野菜と比較すると、常に水が貯まっている環境でしか栽培できない特徴的な作物です。また、水管理のやり方は、ただ田んぼに水が入れればよいわけではなく、栽培ステージごとに田んぼの水深を適切な高さにする必要があります。

米作りにはどのぐらいの水が必要なの?

一般的に、玄米150kgをつくるのに79~126t(バスタブ約500杯)の水が必要です。しかし、実際には田んぼから地下に水が漏水し、葉や水面から水分が蒸発するためより多くの水が必要となり、実際には10a(1,000㎡)当たり、1273~1465tもの水(25mプール約2個)を使用しています。年間雨量が4000mmの地域でも、広さ10aの田んぼでは400tの水しか溜まらないため、外からより多くの水を引き入れる必要があります。

水管理の目的

田んぼとコメ

出典:写真AC

目的①栄養源を供給

一般的に、多くの作物は「土」から栄養が持ち出します。しかし、水稲の場合は、生育に必要な栄養分の多くを「水」から吸収します。雨水や山水に含まれるわずかな栄養分を主な栄養源にしているからこそ、田んぼには常に新しい水を引き入れることが必要です。

目的②持続的な米作り

さらに、水稲は、他の植物と比べ、少ない肥料成分で栽培できます。そのため、同じ土地で毎年、栽培が可能となっています。(日本のように雨の多い地域では土壌中の栄養分が低く、作物を栽培するときは、一般的に、多くの肥料を投下する必要があります。)

目的③茎数(分げつ数)を調整

イネ

出典:写真AC

水管理は米を育てるだけでなく、成長を抑える目的もあります。理由としては、水稲のような穀物を生産する植物は、葉や茎が成長しすぎると、お米を生産する栄養分がなくなってしまうためです。特に化学肥料を多用する現代の米作りでは、夏場の過剰分げつ(茎数が増えすぎること)を抑えるためにも、水を切る作業である「中干し」が必要です。

目的④雑草を抑制

水稲における水管理は、効率的に雑草を駆除することに役に立ちます。水稲の苗が水面から顔を出し、雑草が沈むくらいの水深に調整することで、多くの雑草が侵入できなくなるからです。これを水稲用の除草剤と組み合わせると、より効果は高いです。また、田んぼに水を使うことは、カエルやトンボなどの多くの生物が棲む環境をつくり、お米を害虫から守ってくれます。

目的⑤水温をコントロール

水田と夕焼け
Photo byQuangpraha

水稲の成育を適正にするためには、水管理による温度コントロールが必要です。寒い地方では、移植したばかりの苗を冷たい空気に当てないように、水深を深くします。また、暑い地方では、気温が高いと米の登熟がすすみ品質の低下がおこるため、水を流し続けることで地温を下げます。このように、地域の気候にあった米作りをする場合は、地域の水管理手法に準じるとよいです。

水管理のやり方

年間スケジュール

水管理スケジュール

出典:筆者作成資料

水管理の年間スケジュールの大まかな流れは、上の資料のとおりです。(しかし、これは全国で共通せず、地域や栽培する品種によって異なりますので、その点はご留意ください。)青い部分の幅が水深を示し、ギザギザになっているところでは水を入れたり抜いたりすることを繰り返します。水管理は次のような大きく5つの時期に分かれます。

【水稲栽培の5つのステージ】

  1. 田植えによる苗の移植直後の活着期
  2. 水稲が成長し続ける分げつ期
  3. 十分に稲が成長できた有効分げつ決定期
  4. 穂を形成し、出穂しはじめる穂ばらみ期
  5. 子穂が結実しお米となっていく登熟期

水管理のやり方①活着期

活着期

出典:写真AC

活着期は田植え直後から、新しい茎と根が発生する2週間の期間であり、苗が地面にしっかりと根ずくことが重要です。活着のためには水温が25~30℃ちかくになるよう水深をコントロールします。朝に水を入れ、日中は水を田んぼに留めて1~3cmの浅水とし、夜までにすこし水を足して4~5cm程度の水深にすることで、保温効果を高めます。

栽培方法で異なる水管理

活着期の水管理は、田植えの方法で大きく異なります。一般的な苗を植え付ける移植栽培では、先述した水管理手法を用いますが、水稲の種子を直接播種する直播栽培は、異なるやり方です。さらに、直播栽培は乾田直播(入水していない田)と湛水直播(水を入れた田)があり、それぞれ水管理手法が違います。

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水管理のやり方②分げつ期

分げつ

出典:写真AC

苗が活着した後は、初期成育を早くするため、分げつ(茎数)の増加を促します。これにより、養分を吸収できるしっかりとした根が育ち、収量が増える効果があらわれます。そのためには、日中は1~3cmの浅水で水温地温を上昇させ、朝夕に冷たい水を入れなおし、昼夜の温度差をつけることが重要です。なお、稲わらが多く土中にすき込まれている場合は、ガスの発生原因となり根を傷めるため、数日おきに落水をおこなうとよいです。

ボタニ子

ボタニ子

分げつ期の期間は1ヶ月ほどになるよ。水廻りという、朝夕の水路チェックはこの時期が一番忙しいね。

水管理のやり方③有効分げつ決定期

中干し

出典:筆者撮影

有効分げつ決定期は充分な収量を確保できるだけの茎数となった後の時期をいいます。この期間におこなう水管理を中干しといい、取水口を塞いで、これまで溜まっていた水を全部抜く落水をおこないます。土壌条件や気候によって異なりますが、中干しは2週間程度実施することとし、乾いた地面に小さな傷が入る程度(足跡がつく程度)を目安とします。

中干しの目的①水稲の成育調整

中干しの効果により、窒素を吸いすぎて草丈が伸びることを抑えられます。過剰に茎葉が成長することで、本来お米にいくはずだった栄養がなくなり収量が減るだけでなく、草丈が高い割に根が張っておらず、風によって倒伏しやすくなります。

中干しの目的②水稲の体質改善

中干しによって、水中で生育することに特化してきた水稲の体質を、畑のような環境で育つ体質に変えられます。これは、これまで土中に供給されなかった酸素が根に行き届くことによって、酸素を求めるようになる変化を指します。この体質改善がおこった水稲は、リン、カリウム、ケイ素などの無機成分の吸収能力が高まり、健康で病気に負けないです。

水管理のやり方④穂ばらみ期

穂ばらみ期

出典:写真AC

中干しが終わると、水稲は茎のなかに穂を形成しはじめ、出穂の準備をします。この期間は、水稲の水分蒸散量が最大となるため、多くの水が必要です。一方で、酸素の要求量も最大となるため、数日おきに入水と落水を繰り返し、根に酸素を供給する間断灌漑(かんだんかんがい)をしてください。開花時期は、水分不足により受精に影響するため、水分補給のために水を張った状態がよいです。

水管理のやり方⑤登熟期

収穫が目前となる登熟期は、水不足の回避と土を硬くすることが重要です。ドロドロの田んぼだと収穫作業でコンバインがぬかるみにはまり作業性が落ちるためです。また、水稲の水分蒸散量に水の供給量が不足することで、米が白くなったりひび割れたりと品質の劣化がおこります。そのためこの時期は、収穫の7日前までは灌漑断水をおこない、あとは落水をして土を乾かしてください。

水田への水の引き方

水路

出典:写真AC

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最新の水管理のやり方

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