カジイチゴとはどんなイチゴ?
カジイチゴを食べたことがありますか?モミジイチゴなどと同じく、キイチゴ属に分類される日本原産種で、ブルーベリーやラズベリーなどのベリー類よりも、さっぱりとした味が楽しめます。甘みは強く、酸味はほとんどありません。
ボタニ子
モミジイチゴやニガイチゴなど似ている種類がありますが、成長するにつれて、とげがなくなるカジイチゴは庭木として育てるのにもおすすめです。今回は見分けづらいカジイチゴの特徴や育て方、美味しい食べ方をご紹介していきます。
カジイチゴの特徴と基本情報
分類 | バラ科キイチゴ属 落葉低木 |
自生場所 | 関東中南部、四国、九州、太平洋海岸近くの山野 |
開花期 | 4〜5月 |
結実期 | 5〜6月 |
別名 | エドイチゴ(江戸イチゴ) トウイチゴ(唐イチゴ) |
カジイチゴは一季なりのキイチゴで、繁殖力はとても強く、地下茎を伸ばしどんどん広がっていきます。地植えにした場合、高さは2〜3mまで成長します。実は黄〜橙色で種子は多く、食べると口の中でプチプチとした食感を感じます。とげがないのも特徴で、庭木としても栽培しやすい種類です。
カジイチゴの見分け方
カジイチゴは茎に『とげ』があるかや、葉の大きさで見分けることができます。株が小さいうちは、とげがありますが、成長するにつれてなくなります。とげのないキイチゴ属の種類は珍しく、収穫や手入れ時、小さい子供のいる家庭で庭に植えたい場合にも、とげでケガをする心配がないので安心ですね。
ボタニ子
とげがないって珍しい。山野などで見つけたら、とげの有無を見るとすぐに分かるかも!
葉や花の見た目
カジイチゴの葉は大きいもので12〜15cmになる場合があります。手のひらのような見た目で、厚みと艶のある濃い緑色をしています。葉の縁はギザギザとした鋸歯で、深い切れ込み(深裂)が3〜7あるのが特徴です。花びらは5枚で少しシワがあり、4〜5月の開花時期に3〜5cm程の白い花が咲きます。早いものだと、5月には実をつけます。
カジイチゴは雌しべ、雄しべがともに多数あります。花は見た目も可愛らしく、大きいものは見応えがあるので観賞用として飾っても楽しむことができますね。
実の見た目
カジイチゴは『集合果』で、小さい粒がいくつも結集している状態の果実をつけます。一粒一粒の先端にやや色の濃い部分があるので、見た目はイクラの粒が集合しているようにも見えますね。果実が熟すと黄色〜橙色になります。ラズベリーなどと比べると、実は柔らかく水分も豊富に含みます。
ボタニ子
キイチゴ属の種類の中でも、大型の実をつけるよ!
カジイチゴに似た野イチゴ
カジイチゴにとてもよく似ているのが『モミジイチゴ』です。実単体では、見分けるのが難しくなります。『ニガイチゴ』もカジイチゴに似ていますが、実の色が赤いので区別がしやすい種類です。どちらも山野に自生するので、カジイチゴに似ている場合には葉や花の形、とげの有無で区別することができますよ。
モミジイチゴ
モミジイチゴの花はカジイチゴの花弁と違い、シワのないスッキリとした雫型をしています。1本の枝にたくさんの花をつけ、全ての花が下を向いてぶら下がった状態で咲くのが特徴です。また、茎や枝にはとげがあるので実を取る際には注意しましょう。一般的に『キイチゴ』と呼ばれるものは、モミジイチゴをさすことが多いようです。
ボタニ子
葉はカジイチゴよりも小さめで、『モミジ』の葉に似ているよ。
ニガイチゴ
ニガイチゴの花は上を向いた状態でつくのが特徴です。花弁はシワが寄ったような見た目ですが、カジイチゴと比べると花弁の間には隙間があり、細長い雫型をしています。葉は3裂になり、茎や枝、葉の裏側にも細かいとげがあるので触るときには注意しましょう。
ボタニ子
実は熟しきっていないと、種子部分に苦味を感じるから気をつけて!
