クチナシとは
クチナシは東アジア(中国・台湾・インドネシア半島)に広く分布するアカネ科の植物です。樹高は30cmから大きなものは2mほどに成長し、葉は楕円形で表面に艶を持つ常緑樹です。日本では静岡県および福井県以西の本州、四国・九州・沖縄などに生息しています。また、南西諸島では森林に自生しています。
クチナシの仲間
クチナシには手のひらほどの大きな花と強い香りを持つ園芸品種と、小さな花を咲かせる原種に近い品種、葉に斑が入ったものなどがあります。開花時期は6月から7月、香水に例えられる甘くスパイシーな香りを持つ純白の花が咲きます。
ヤエクチナシ
ヤエクチナシは別名オオヤエクチナシとも呼ばれ、庭木として好まれる大型の八重咲きの花を付けます。大きな純白の花は見栄えしますが、この品種は秋に実を付けることはありません。樹高は1mから2mにまで育ちます。
コクチナシ
コクチナシは樹高が成長しても30cmから40cmまでの低木です。枝は地面を這うように広がり、ヤエクチナシに比べると葉は細長く花も小さめになります。一重のほか、八重咲きの花もあります。
斑入りクチナシ
非常に珍しい、葉に斑が入ったクチナシです。ほかのクチナシは花がなければ気づかれない存在ですが、白い斑が入っているので花の後も庭を彩ってくれます。
マルバクチナシ
マルバクチナシは葉と花弁が丸い品種です。このクチナシは5月と10月に開花の時期を迎え、年に2回楽しむことができます。樹高は30cmから40cmほどで、庭の生垣や鉢植えでも育てられます。
クチナシの育て方
クチナシは半日陰でも肥沃な土壌と、湿り気があれば育つ丈夫な植物です。育て方も夏場の水の管理などをしっかりと行えば、それほど手間が掛かりません。それでは鉢植えや庭植えでの栽培方法についてご紹介します。
クチナシの育て方①用土
クチナシを植えるためには、赤玉土7と腐葉土3を使います。庭に植える場合は根鉢の2倍から3倍の穴を掘り、根を切らないように3分の1ほど土を落として植え付けましょう。鉢植えの場合は根詰まりしないように、ひと回り大きく深さのある鉢に植え付けます。
土壌がアルカリ性の場合
庭にクチナシを植えるとき、土壌が中性からアルカリ性であるならば、酸度調整されていないピートモスを加えます。理由は中性やアルカリ性だと、葉が黄色に変色を起こしやすいためです。
クチナシの育て方②植え付け時期
クチナシを植えるのに最適の季節は3月から4月、または9月から10月です。これは庭植え・鉢植え・植え替えなどにも共通します。
クチナシの育て方③植え付け場所
クチナシは直射日光や西日の当たる場所、また寒い風が吹き付ける場所を嫌います。庭に植える場合は午前中の日が当たり、午後になったら半日陰になるような湿り気のある場所を好みよく育ちます。鉢植えならば冬は室内で管理し、最低温度が10度を上回ったら日当たりのよい軒先などへ出すようにしましょう。
クチナシの育て方④肥料
肥料はゆっくりと効果が現れる緩効性のものか、または油かすや堆肥などを与えます。寒い時期に与える寒肥えは新芽や花芽を増やす効果があり、さらに1年の健康維持という目的を持ちます。
肥料を与える時期
肥料は植え付けるときに元肥えとして、それに成長が始まる前の寒い3月、花後(かご)のお礼肥(れいごえ)として6月ごろに施しましょう。花を咲かせるにはエネルギーを多く使うため、その疲労回復に役立ちます。夏を過ぎて肥料を与えると枝ばかりが伸びて花芽ができないので注意です。
クチナシの育て方⑤水の管理
クチナシの栽培で重要なポイントとなるのが、水やりです。乾燥を極端に嫌うため、水切れを心配するあまりやり過ぎて根腐れを起こす可能性もあります。鉢植え・庭植えともに土が乾いたら水をやるのが正解です。
鉢植えの水やり
冬は土が乾いたら、夏は暑いので朝と夕方の2回水をやります。鉢植えのクチナシは、鉢の大きさしか土がないので乾燥に弱くなります。室内で冬越しをしている時期も水のやり過ぎを避けるために、必ず土に指を入れて乾いていることを確認したら、鉢の底から水が出るほどたっぷりと与えます。
