構造色とは?
構造色とは、光の波長によって見える色が変わることをいいます。光の波長にはさまざまな種類がありますが、人間の目に見える波長は「可視線」と呼ばれるほんの一部の波長にすぎません。これに対して構造色は人間が認識できる可視線の波長とは違うため、見る角度や光の強さなどでさまざまな色に変わります。
構造色は人工的に作り出せる
構造色には、天然の色彩では表現できない光沢や発色がありますが、構造色の仕組みがわかれば人工的に作り出せます。構造色を人工的に再現する方法はいくつかあり、目的にあわせて方法を選ぶのが基本です。
自然界の生き物も構造色を利用する
構造色は自然の生き物たちも利用しています。構造色を利用する目的は生き物の種類によって違いますが、自然界の生き物が危険色と認識する色が含まれるため、外敵から身を守ることを目的に利用することが多いです。また中には自己防衛ではなく、求愛行動のために構造色を利用する生き物もいます。
構造色が光を干渉する仕組み
光の波長によって見える色が変わる構造色の仕組みは、大きくわけると「薄膜干渉(はくまくかんしょう)」「多層膜干渉(たそうまくかんしょう)」「微細な凹凸による干渉」の3つがあります。構造色の仕組みによって発色の仕方が変わるため、仕組みの違いは色のバリエーションにも関係します。
薄膜干渉
薄膜干渉は、薄膜の影響で発色する仕組みです。薄膜は光の波長よりも薄いのですが、厚み(部位)によって光の干渉が変わるため、構造色も膜の厚さで色が変わります。ちなみにシャボン玉や油膜の虹色は、薄膜干渉の仕組みによって発色したものです。
多層膜干渉
多層膜干渉は、複数の膜が重なることで光の干渉が変わり構造色が起こる仕組みです。多層膜干渉では膜の重なり方・枚数などの違いで光の波長が変わるため、薄膜干渉よりも色彩のバリエーションが豊富にあります。貝細工の素材に使われる光沢のある貝の内側は、身近でみられる多層膜干渉の1つです。
微細な凹凸による干渉
微細な凹凸による干渉は、物体の表面にできた溝や突起物に光が干渉することで波長に変化が生まれる仕組みです。表面に凹凸がある生き物の構造色に多くみられる仕組みですが、凹凸を作れば表現できるため、光学記憶媒体に多く使われます。なおCDやDVDは、微細な凹凸の干渉を応用して作られた光学記憶媒体です。
構造色を利用する主な生き物【魚編】
光の反射によって波長に変化が起こりやすい水の中には、構造色を利用した生き物がたくさんいます。中でも特に構造色を積極的に利用しているのが魚たちです。波長の変化を利用する理由や構造色は魚の種類によって違いますが、複雑な構造色を持つ魚ほど観賞魚として人気があります。
種類①サンマ
体全体が銀色に光るサンマは、構造色を利用する魚の代表です。群れをつくって回遊するサンマは、体の表面にある銀色の構造色によって敵から身を守ります。サンマの体が銀色になる理由は、表面の色素砲に含まれる複数の層が光の波長を干渉するからです。
種類②イワシ
イワシはサンマ同様青魚系の代表で、構造色をうまく利用した魚です。イワシも体の表面に見える銀色が構造色で、構造色を使いながら群れで泳ぐことで自分より体の大きな外敵から身を守っています。なお、国内の水族館ではイワシの構造色と回遊性を利用した展示法がよく見られます。
種類③ルリスズメダイ
ルリスズメダイは「構造色を持つ観賞魚」として人気があります。構造色を持つ観賞魚は特定領域の光の波長のみを反射するため、体の表面に構造色を持つサンマやイワシとは発色の原理が違います。ルリスズメダイの構造色は鮮やかな瑠璃色です。色の美しさから「コバルトスズメダイ」と呼ばれることもあります。
種類④ネオンテトラ