カジイチゴと見分ける部分
- 茎部分のとげの有無
- 花の咲く向き・花弁の形状
- 葉の形状
カジイチゴの育て方
苗がまだ小さい頃は、茎に少しとげがありますが、大きく成長するにつれてとげはなくなっていきます。日向で風通しのよい環境を好み、肥料のやり過ぎは葉や茎ばかりが伸びて、実が付きづらくなる原因になるので注意しましょう。立性の種類で、成長すると2〜3m程の高さになります。植え付けをする場所にも注意が必要ですね。
土づくり
苗を地植えにする場合には、徐々に効果のある『緩効性肥料』を使い、植え込む周辺の土に肥料をすき込むようにします。弱酸性の土壌を好むので、ホームセンターなどで販売している果樹・花木用の土を使うのがおすすめですが、カジイチゴは適応力が高く、丈夫な植物なので、酸性やアルカリ性にひどく偏っている土壌でない限りは、神経質になり過ぎなくても成長してくれますよ。
水やりの仕方
カジイチゴを栽培する際、夏場に水が不足すると元気がなくなり新しく伸びた枝が枯れやすくなります。土の表面が乾燥し始めたタイミングで水をたっぷり与えましょう。鉢植えの場合にも、土の表面が乾き始めたら鉢底から水が流れるくらいの水を与えます。ただし、夏の湿気が多い時期には『根腐れ』を起こしやすいので、水やりには注意が必要です。
剪定方法
苗を購入した場合、植え付け1年目ではまだ実がつきません。2年目の枝から実をつけるようになり、実をつけた枝は翌年は実をつけず枯れるので、実を収穫できた枝は切り落とします。剪定は休眠期間の冬季に行い、新しいシュートが出た場合には春〜夏頃に株分けをしましょう。
繁殖力が強いので注意が必要
カジイチゴの繁殖力はとても強く、放っておくと地下茎からどんどん芽を出し新しいシュートができ増えていきます。庭木として育てる際に、広がり過ぎを防ぎたいときには不織布ポットなどを活用して根域制限するという手もあります。
収穫時期の見分け方
花が咲いてから、実をつけるまで1ヶ月程の時間がかかります。実が橙色になると収穫の頃合いですが、カジイチゴの実は酸味がほとんどなく甘いので、鳥たちも狙っています。花をつけてから、収穫できるまでの間は少し気にかけていてあげましょう。
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実をつけるまでが少し長いから、気がついたら鳥に食べられていてショック〜・・。
カジイチゴの美味しい食べ方
カジイチゴは生でそのまま食べても美味しいですが、ジャムや果実酒にしても楽しめます。ジャムにするには量が必要になりますが、果実酒の場合にはジャム程の量は必要ないので試しやすいかもしれません。準備する材料も普段使うものが多いので、ぜひ一度お試しを。
カジイチゴのジャム
ジャムにする際は、実に対して10%の砂糖を加え煮詰めます。実が残っている方が好みの場合は、あまり混ぜ過ぎないようにして、ドロドロになる前に火から下ろしましょう。ただ、カジイチゴは水分も多いキイチゴなので煮詰め足りないと、サラッとした状態になるので注意が必要です。
ボタニ子
パンにも美味しいけど、ヨーグルトにとってもよく合う〜!
カジイチゴの果実酒
煮沸したビンを用意したら、よく水洗いしたカジイチゴをビンの1/3量入れ、氷砂糖を実に対して2割ほどの割合で入れます。アルコールは、度数が20度以上のものならお好みで楽しめますが、クセのないホワイトリカーがおすすめです。漬け込みから2週間程で実を取り出して、一ヶ月程寝かせれば完成です。
氷砂糖の量は好みで増やしたり減らしたり、お試しを!
まとめ
本来カジイチゴは関東中南部、四国、九州の太平洋沿岸近くの暖かい場所へ自生します。耐寒性のある植物ですが、栽培が降雪地帯などの場合は株が大きくなるまで鉢植えで楽しむのがおすすめです。実だけでなく、可愛らしい花を楽しめるのも魅力的ですね。購入した際の状態にもよりますが、実をつけるのには少々時間が必要です。株分けなどして上手に増やしていくことで、甘い実を毎年楽しむことができるようになるので果実酒やジャムなどを楽しむのもいいですね。ただ、地下茎でどんどん増えてしまうので注意が必要です。
酸味がほとんどないから、小さい子でも食べやすいキイチゴかも!