クチナシの育て方⑥植え替え方法
庭植えにしたクチナシは、植え替える必要がありません。しかし、鉢植えの場合は根が成長して窮屈になるため、2年から3年に1度植え替えましょう。このとき、鉢植えは現在の鉢よりもひと回り大きなものを用意します。
クチナシの剪定方法
剪定をする目的は風通しをよくすることと、病害虫を防ぐことです。しかし、間違った季節に行うと花が付かなくなったり、クチナシが枯れる可能性があります。ここでは剪定の時期や、花を咲かせる剪定方法をご紹介します。
剪定する時期
クチナシの剪定は、花が開花したあとの7月までに終えます。花芽は花が咲いた後に伸びた枝に付きます。そのため、8月以降になると育った花芽を持つ枝を切り落とす可能性があるので避けましょう。また、花が咲く前の季節(5月末)に剪定すると、蝶や蛾が卵を産み付けて葉を食べつくす被害を減らす効果があります。
剪定の方法(庭植え)
庭植えにしたクチナシは、周囲に空間があれば樹形は自然に整っていきますので、定期的な剪定は必要ありません。ただし、常緑樹なので葉が落ちず、枝が混み合って風通しが悪くなります。すると病気や害虫が発生するので、内側に向かっている枝や絡んでいる枝、細く栄養不足の枝を切って整理します。
剪定の方法(鉢植え)
剪定方法は庭植え同様に、枝同士絡んだものや内側に向かって伸びた枝を切ります。鉢植えの場合、5月から6月に剪定することをおすすめします。なぜなら、この季節は葉が茂り、根元のほうまで日差しが届かなくなるためです。鉢植えは根鉢が小さく栄養が限られるので、上で葉が成長すると内側の葉は栄養を作れず枯れてしまいます。
花数を気にしない剪定
生垣などにクチナシを植えて茂りすぎた場合、花を気にせずに強剪定を行う必要が出てきます。通常の剪定は葉を4枚から5枚残して、太い枝は切らないようにしますが、強剪定の場合には思い切って軸に近い部分まで切り込みます。
クシナシの増やし方(挿し木)
クチナシを増やすには、挿し木が有効です。6月に庭木を剪定したときに出た枝を利用して、よい季節ならば1カ月ほどで発根します。枝はその年に出た新芽を使い、先から15cmほどの長さにします。1時間はコップで水を吸わせ、赤玉土か鹿沼土に挿しましょう。秋に定植するか、または翌年の春でも大丈夫です。
挿し木の葉は小さくする
クチナシの葉は大きなもだと10cmほどあるので、挿し木にするときはこれを3分の1くらいに切ります。理由は水分の蒸発を抑えるため、小さな葉の品種は数を減らして2枚か3枚残す程度にしておきましょう。
花を楽しんでから挿し木にする
室内にクチナシの花を飾っておくと、幸運に恵まれれば発根することがあります。この状態で土に植えれば、根づく確立はとても高いです。根が出ている状態なので、庭に定植しても鉢植えでも育ちます。
クチナシが枯れる原因
クチナシが枯れる原因となるのは、庭植えならば害虫による食害です。開花前の5月に蝶やオオスカシバの幼虫によって、柔らかい葉や新芽をすべて食べられ、木が弱る可能性があります。ほかにも栄養を吸い取るカイガラムシやハダニが付く恐れがあるので、注意が必要です。冬場、室内に入れた鉢植えは乾燥が原因となります。
弱ったクチナシを復活させるには
とても弱ったクチナシを復活させるには、木の負担を少なくするために枝を切り詰めます。しばらく花は諦めて、クチナシを助けることに重きを置きましょう。鉢植えの場合も水切れや室内に入れるのが遅れた場合も根が傷んでいるので、枝に葉を1枚から2枚残しコンパクトに仕立てます。
まとめ
クチナシの学名 jasminoides(ジャスミンのような)と形容される甘いスパイシーな芳香は、沈丁花や金木犀と並び賞され三大香木といわれます。幸せな香りを届けてくれるクチナシを、ぜひお部屋の片隅に加えてみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC