怖いイメージをもたれがちな彼岸花
彼岸花は、秋の彼岸の時期に墓地や田畑のあぜ道でよく見かけられる花です。燃えるような赤い花には、美しくも妖しげな雰囲気があり、怖い印象をもっている方も多いかもしれません。しかし、彼岸花の花言葉には怖い意味の言葉だけでなく、いい意味の花言葉もつけられています。
彼岸花はどのような花?
彼岸花は、ヒガンバナ科ヒガンバナ属に分類される多年草です。真っすぐ伸びた細い茎の先端に、直径約10cmの花を咲かせます。茎の長さは30~50cm程度、幅5mmほどの長細い花びらを放射状につけるのが特徴です。花が咲いているときは、葉がつきません。花が枯れた後に葉が伸び、翌年まで球根に栄養を蓄えます。中国が原産地で日本では稲作の伝来とともに全国に広がり、秋の花として親しまれています。
名前の由来
彼岸花は、9月の彼岸の時期に咲くことから「彼岸花」と名付けられました。また、彼岸花には毒があるため「食べた後はあの世(彼岸)しかない」という意味が込められている、ともいわれています。彼岸のころに咲き始めて、彼岸が終わるころには枯れてしまう開花時期がとても短い花です。彼岸花には、和名も英語名も数多く存在しますが、花の特徴をよく表している「彼岸花」が一般的に使われています。
ボタニ子
彼岸花の別名
彼岸花は「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」の名前でも呼ばれています。曼殊沙華はサンスクリット語で「天界に咲く花」「赤い花」という意味です。学名は、ギリシア神話の海に棲む女神の一人であるリュコーリアスの名前にちなんで「Lycoris(リコリス)」といい、英語名では花姿がクモに似ているため「Spider lily(スパイダーリリー)」と呼ばれています。ほかにも「死人花」「毒花」など、いくつもの別名があります。
彼岸花の色別の花言葉
彼岸花は、色ごとに明るさや力強さを表した、いい意味の花言葉がつけられています。赤色のイメージが強い彼岸花ですが、近年では品種改良によって黄色やピンク、オレンジなどさまざまな色の品種が誕生しており、花色ごとに異なる花言葉がつけられています。
花言葉①赤色の彼岸花
赤い彼岸花は、燃える炎のような赤い花びらから「情熱」「独立」といった華やかで力強い花言葉がつけられています。しかし、開花時期が短く別れを連想させることから「諦め」「悲しい思い出」という寂しさを感じさせる花言葉や、「再会」といった花言葉もあります。見る人の心情によって赤い花の印象が異なる花言葉といえるでしょう。
赤い彼岸花の花言葉
- 情熱
- 独立
- 再会
- 諦め
- 悲しい思い出
花言葉②白色の彼岸花
白い彼岸花は、「想うはあなた一人」という切ない花言葉がつけられています。真っすぐ伸びた長い茎の上にポツンと花を咲かせる姿が、いちずに一人の人を想う姿に見えたのかもしれません。また白い花は故人の墓前に供えるときに用いられます。「また会う日を楽しみに」は、故人への純粋な想いが込められた花言葉といえるでしょう。
白い彼岸花の花言葉
- また会う日を楽しみに
- 想うはあなた一人
ボタニ子
「想う」という言葉には「慕う、愛する、恋する、思い出す」といった意味があります。
花言葉③黄色の彼岸花
黄色い彼岸花には、「追想」や「深い思いやりの心」など過去や相手のことを偲ぶ花言葉がつけられています。しかし、「陽気」「元気な心」といった前向きで明るい言葉もあります。黄色い花びらに、明るく元気な印象を受けた花言葉といえるでしょう。
黄色い彼岸花の花言葉
- 追想
- 深い思いやりの心
- 陽気
- 元気な心
花言葉④ピンクやオレンジの彼岸花
