植物における花とは
花とは一定の時期に枝や茎の先端に形成される葉が変化してできたものだとされています。植物学用語で「花」とは、種ができる種子植物の生殖器官(受精して実を結ぶ機能をもつ部分)とされています。
今回の説明に使う「花」の用い方
会話のなかでは一般的に「お花を買いに行く」と表現した場合は、植物のつくり全体を「花」といっていますが、今回は一般的に使う植物のつくり全体を意味した花を使う場合は「花」の字で表現します。また茎の上部に咲く花びらを含めた部分を説明する場合は「花葉」を用いて表現しています。
植物における花葉の特徴
花の咲く植物の種類は約20万種あって、一般的に花と呼んでいる部分は生物学的には花葉(かよう)と呼ばれる部分になります。花葉は花びらと呼ばれる「花弁」と「がく(萼)」「雄しべ」「雌しべ」を一つの単位としたものです。
花葉のつくり(構造)
花葉のつくりは外側に萼片(がくへん)があり、その内側に一般的には花びらと呼ばれる花(被)弁がついています。さらに花びらの内側にある雄しべは雌しべを取り囲むように並んでいます。雌しべは花葉の中心に位置していて、種をつくる「胚珠(はいしゅ)」と呼ばれる膨らんだ部分があります。膨らんだ部分を子房とよび、花の蜜は子房と雄しべの間にあります。
花葉の種類と呼び方
花葉は「がく」「花びら」「おしべ」「めしべ」の4つの要素の数によって「完全花」「不完全花」「単性花」と分けたよび方をしています。「合弁花」という呼び方も花葉を表現するものです。
「完全花」「不完全花」「単性花」とは
「完全花」とは多くの「がく」と「花びら」が5枚あって「おしべ」は5本、「めしべ」が1本あるものをいいます。花葉の四要素がそろっていないものは「不完全花」になり、雄しべと雌しべの片方だけの花の場合は「単性花」といっています。「単性花」は雄花と雌花が同じ株にない雌雄異株の場合は、雌株と雄株の2株が近くにそろってないと実をつけることができない植物とされています。
花びらの役割
花びら(花弁)は中心にある雄しべや雌しべを守る役割があります。またミツバチやチョウチョなど花粉を運んでくれる送粉者を引きつけ、種を作る重要な働きもしています。花粉を運んでくれる送粉者に合わせてさまざまな花葉に変化し、独特の美しさをつくり出している花もあります。
花と送粉者は共に進化してきた関係
花葉が様々な形をして美しいのは、多くの種を残すために進化をしてきた証です。送粉者と呼ばれる動物たちも、また同じように栄養となる花粉や蜜を得るために進化してきました。ハチドリの長いくちばしは昆虫を捕まえるのではなく、花の蜜を得るために長いくちばしに進化しています。このような共に変化した関係を「共進化」と呼んでいます。
花粉媒介に動物を必要としない風媒花
花粉の媒介に、動物を必要としない種類の「風媒花(ふうばいか)」があります。風媒花は動物を引き付ける必要がないので花びらは退化して目立たず、香りもありません。代わりに雄しべを大きくして、多くの花粉を飛ばします。スギの木の花粉は、1種子 (胚珠)に約200万個の花粉をまき散らして種をつくる形に変化しています。
風媒体花と裸子植物
風媒花の中で松や杉のようなとがった葉をもつ針葉樹は、花粉や種がある部分が外に出ている裸子植物です。恐竜時代に栄えていたシダ類は、裸子植物の仲間で種ではなく胞子を飛ばして子孫を増やす植物で、身近な稲(科)も風媒体で花を咲かすことのない植物の仲間にはいります。
花びらに見える花葉
小花が集まっているように見える紫陽花(アジサイ)は、がく(萼)が花弁に見えているものです。ドクダミの場合は、葉っぱが変化して花びらのように見えていているものです。花びらとがくが省略されている花もあり、ヤマボウシの花びらに見える部分は総苞片(そうほうへん)と呼ばれる花を包む葉で、目を凝らして見てると中心に小さな花弁が残っています。
植物の分類
花ができる植物は「種子植物」と呼ばれています。種子植物は「被子植物」と「裸子植物」に分類され、被子植物はさらに「双子葉類」と「単子葉類」にわけられています。花びらを「離弁花」と「合弁花」とする呼び方は双子葉類の中にある花冠の違いで分類されたものです。
双子葉植物とは
被子植物は進化の過程で「花びら」と種をつくる部分(子房)を獲得し、種をつくることができるようになった植物です。双子葉植物(属)とは被子植物の中で種から芽が出たときの葉(子葉または子葉鞘)の数が2枚あるものです。
双子葉植物と呼ばれている植物の例
双子葉植物の葉は網目状の模様がある葉脈があり、根は中心は太い芯(しん)のある主根がある形をしています。代表的な植物はひまわ、アブラナ、サクラ、アサガオなどで、花びらの枚数は4枚か5枚(あるいは4か5の倍数)のものが多いとされています。
葉脈の役割
葉の模様に見える葉脈の役割は、葉に水を運ぶ(道管)役割と、光合成をして葉に作られた栄養を運び出す(師管)役割、そして葉をささえる働きの3つの働きをしています。
単子葉植物とは
被子植物の中で芽が出たときの葉(子葉)が1枚のものを単子葉植物といいます。単子葉植物は全て草(草本)で木にはならない植物です。単子葉類の数は23,500種で、被子植物の約4分の1(約52,000種)にあたり、双子葉植物には見られないユニークな特徴が沢山あります。化石が見つかりにくいことから、どの植物から分かれて分化したのかまだはっきりしいない部分があります。
単子葉植物と呼ばれる植物の例
単子葉植物の葉の模様は線のような並行脈が通っているものです。根はひげ根で、葉は3枚か6枚(あるいは3の倍数)のものが多くイネ、ムギ、ユリ、トウモロコシなどでネギも単子葉植物の仲間です。
ボタニ子
次は花(花冠)について解説します。
出典:https://ww1.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/6-1.html