大蛇が潜む谷の草
ウワバミソウの名前の由来
ウワバミソウを漢字表記すると、「蟒蛇草」というおどろおどろしい字面になります。蟒蛇、つまり大蛇が潜みそうな場所に生える草というのが名前の由来です。それでは険しい山奥の密林にでも生えているのかと思いきや、意外と人里近くにいる種類なのです。
ウワバミソウ基本情報
ウワバミソウは北海道〜九州の山地に生息する多年草です。流水を好み、滝壺の周りの飛沫がかかる場所や渓流沿いに群落を作ります。農村部の林道や、川沿いの寺社の境内など人里近くにも生息しますが、鹿の食害が激しい地域では少なくなっています。薄暗い谷筋にこんな草むらがあれば、何かが潜んでいるかもしれないと想像してしまいそうです。「蟒蛇が出そうだ」と想像して「ウワバミソウ」という名前をつけたのも頷けます。
ウワバミソウ基本データ
- 標準和名:ウワバミソウ
- 学名:Elatostema umbellatum var. majus
- 分類:イラクサ科ウワバミソウ属
- 分布:北海道〜九州
葉っぱが左右非対称
ウワバミソウの特徴は、左右非対称で縁にギザギザ(鋸歯)のある葉っぱ。緩やかに弧を描く葉の形は、他の植物と見分けるポイントになります。
ウワバミソウの殖え方
湿度の管理ができれば、庭の日陰やアクアリウム内でウワバミソウを栽培することもできます。栽培下で繁殖させるときは挿し枝をしたり、むかごから育てたりします。ウワバミソウの繁殖について、簡単に見てみましょう。
「むかご」でクローン繁殖
ウワバミソウの葉の付け根を拡大して見てみましょう。瘤のように肥大して、濃い緑色〜赤褐色に色づいていることがあります。これは「むかご」という器官で、秋から冬にかけて形成されます。
ボタニ子
「むかご」って、ヤマノイモの食べられる部分だよね!
花は白く小さい
野生のウワバミソウは「花が咲いて受粉して種ができる」という有性生殖もおこないます。毎年春になると、葉の付け根に小さな白い花を咲かせます。
ボタニ子
小さいけど、星屑みたいで綺麗だね。
山菜「ミズ」の正体
「ミズ」の名で出回る
山菜として食用にされるウワバミソウは、葉が取り除かれ茎の皮が剥かれた状態で売られていることがほとんどです。茎は人さし指ほどの太さで30cm以上の長さになり、根元には赤い色素があります。そのため遠目にはフキのように見えるでしょう。しかし手にとってみれば、フキとの見分け方は比較的容易です。ウワバミソウはフキほど筋張っておらず、「ミズ」の名前の通りみずみずしい茎が特徴です。
「ネバネバ野菜」として使える
山菜としてのウワバミソウの特徴は、茎のネバネバ。モロヘイヤのように粘り気のある野菜として使えます。この粘り気は糖タンパク質(タンパク質を構成するアミノ酸に、グルコースやフルクトースなどの糖類が鎖のように繋がった成分)を主成分としています。有毒成分や腐敗などではないので、問題なく食べられます。
ウワバミソウの調理方法
茎はおひたし・たたきに
ウワバミソウの茎は茹でておひたしにするのが一般的です。皮がついたまま売られていた場合は、まず洗って茎の皮を剥きましょう。葉の表面には微細な毛が生えており食感があまり良くないので、おひたしにする時は取り除きます。皮を剝いた茎だけになったら、あとはホウレンソウなどの葉物野菜と同じようにお湯で茹でて水にさらします。
むかごも食べられる
秋にできる「むかご」も食用になり、地域によっては茎よりもむかごの方が一般的です。ヤマノイモのむかごと同じ感覚で、茹でておひたしや胡麻和えにします。茎と同様に粘り気があり、潰してとろろ状にすることもできます。
葉は天ぷらに
葉は微細な毛が生えているので、おひたしにはあまり向きません。それでも捨てるのが惜しいのであれば、天ぷらにするという手もあります。左右非対称な葉は見た目が美しく、盛り付けの彩となるでしょう。葉の形や色を活かすのであれば、衣を薄くした方が良いでしょう。
ボタニ子
味に癖がないから、野菜と同じ感覚で使えるね!いろいろ試してみよう。
出典:写真AC