シュンランとは
シュンランはシンビジウムの仲間で、日本、中国など東南アジアに分布する野生ランです。日本では、北海道から九州まで広く分布し、江戸時代からは園芸植物として鉢物がたのしまれています。「春蘭」という名前は、春に花を咲かせることに由来していますが、地方ごとに様々な呼び名があります。
基本情報
学名 | Cymbidium goeringii |
和名 | シュンラン(春蘭) その他の呼び名:ジイババ、ジジババ、ホクロ |
科名 / 属名 | ラン科 / シュンラン属(シンビジウム属) |
別名「ジイババ」とは
シュンランの花弁の斑点を老人の顔のシミに見立てて名付けたという説や、花の外花裂片と内花被片の形状をお婆ちゃんの「ほっかむり」とお爺ちゃんの「ヒゲ」に見立てたという説があります。そんな呼び名を付けられてしまうくらい、開花期であっても控えめで地味な姿をしています。
別名「ホクロ」とは
地方によっては、花にある斑点がホクロに見えることから「ホクロ」と呼ばれているようです。随分と不名誉なあだ名(?)のようにも聞こえますね。また、シュンランの中には「素心」といって赤紫色の斑点のないものもあり、「ホクロ」という呼び名は「ハクリ」と呼ばれる全く別の植物の名前が訛ったものだという説があります。
一説として、アカギレ治療薬として利用されるサイハイラン(方言ハクリ)の名に由来するとある。
(中略)
サイハイランの方言であるハクリがシュンランの方にも移り、やがて転じてホクロになったという。
日本シュンランと中国シュンランの特徴
鉢物のシュンランに対し、国名をつけて呼び分けています。どちらも細長く硬い葉の根元からのびる白色の花が特徴です。そして、その花には濃赤紫色の斑紋があります。一般的に中国シュンランのほうが日本シュンランよりも、少しだけ花が大きく、芳香の強いものが多いです。
近年、韓国からも交配種が多く出回るようになりました。「葉物」という班入りの葉や、「花物」という花びらがオレンジや黄色のシュンランも増えています。国ごとのシュンランの特徴として、花の香りの強いものが中国シュンラン、花の色や葉の色に特徴のあるものが日本シュンランもしくは韓国シュンラン、といったところでしょうか。
シュンランの花言葉
花言葉
- 『気品』
- 『清純』
- 『控えめな美』
- 『飾らない心』など
シュンランの育て方
育て方①置き場所
一年を通して、ほどよく日陰になる場所で育てるとよいでしょう。ある程度の日照は必要ですが、直射日光で葉焼けしないよう注意が必要です。特に最近の夏の暑さでは、鉢内の温度管理が難しくなります。梅雨〜夏の蒸れが心配な季節は、暑い時間帯の水やりを控えるなどし、木陰や涼しい軒先で育てるようにしましょう。
育て方②病害虫対策
ボタニ子
病害虫の心配は少ないですが、ナメクジとカイガラムシ対策だけは必須。葉が混みいった場合は株分けし、蒸れないように管理しましょう。
ナメクジには
ナメクジは、シュンランの花芽などを食害します。花が咲く時期は、ナメクジの活動時期とズレがあり、被害はそれほど大きくありませんが、最近の温暖化傾向で、花の咲く時期もナメクジの活動時期も随分変動しています。鉢物を外に出す際には気をつけましょう。
カイガラムシには
カイガラムシは、葉の表面に付き、吸汁します。被害が少なければ、葉が黒く変色する程度ですが、カイガラムシが大量に発生してしまうと、葉全体が黄変し、株が弱ってしまうこともあります。カイガラムシは種類が多く、殻に守られているので、薬剤が効かない場合があります。早期に発見してピンセットなどで取り除きましょう。
育て方③植え替えに使う用土・鉢は
シュンラン用の用土が販売されています。株分けや植え替えには、そういった用土を使うと便利ですが、専用用土でなくても大丈夫です。粗くて硬めの鹿沼土に同じ大きさの軽石を2割ほど混ぜて使ってもよいでしょう。通気性・排水性を重視し、次の植え替えまでの数年間は根詰まりしないことが理想です。
洋ラン用の用土でも代替可能です。水はけがよく根張りもよいので、シュンランを育てる際にも活躍してくれます。
育て方④季節ごとの管理
植え替えや施肥は、夏と冬の季節を避けて行います。
- 液肥:希釈濃度を守って、2週間に1回程度にします
- 固形肥料:液肥と同時に使っても大丈夫です。土の上に置く緩効性肥料がおすすめ。
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植え付け・植え替え |
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肥料 |
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参考:みんなの趣味の園芸
開花期は、地域によって異なります。また育てる場所によっても、開花期が前後しますので、環境に合わせて施肥や植替えの時期を調整するとよいでしょう。
育て方⑤増やし方
種から育てることは非常に難しく、流通しているものは株分けか、人工交配の園芸種が主流です。ご自宅で増やしたいなら、株分けで増やすのが一般的。バルブ(ぷっくり膨らんでいる地下茎)が2~3個ついた状態で、必ず新しい芽をつけて分けるようにしましょう。バルブの間はハサミなどできれいに切り取り、雑菌が入らないように注意します。根が太いので、鉢は深めの方が植え替えしやすいですよ。
花が咲かない原因は?
シュンランの花が咲かない原因は大きく2つあると言われています。一つめは、冬の寒さにあてていないこと。もう一つは、植え替え後日が浅く、根が充実していないことです。
四季を感じる育て方で
高価な交配種などを冬の寒さにあてるのは勇気がいりますが、ある程度の季節の移り変わりが感じられないと、シュンランは花芽を作ることをやめてしまいます。花茎がのびる途中でしぼんでしまったり、蕾が開花できないまま終わってしまうこともあります。夏の蒸れには要注意ですが、冬の寒さは必ず体感させてくださいね。
太い根を充実させて
株分けした鉢が根でいっぱいになった頃に、もっとも花芽をつけやすくなります。他の東洋ランや西洋ラン同様、多少根が窮屈な方が、きれいに花を咲かせてくれます。地植えの場合も、ふかふかな野菜を育てるような土ではなく、ゴツゴツと石の混ざった土のほうが毎年きれいに咲いてくれますよ。
シュンランは食べられる?
シュンランの花は、山野草と同じく春の山菜として楽しまれてきました。今でも、生食する山菜マニアがいらっしゃるとか…。昔は、里山などに自生しているシュンランの花を取り調理されてきたようですが、近年野生のシュンランが減り、食用に育てている生産者さんも減っていて、簡単には手に入らないようです。
花の食べ方
蘭茶
塩漬けした花に湯を注いで飲みます。桜茶などのようにお祝い事で楽しまれています。
酢の物
若い花を花茎ごと取ってさっと茹でて酢であえます。
効能
根や茎をヒビ・アカギレの外用薬として使用された時代がありました。食用としての有効成分はサポニンです。その効能から、花と花茎を煎じてうがい薬にし、咳止めに使われていたようです。根は乾燥させて粉末にし服用すると血流改善・強壮の効果があるとされます。
まとめ
ここまでシュンランについて、簡単にご紹介しました。シュンランは本来、日本の野山に自生している野生種で、たいへん身近な植物です。そんな素朴な春蘭を鉢物として、または野山の散策の際の観賞に…と、楽しんでみませんか?
画像:筆者撮影