彼岸花には、ピンクやオレンジの花も存在します。しかし、品種改良で新しく誕生した、まだ珍しい色のため花言葉はつけられていません。赤や白い彼岸花と異なり、かわいらしい印象を与える彼岸花です。この先どのような花言葉がつけられるか、期待しましょう。
彼岸花の花言葉に怖いイメージがある理由
彼岸花は、彼岸の時期に墓地に咲いているのよく見かけられます。血や死を連想させるため、縁起がよくない花として敬遠される傾向がありますが、花言葉まで怖いイメージのものが多いです。彼岸花の花言葉が怖いのは、彼岸花の特徴や怖い別名、迷信が多いことが理由として考えられます。
理由①墓地に植えられていたため
彼岸花は、墓地に咲く花の印象が強いことが、怖いイメージをもつ理由かもしれません。日本では、昭和初期ごろまで一般的に土葬が行われており、土の中に遺体をそのまま埋葬していました。墓地に彼岸花が植えられているのは、彼岸花の毒で小動物から遺体を守るためといわれています。土の中でモグラやネズミによって遺体が荒らされないように、彼岸花の毒性を利用し人為的に植えられた名残りと考えられます。
理由②毒をもっているため
彼岸花は、花、葉、茎、根などすべての部分に毒がある植物です。特に「鱗茎(りんけい)」と呼ばれる球根にアルカロイド系の強い毒を含んでいます。モグラやネズミなど害獣から野菜や稲など作物を守るために田畑の周りに植えられました。誤って食べてしまうと中毒症状を引き起こす可能性があるといわれており、この毒性が怖いイメージを与えてしまう理由ともいえるでしょう。
鱗茎とは?
鱗茎とは、鱗(うろこ)に似た欠片がいくつも重なり合い球状になった根を指します。彼岸花は、花が終わり葉や茎が枯れた後も鱗茎が土の下に残り、何年も花を咲かせ続ける習性をもっています。
理由③恐ろしい別名が多くあるため
彼岸花には、曼殊沙華やリコリスのほかにも1000個以上の別名があります。彼岸の時期に咲くことや墓地に植えられていること、さらに毒性をもっていることなどが名前の由来です。なかには怖い別名もあり、花言葉が怖くても不思議はありません。しかし花の姿から呼ばれている名前もあり、身近な花として親しまれていたことがうかがえます。
彼岸花の別名一覧
彼岸の時期に咲くことに由来した名前 | 幽霊花(ゆうれいばな) 地獄花(じごくばな) 死人花(しびとばな) |
毒を持つことに由来した名前 | 毒花(どくばな) 毒百合(どくゆり) 痺れ花(しびればな) |
花の姿に由来した名前 | 剃刀花(かみそりばな) 天蓋花(てんがいばな) 狐花(きつねばな) 雷花(かみなりばな) 花火花(はなびばな) 火事花(かじばな) |
花の生態に由来した名前 | 葉見ず花見ず(はみずはなみず) 捨て子花(すてごばな) |
理由④迷信が多いため
彼岸花には、昔から不吉で怖い迷信が数多く伝えられています。「彼岸花をつむと手が腐る」「彼岸花は人の魂を吸い取る」「彼岸花は亡くなった人の血を吸って赤い花になる」など、どれも不吉な言い伝えのため、花言葉も怖い意味合いのものが多いのでしょう。怖い言い伝えの数々には、毒のある彼岸花に触ったり食べたりしないように、あえて悪い意味を加えて伝えられているのかもしれませんね。
彼岸花の花言葉に想いをよせて
彼岸花には、古くから彼岸花の毒性を利用してきた結果、怖い花という一般的なイメージが強く、切なく悲しい花言葉が多いです。しかし、その一方で花色から感じる生命力からか情熱的でポジティブな花言葉もつけられています。秋の澄んだ青空のもと、いろいろな花言葉を持つ彼岸花を眺めながら、さまざまなことに想いをはせてみましょう。
秋の彼岸は、秋分の日を中日とし前後3日間をあわせた計7日間を指します。