蘭の概要
蘭とは、植物学上はラン科に分類される植物の総称です。種類が非常に多く、世界に700属以上15000種、日本だけでも75属230種が存在しています。独特の形状を持つ美しい花を咲かせる品種が多いのが、この植物群の大きな特徴です。観賞価値が非常に高い品種が多いため、ファンも多く世界各地で栽培や品種改良が進んでいます。その一方で、環境の変化や採取などによって絶滅の危機に瀕している品種も少なくありません。
蘭は品種改良が進んでいることもあって、園芸品種がとても多いんだ。だから、本来の開花時期とは違う季節に開花を迎える品種も増えているよ。
名前の由来
蘭の漢字には「よい匂いを閉じ込める」という意味があります。そのため、よい匂いを持つ品種もあるラン科の植物に使用されるようになりました。蘭の英名は「Orchid(オーキッド」といい、やはりラン科の植物の総称として使用されます。蘭の有名品種であるコチョウランの英名も「Phalaenopsis orchid(ファレノプシス・オーキッド)」と、オーキッドの名前がついてきます。
オーキッドの由来
オーキッドの由来はギリシャ語の「orchis(オーキス/オルキス)」で、意味は「睾丸」です。これは蘭の塊茎(バルブ)と呼ばれている部分が、睾丸に似ているところからきたものとされています。ちなみに17世紀頃までは、蘭の球根が強精剤として用いられていました。
ちなみに、このオーキス(オルキス)と同じ名を持つ人物がギリシャ神話に登場しています。詳しくは下記をご覧ください。
蘭にまつわるギリシャ神話
遊び好きが招いた悲劇
酒好きで遊び好きの精霊サテュロスには、オーキス(オルキス)という息子がいました。父親と同じく酒好きの遊び人で、勝手気ままに生きる彼は、のちにとんでもない過ちを犯してしまいます。酒の神の祝祭の日、飲み過ぎで酔っ払った勢いで女司祭に襲いかかったのです。そのためオーキスは罰として八つ裂きにされ、野に捨てられてしまいました。その亡骸から蘭の花が咲いたと伝えられています。
父のサテュロスは「オーキスを元に戻してください」と神々に祈ったけど、神々はオーキスが祝祭日に罪を犯したことを許さず、聞き入れられなかったんだ。でも嘆く父親の姿を哀れに感じて、亡骸を蘭の花に変えたんだって。
悲劇ではあるけど、オーキスの自業自得って気もする神話ですよね。あの美しく気高い蘭の花のイメージからは想像もつかない内容です。
蘭の花言葉
ここからは蘭の花言葉を紹介します。前に少し触れたように、蘭は非常に種類や品種が多い植物です。そのため、蘭全般の花言葉と種類別・色別の花言葉というものがつけられています。花言葉は上手に使えば、あなたの気持ちを最高によい形で相手に伝えるツールとなります。ぜひ覚えて贈り物やイベントで活用していきましょう。
全般の花言葉
全般の花言葉は「美しい淑女」「優雅」です。どちらの花言葉も、蘭の美しく気品ある花姿に由来しています。なお、英語圏での全般の花言葉は「love(愛情)」「beauty(美)」「refinement(優雅・上品)」「beautiful lady(美しい淑女)」です。
蘭全般の花言葉まとめ
- 全般の花言葉:「美しい淑女」「優雅」
- 英語の全般の花言葉:「love(愛情)」「beauty(美)」「refinement(優雅・上品)」「beautiful lady(美しい淑女)」
コチョウラン(胡蝶蘭/ファレノプシス)の花言葉
コチョウラン(ファレノプシス)の概要
贈り物の定番としても知られているコチョウランは、熱帯地域原産の植物です。そのため耐寒性が低いので、寒い季節の扱いには注意しましょう。日本でコチョウランとして流通しているのは、台湾・スマトラに分布している野生種「ファレノプシス・アマピリス」を品種改良した品種です。「ファレノプシス」はコチョウランの英語の学名なので、海外でコチョウランの仲間の多くは、この名前で呼ばれています。
本来の開花時期は、季節でいえば春から初夏にあたる3月~5月だけど、温室栽培で育てられることが多いから、ほぼ年中出回っているよ。
名前の由来
「コチョウ(胡蝶)」という名前は、独特の花姿が可憐な蝶が舞っているように見えることに由来しています。「胡蝶」は舞楽や古典の「源氏物語」にも登場する蝶の別名です。なお、学名の「ファレノプシス(Phalaenopsis)」は、「蛾のような」という意味を持っています。日本では蛾というと悪いイメージが強いため、胡蝶と表現したのでしょう。
種類や花色は意外と豊富
花が大きい大輪と、ミディ、またはミニと呼ばれる小さい種類の2種類があります。花の咲き方も同じ方向を向いて咲く品種と、バラバラの方向を向いて咲く品種の2種類があるので、好みや用途に合わせて選ぶとよいでしょう。コチョウランの花色は白とピンクが一般的ですが、紫、青紫、青、黄、オレンジ、さらには白地に赤色の弁を持つ「リップ系」と呼ばれる花色があります。
