クサソテツとは
クサソテツ(草蘇鉄)は山菜の仲間で、主に山野の草地や谷や沢のきわなどに生えている野草です。国内では、北海道から九州にかけて広く生えています。クサソテツの特徴や基本情報を見ていきましょう。
クサソテツの特徴
クサソテツは古株の形がソテツの木の古株にとてもよく似ているため、クサソテツと呼ばれているそうです。古株の大きさが直径5cmになるのに数年もかかります。意外に見つけやすいのもクサソテツの特徴です。
基本情報
学名 | Matteuccia struthiopteris |
科 | コウヤワラビ科(分類によってはメシダ科) |
属 | クサソテツ属 |
種 | クサソテツ |
分類 | 多年生シダ |
自生地 | 日本各地、中央~北ヨーロッパ、北米大陸北東部 |
葉っぱの特徴
特徴的な茎と葉の形
クサソテツの葉っぱは鳥の羽のような羽状で、1本の葉柄(ようへい:葉に付いている茎の部分)の先に2枚以上の葉をつけます。それらがまとまって1枚の葉をつくっている複葉(ふくよう)で、このかたちを1回羽状複葉と呼ぶのです。茎は、断面が丸みを帯びた三角形で内側に深く窪んでいます。
増え方
クサソテツは陰花(いんか)植物で、基本は胞子で増えます。また、親株から匍匐(ほふく)枝が横向きに伸びていき、子株をつくるのも特徴です。子株が育って、さらに横に匍匐枝をのばしていくというように、つぎつぎと増えていきます。そのため、クサソテツは群れて生えていることが多いのです。
生育環境
同じシダ類でよく似てる野草でも、好む環境がいろいろ異なります。クサソテツがどのような環境を好むのか知っていると、生えている場所を探しやすくなるでしょう。
好みの環境
クサソテツのもっとも好みの環境は近くに沢などがある湿地帯で、高温が苦手のため半日蔭なら快適でよく育つでしょう。ほどよい湿度に加えて、肥えた土も必要です。土が柔らかであるとなおよいでしょう。生育環境が整えば、夏でも育つそうです。
クサソテツとコゴミ
クサソテツとコゴミは同じものなの?
ボタ爺
名前は違うけれど、同じものです!
クサソテツはシダです。クサソテツが青々とした葉っぱだけの状態ならば、コゴミは見つかりません。クサソテツは胞子や匍匐枝(ランナー)で増えます。ランナーを伸ばして増えていく途中で、新芽が生えます。15cmくらいに伸びた新芽が、コゴミと呼ばれている山菜なのです。
コゴミの名
コゴミは別名、「コゴメ」「ホンコゴミ」「イチヤコゴミ」「ガンソク」などとも呼ばれています。前向きにかがんだ様子に似ているところからコゴミと名づけられたそうです。
コゴミの旬は春
クサソテツはうすい緑色のシダ類で、観葉植物として育てられることもあります。しかし、観賞するだけでなく食用も可能なのも魅力です。新芽のコゴミは春に生え、3月から5月に採取できます。コゴミの若葉はあくが少なく生でも食べられますが、茹でてあえ物にしたり天ぷらにしたりして食すと美味しいでしょう。
採取の仕方
コゴミを採取できる期間は、若芽が生えておよそ2週間です。新芽が食べられる状態でいるのは数日間で、それをすぎると美味しく食べれなくなります。草丈が15cmくらいになったら、はさみで丁寧に切り取りましょう。来年以降も採るためと、山での採取なら自然保護の観点から、1度採取した株からは次の若芽が出ても採ってはいけません。
クサソテツと他の山菜の見分け方
上の写真のコゴミはまだ生えて間もない若いコゴミですが、ひとめ見てこれがコゴミだとわかるのは、山菜に慣れた人といえるでしょう。どこでコゴミを見分けるかというと、葉っぱです。鮮やかな明るい緑色の丸いところと、それを囲むように生えている葉っぱがポイントです。
似ているシダの仲間
コゴミが生えるクサソテツの葉っぱは、他のシダ類と違い、裏に胞子嚢がついていません。したがって、上の画像のようなぷつぷつした黄土色の点々の模様は見られません。似てるけれど比較的つるんとした葉っぱで、色も薄い緑色です。葉っぱの形は先端がとがっている1回羽状複葉です。
ボタニ子
シダ類の見分け方のコツを知りたいですね
ゼンマイの特徴
コゴミに似てるゼンマイの若芽は、先端の部分が丸く扁平な胞子葉と、栄養葉に柔らかな白から褐色の綿がその周りにくっついています。茎はやわらかです。食べるのは柔らかな葉の丸まっているほうで、その部分が硬い「男ゼンマイ」は食べません。
採取
暖地では、若芽が生える3月から4月にかけて採取します。ゼンマイの葉が巻いている茎の下のほうからしごくようにしすると、自然にぽきっと折れるところがあります。その部分でゼンマイを折り取りましょう。コゴミと違いあくが強いため、軍手などをはめて行ってください。
あくの抜き方
ゼンマイはあくが強いため、食べるときはしっかりあく抜きします。クルクルと巻いた部分と綿毛を取ってから、少し深さのある容器に並べ木灰か重曹をかけて、その上から熱湯をかぶるほどそそぎます。一晩おいてから茹でて冷水に取り、さらに半日から1日の間、流水にさらしましょう。
ワラビの特徴
ワラビは若芽が「じゃんけんのグーの形」をしていて、褐色の小さな毛でおおわれています。見た目が違うため、コゴミと間違ってしまうおそれはないでしょう。食用ですが、あくがつよく、よくあく抜きしなければいけません。茹でるときは木灰を使いましょう。
採取
暖地なら、採取する時期は4月から6月です。採取の仕方はワラビやゼンマイと同じく、下から茎をしごくと、ぽきっと折れるところがあります。そこの部分で折り取りましょう。ワラビと同様、あくが強いため軍手をはめて採ります。食べるときは、しっかりあくを抜いて料理しましょう。
あくの抜き方
まずは、少し深さのある容器によく洗ったワラビを敷きましょう。ワラビの上に布をかぶせてからワラビの量の8~15%の木灰をまんべんなくかけ、さらにその上から熱湯をかけます。半日から1日漬けたままにしておき、適度なやわらかさになったら容器から出し、水にさらしましょう。
コゴミと他の山菜の違い
似てるところ
コゴミと他の山菜が似ているところは、先端がクルクルと巻いた形をしている点です。採取する時期はおおむね春から初夏にかけてで、野草として自然に生えている植物という点も似ています。特に違う点はどこか、ポイントを表にして整理してみましょう。
最も違うところ
見分けるポイント | コゴミ | ゼンマイ | ワラビ |
栄養葉をくるむもの | 緑の葉っぱ | 綿毛 | 褐色の毛 |
山菜採りのメリット
コゴミ、ゼンマイ、ワラビはよく似ていますが、特徴をつかめば簡単に見分けられるようになるでしょう。また、近年、山菜の摂取は健康にも効果的であることが解ってきています。食べ過ぎはいけませんが、よくあくぬきして調理し、食生活に加えてより健康的な食生活を送りましょう。
まとめ
クサソテツは観葉植物として、コゴミは食用としてよく利用されています。よく似てるゼンマイやワラビも、あく抜きして調理すれば美味しく食べられるでしょう。山菜採りは楽しいレジャーでもありますが、できれば専門的な知識ある人や野草に詳しい人のアドバイスを受けておこなうことをおすすめします。
出典:写真AC