整枝剪定のやり方①棚仕立て
広い場所があるならば、棚仕立てが最もぶどう栽培に向いているやり方です。葉全体に日が当たりやすく、収量も多くなります。
①1年目の夏
春から伸びた枝の中から、最もよいものを1本選び、まっすぐ伸ばし主枝にします。それ以外の枝は付け根から間引くか、摘心をして主枝がしっかり育つようにします。主枝が棚面に届いたら、伸ばしたい方向へ誘引します。
②1年目の冬
1年目の冬は主枝をしっかり育てます。誘引した主枝は、枝の長さの1/5くらいを目安に先端を切り戻します。それ以外の側枝はすべて付け根から切り落とします。
③2年目の冬
剪定前
まっすぐに伸びた主枝の、反対側にでる枝を第2主枝にして先端を少し摘心します。主枝の分岐点から1m以内にでている側枝は間引き、それ以外の側枝は25~50cm間隔で間引いていきます。このとき、枝が同じ方向ばかりにならないよう、交互に間引くとよいでしょう。
剪定後
枝の間引き後、残した側枝は2、3芽残して切り戻します。
③3年目の冬
剪定前
側枝は幹に近い方では100~150cm間隔、先端近くでは50cm間隔で広めに間引きます。特に大粒品種や樹勢が強い株は広めにしましょう。
剪定後
枝の間引き後、残した側枝は2、3芽残して切り戻します。
④4年目の冬
剪定前
間引く枝の間隔は3年目と同じです。樹が育ち、勢いも強くなってくる4年目以降は、棚全体に枝がバランスよく行き渡ることを考えながら、長梢剪定と短梢剪定をうまく組み合わせて残す芽を調整します。
剪定後
広げたい方向には長梢剪定で多めに芽を残し、枝数を確保します。
④5年目以降の冬
剪定前
ほぼ樹形が完成しているので、それを維持するような管理を続けます。側枝からもさらに結果母枝が伸び、数が増えてくるので、各枝50cm間隔で間引き、樹勢を見ながら残す芽の量を調節します。
剪定後
樹勢が強いものは10芽くらい残して、間引く枝の量を増やすとよいでしょう。
整枝剪定のやり方②垣根仕立て
庭が狭くスペースがとれない場合は、垣根仕立てがおすすめです。フェンスに絡ませる場合も同じやり方でできます。
①1年目の冬
その年伸びた最もよい枝を1本選び、横になるよう誘引して主枝にします。主枝の先端は少し切り戻します。それ以外の枝は付け根から間引くか、摘心をして主枝がしっかり育つようにします。
②2年目の夏
第1主枝と逆方向に第2主枝を誘引します。主枝から伸びる側枝は真上に向かうように誘引します。
③2年目の冬
今年伸びた側枝(亜主枝)は、20~25cmほど間隔をあけて間引き、残した枝は付け根から2~3芽残す短梢剪定で切り戻します。両端の枝は少し先端を切り詰めます。
③3年目以降の冬
横に伸ばしながら、2年目と同様の方法で整枝剪定を繰り返していきます。
ぶどうの剪定のコツ
何点かコツを抑えておくと、さらに剪定でよい結果を残すことができます。慣れてきたら、以下のコツを意識しながら枝の処理をしてみましょう。
コツ①よい枝を選ぶ
残す枝によっても生育が変わります。次のポイントをチェックしながら選ぶとよいでしょう。
- 細すぎず、太すぎずの中間の太さ
- 芽と芽の節間が狭い
- ついている芽が大きい
コツ②徒長枝は短くしすぎない
勢いよく伸びた枝(徒長枝)を短く切りすぎると、反発してにさらに強い勢いを持った枝を出します。この枝は、花が咲いても実がつかない「花振るい」になることがあるので、多めに芽を残すとよいでしょう。特に巨峰ではその傾向が強いので注意します。樹全体に元気がありすぎる場合も、全体的に弱めに剪定します。
コツ③元気のない枝は短く切る
枝に元気がなかったり、樹全体にも勢いがなかったりする場合、短めに強く切ることで枝を若返らせることができます。弱い枝からは弱い枝しかでません。
コツ④古い枝を更新する
主枝以外の太い枝や側枝は、古くなるとよい枝を出さなくなります。実付きが悪くなった場合は、思い切って切り落としましょう。一時的に大きな空間が空いてしまいますが、新たに伸びるよい枝を誘引することで、1~2年で元に戻ります。
コツ⑤芽と芽の中間で切る
ぶどうは節のすぐ近くで切ると、大切な芽が枯れこみやすくなります。乾燥と寒さから芽を守るために、節と節の中間で切るようにしましょう。
コツ⑥残す枝や芽の量を知る
7~8芽残す長梢剪定の場合、残す枝数は一坪(3.3平方m)あたり5~6本くらいが標準の目安になります。仕立て方や品種、樹勢によってその量を加減します。また1枝あたりに残す芽の数は、中粒品種やデラウェアは10芽ほど、巨峰など大粒品種では4~5芽ほど残すと実付きがよくなります。
夏季剪定の月別ポイント
夏季剪定は季節ごとに樹の生長をみながら必要に応じて行います。月別の管理のポイントをお教えします。
ポイント①4月・5月
新しい枝を摘心する
春から新しく伸びた枝の中で、花の咲く前に1m以上も伸びている強い枝は、花付きが悪くなります。花の咲く1週間前(5月下旬)を目安に、先端を摘心して勢いを止めます。
ポイント②6月
混みあう枝を間引く
6月は枝が伸び葉がたくさん茂る季節です。枝が混みあいすぎて、葉が重なりあう場所があれば、枝を少し間引いて均一に日が当たるように調整します。
新梢から出る二番枝を整理する
元気な新梢からは、さらに二番枝とが出て枝分かれすることもあります。混みあう場合は、付け根近くに葉を1~2枚残して切り落とします。
ポイント③7月
伸び続ける枝は摘心する
どの新梢もこの季節になると伸びが止まります。1mほどの長さで止まるのが理想的です。しかし、その後もどんどん伸び続ける枝があれば、先端を摘心します。伸ばし続けると枝が充実せず、次の年の結実が少なくなる場合があります。
まとめ
環境や育て方によってぶどうの生育は変化するため、マニュアル通りにはいかない場合もあります。ぶどうは強く回復も早いので、失敗をおそれずまず一度チャレンジしてみましょう。繰り返すことが上達への近道です。何度か行っていくうちに、ご自身の環境にあったきっとやり方が見つかりますよ。
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出典:写真AC