ミディ(ミニ)コチョウランは小さいのでスペースを取らない点が人気の品種です。花持ちがよくて花色も豊富なので、初めてコチョウランを育てる方にもおすすめですよ。
小さい品種を交配させて作出するミニ品種は、家庭で栽培することを前提にしているから、育てやすい品種が多いんだ。もちろん、他の蘭の花にもミニ品種があるよ。
コチョウラン全般の花言葉
コチョウラン全般の花言葉は「幸福が飛んでくる」「純粋な愛」です。どちらもコチョウランの蝶に似た優美な花姿と、高貴な雰囲気に由来しています。どちらも縁起がよくて、いろんな場面で使える花言葉ですね。贈り物に選ばれるのも納得です。なお、コチョウランには色別の花言葉があります。詳しくは下記をご覧ください。
白いコチョウラン(ファレノプシス)の花言葉
白いコチョウランの花言葉は「清純」です。清楚で優美な花姿に加えて、真っ白な花色が持つ清らかなイメージに由来しています。白いコチョウランはお祝い品としてよく利用されていますが、なかでも結婚式のお祝い品や、花嫁が持つウェディングブーケとしての利用が多いです。清楚な花姿と花言葉が関係しているのでしょう。ほぼ年中流通しているので、季節に関係なく用意できる点も魅力ですね。
ピンクのコチョウラン(ファレノプシス)の花言葉
ピンクのコチョウランの花言葉は「あなたを愛してます」です。由来はピンク色が持つ可憐なイメージにあると言われています。可憐で品のある花姿もあって、愛する人への贈り物にピッタリな花ですね。また、この花言葉の意味を「親愛」と解釈して、母の日の贈り物にすることもあります。総じてピンク色の花は女性に人気が高いので、女性への贈り物によい花と言えるでしょう。
コチョウランの花言葉まとめ
- 全般の花言葉:「幸福が飛んでくる」「純粋な愛」
- 白いコチョウランの花言葉:「清純」
- ピンクのコチョウランの花言葉:「あなたを愛してます」
カトレアの花言葉
カトレアの概要
蘭の女王
カトレアは、蘭のなかでも一際豪華な花をつけることから「蘭の女王」と呼ばれています。本来の見頃の季節は秋から冬、時期でいえば10月~2月でしたが、その人気の高さから周年出回るようになりました。また、春の季節に咲く春咲き品種、初夏の季節に咲く初夏咲き品種と、それぞれの季節に咲く品種も誕生しています。花色も赤、ピンク、白、紫、青、黄、オレンジなど、非常に豊富です。
カトレアは見た目の美しさや花色の豊富さが有名だけど、香りのよい品種もたくさんあるんだよ。
種類も豊富
品種改良や交配によって誕生した品種が多いため、花色だけでなく花の大きさや株の大きさでも、いろいろな種類があります。見栄えのよい大輪種は贈り物としてよく利用されています。最近では小さい株に育つミニ品種も、家庭栽培用として人気です。なお、カトレアの品種は、大別すると以下の4つのタイプになります。
- 大輪系:名前のとおり、大きい花をつける豪華な品種。豪華な花をつけることから、贈答品やブーケ、コサージュなどに利用されている。
- 中輪系(ミディ):ミディカトレアとも呼ばれる。大輪系に比べると花は小さいが、育てやすい品種が多い。
- ミニカトレア:カトレアの園芸品種のなかでも、小型に改良された品種。スペースを取らない上に、カトレアの弱点である低温にも比較的強い品種が多くて育てやすい。ひとくちにミニカトレアと言っても、交配が品種によって異なるため、性質や管理方法が違う場合があるので注意する。
- 花茎が長く伸びるタイプ:茎を長く伸ばして、複数の花をつける品種。独特のフォルムが美しいが、花姿のバランスが悪くなりやすい弱点もあるので注意する。
カトレア全般の花言葉
カトレア全般の花言葉は「優美な貴婦人」「成熟した大人の魅力」「魔力」「魅惑的」「あなたは美しい」「高貴」です。いずれも「蘭の女王」と呼ばれるほどの豪華で美しい花姿と、気品あふれる雰囲気からつけられたものでしょう。非常に花色豊富なカトレアですが、色別で固有の花言葉は特にありません。相手の好みやイメージ、その場の雰囲気に合わせて花色を選ぶとよいでしょう。
美しく、気品と魅力に満ちた女性を意味する花言葉が多いので、女性への贈り物にいいですね。
カトレアの花言葉まとめ
- 全般の花言葉:「優美な貴婦人」「成熟した大人の魅力」「魔力」「魅惑的」「あなたは美しい」「高貴」
- 色別の花言葉はなし
人気が高いことと、寒さに弱く管理が難しい種類が多いこともあって、温室栽培が多いのも蘭の特徴です。そのため季節に関係なく、ほぼ周年出回っています。