アクアリウムで人気のネオンテトラは、体に金属光沢の構造色が使われているため、泳いでいると水の中が光っているように見えます。ネオンテトラはアクアリウム初心者にも飼育しやすいためさまざまな種類の改良種があり、構造色は改良種によって異なります。
構造色を利用する主な生き物【昆虫編】
昆虫の中にも構造色を利用する生き物がいます。構造色を利用する昆虫の多くは光沢のある構造色を持っていますが、これは構造色が生物界における危険色であることに由来します。さらに光の波長によってさまざまな色に変化することも、構造色を持つ昆虫に多く見られる特徴です。
種類①タマムシ
タマムシは構造色を使った代表的な昆虫です。光の当たり方によって色彩が変わること(または色)を「タマムシ色」と呼びますが、呼び方の由来にはタマムシの構造色が関係します。タマムシの外皮は透明な薄い膜が何層にも重なっています。そこを光がとおり反射が起こって、金属のような光沢が生じるのです。
種類②ハナムグリ
ハナムグリはエメラルドのような光沢のある緑の昆虫です。構造色の一種である金属光沢色が特徴的です。ハナムグリにはヒゲブトハナムグリ、ミヤマ大ハナムグリ、コアハナムグリなどさまざまな種類がありますが、その多くは金属光沢の構造色を持ちます。
種類③オオセンチコガネ
オオセンチコガネは腐敗した動物の死骸やキノコなどを食べる昆虫です。しかし、体の表面が金属光沢の構造色で輝くため、美しい昆虫として人気があります。オオセンチコガネの構造色は赤紫の金属光沢が一般的ですが、生息域で変色する特殊な性質があるため、地域によっては瑠璃(るり)色、緑色のものが見られます。
構造色を利用する主な生き物【蝶編】
構造色で身を守る生き物には蝶も含まれます。蝶の構造色の仕組みは、種類だけでなく成長段階によっても違います。成虫で構造色を持つ蝶は表面の凹凸が理由で起こることが多いですが、幼虫・蛹が構造色を持つ場合は膜が理由になっていることが多いです。
種類①モルフォチョウ
モルフォチョウは別名「生きた宝石」と呼ばれる美しい蝶で、鮮やかな青色の羽は構造色です。モルフォチョウは羽の鱗粉に微細な溝(200nm間隔)が格子状に並んでおり、その溝に光が干渉することで青色だけが発色します。
種類②オオゴマダラ(蛹)
オオゴマダラは、白地に大きな黒いまだら模様ができる大型の蝶ですが、蛹は黄金色をしています。オオゴマダラの蛹の多層膜が光に干渉することで、金属光沢のある黄金に発色します。
構造色を利用する主な生き物【鳥編】
鳥の中にも構造色を有する種類がいます。鳥が構造色を持つ理由は求愛行動と関係していることが多いため、「オスにはあってもメスにはない」というケースが目立ちます。さらに体の表面に羽毛があるため、鳥の場合は表面の凹凸が構造色の発色に関係していることが多いです。
種類①クジャク
美しい羽根を持つクジャクは、構造色を生かした鳥類の代表です。クジャクは羽を広げてメスに求愛するため、オスのクジャクだけが美しい羽根を持っています。なおクジャクの構造色は、羽毛の微細な溝が光に干渉することで発色します。
種類②カワセミ
別名「渓流の宝石」と呼ばれるカワセミは、構造色を利用した野鳥の代表種です。カワセミの構造色の原理はクジャクと同じで、羽毛にある微細な溝が光沢色のもととなります。なお、光の波長によって色が変わるため、波長の違いで瑠璃色に見えることもあれば翡翠色に見えることもあります。
まとめ
光の当たり方で見え方が変わる構造色は、自然界の生き物の中でも見られます。見える色や発色の原理は生き物の種類によって違いますが、人工的な構造色にはない美しさが魅力です。なお、構造色を持つ生き物の中には自宅で飼育できる種類もあります。興味のある方は飼育に挑戦してみてはいかがですか?